プロ野球チア・オーディション密着取材
読売ジャイアンツ・VENUS 後編(全2回)

【多様なバックグラウンドの応募者】

 球場を盛り上げる各球団のチアリーダーたち。そのなかで、30年という球界でもっとも長い歴史を持つのが、読売ジャイアンツの公式マスコットガール「VENUS(ヴィーナス)」だ。

 その新メンバーオーディションの最終審査当日にスポルティーバが密着取材。応募総数556名のうち、書類選考の一次審査、ダンスと面接を行なう二次審査を勝ち抜き、最終審査へ進んだ49名にスポットを当てリポートしていく。


総勢556名の応募があった「ヴィーナス」のオーディション

 11月下旬、最終審査会場となる東京都内某所のビルの前。集合時間を前に到着した参加者がそこかしこの歩道脇に立ち、イヤホンで音楽を聴きながら小さくリズムをとっている。振り付けの最終確認をしているようだ。

 一帯に緊張感が漂う。さすが競争率が非常に高いヴィーナスの最終審査だ。49名のほとんどはダンス経験者。他球団や他のスポーツチームのチア経験者も多く、過去にヴィーナスのオーディションで惜しくも不合格だったため再挑戦する人や、保育士や銀行員など、すでに働いている人の参加もみられる。

 午前11時頃、審査が始まると会場の張りつめた空気はマックスに。ずらりと並んだ審査員を前に、自己PRでは緊張からか、数秒沈黙してしまう参加者も。それでも立て直し、しっかりと自身をアピールするあたり、メンタルの強さは最終選考に残っただけのことはある。


緊張感のある雰囲気のなか一人ひとり自己PRを発表していく

【マジック、モノマネ...個性豊かな一芸披露】

 ダンス審査では、どの参加者も動きにキレがあり、体幹の強さもうかがわせ、本選考のレベルの高さを思い知らされる。審査員のダンスディレクターの関根直美さんも舌を巻く。

「ひとつ前の二次審査では、その場で振り入れをして20分で覚えて、見せられるところまでできるかどうかという審査をしました。過去には頭が真っ白になって踊れなくなる応募者がけっこういるなかで、今回はまったく踊れない子はいなかった。そういう意味で、例年以上のレベルだと思います」


キレキレのダンスを披露する参加者たち

 ダンス後、息がととのう間もなく、特技審査へ。ここで自身の得意なジャンルのダンスをはじめ、パントマイムやマジック、モノマネ、審査員との腕相撲対決など、個性豊かな一芸を披露する参加者たちがいた。

 マジックを披露した佐野鈴音さんは、オーディションをこう振り返る。

「この日のための準備は、ダイエットをたくさんしました(笑)。それと、身長が149センチしかなくても誰よりも大きく踊るのが自分の個性だと思うので、自分でダンスの動画を撮って何回も確認しました。緊張していたのであんまり覚えてないんですけど、準備していたので全力でできたと思います。

 私はもともとキッズ向けのアミューズメントパークのマジックスタジオでバイトしていたことから、今回の特技審査ではマジックを披露しました。子どもだったら『すごーい!』ってなるんですけど、ここはそういう場所ではないので、ちょっと反応がさびしかった(笑)」


マジックを披露した佐野鈴音さん

【腕相撲で男性審査員に勝利】

 東京ドームでの売り子経験者で自社ビール売上1位になったことがある、萩原ほのかさんはこう話す。

「二次審査後は自分でスタジオを借りて一日練習したり、歩いている時や電車のなかでもどういうことをお話ししようかなとかいろいろ考えながら毎日過ごしてました。緊張したんですけど、審査員の方の目を見て、楽しくできたかなと思います。(結果発表は)とてもドキドキしています」


ビールの売り子経験をアピールした萩原ほのかさん

 参加者のユニークな特技のおかげだろうか、徐々に審査員含め、全体的に和やかな空気になっていく。

 なかでも会場の空気を一変させたのが、鹿児島県出身の現役女子高生(現在3年生/2024年春卒業予定)の善はるなさんだ。彼女は今回のオーディションで最年少、さらに、もっとも遠くから会場にやってきた参加者だ。特技披露では腕相撲が強いということで、男性審査員と勝負することに。そしてみごとに勝利。

「(腕相撲相手は)だいぶ強かったです。本当は女の子にしか勝ったことがなかったんですけど、(オーディションでは)『誰にも負けたことがない』って言っちゃったんで男性の方とやることになっちゃって(笑)。まわりはみんなお姉さんだったし、オーディション慣れというか、自分をちゃんと見せられていたので、ちょっと不安でした。でも初々しさは出せたかなと思います」


善はるなさんは腕相撲で腕力をアピール

【自分自身を表現したい】

 後半のグループに振り分けられた参加者も続々と会場入り。あらためて最終審査の緊張感とはどのようなものなのか。知り合いではないものの、最寄りの駅から会場までの道中で仲良くなり、一緒に会場入りしたという山口あみさんと山田かのんさんに直撃インタビュー。


インタビューに応える山田かのんさん(左)と山口あみさん

「今、すごくドキドキしてるんですけど、前回の審査で楽しめたので自分自身を表現できればなと思ってます」(山口さん)

「もしあんまりよくない結果だったとしても今日を全力で楽しめるように頑張ります!」(山田さん)

 山田さんは特技審査で、バナナの皮に針を刺し、絵を描く「バナナアート」を披露し、審査員も興味津々だった。

「手先の器用さなら負けないと思って二次審査ではネイルを披露していたので、今日はバナナアートで勝負しました。針を刺すと黒くなるんです。帰ったら食べたいと思います(笑)」(山田さん)


ジャイアンツをテーマにしたバナナアートを披露

 参加者がそれぞれ個性を発揮したヴィーナス新メンバーオーディション最終審査。その熾烈な戦いを勝ち抜いた彼女たちなら、必ずや2024シーズン、ジャイアンツの勝利の女神となってくれるはずだ!

前編<超高倍率の巨人マスコットガール「ヴィーナス」オーディションに密着 審査ポイントは「キラキラした瞬間に惹かれます」>を読む

「ヴィーナス」オーディションを動画でチェック!