『相棒』水谷豊&寺脇康文が語る、生成AIとの接し方「人間がAIに置き換えられることはない」

写真拡大 (全7枚)

再会2年目となる“伝説のコンビ”、杉下右京(水谷豊)×亀山薫(寺脇康文)の新たな挑戦を描いてきた『相棒 season22』。

今シーズンの締めくくりとなる最終回拡大スペシャル「トレードオフ」が3月13日(水)に放送されるほか、TELASAではオリジナルドラマ『相棒 sideA/sideB』が3月20日(水)ひる12時より配信スタートする。

テレ朝POSTでは、初の長尺オリジナルドラマの配信を記念し、水谷豊と寺脇康文にインタビューを実施。

前後編のインタビュー前編では、season22の振り返りのほか、最終回拡大スペシャル「トレードオフ」について語ってもらった。

◆“懐かしの面々”が相次いだ『相棒22』

杉下右京のもとに“5代目相棒”として亀山薫が帰還してから2シーズン目となったseason22。

前シーズンではヒロコママ(深沢敦)や元鑑識の米沢守(六角精児)が再登場したほか、2代目相棒・神戸尊(及川光博)も久しぶりに出演。

今シーズンでも、元サイバーセキュリティ対策本部・青木年男(浅利陽介)や捜査二課刑事・陣川公平(原田龍二)、名探偵“マーロウ矢木”こと矢木明(高橋克実)や3代目相棒・甲斐享のパートナーである笛吹悦子(真飛聖)など、懐かしの面々が出演していた。

水谷と寺脇が今シーズンを振り返る。

水谷:「season21のときもそうでしたけれども、亀山くんと14年間離れていたことを感じませんでしたね。時間というものは不思議なもので、14年間がまったく長く感じない。逆に撮影で2日間休みが入ると、しばらくぶりで何から喋ればいいのか戸惑ってしまうこともあるんです。

やっぱり、長く離れていても離れた気がしないというのは、とてもいい関係だなと思いました。2年目のseason22も、亀山くんとは、かつて一緒にやっていたことから続いている印象でした」

寺脇:「“懐かしいメンバー”というくくりで言うと、まずは陣川くん。薫としては16年ぶりに再会しましたけども、相変わらずでした。それに名探偵のマーロウ矢木。克実さんとは撮影の直前まで舞台『帰ってきたマイ・ブラザー』で豊さんと僕とずっと一緒でしたが、『相棒』の現場に来たら『うわ、緊張する』と。『だって右京さんは特別だから』と、克実さんが右京さんの姿を見て緊張していたのが印象に残っていますね」

水谷:「こうやって“懐かしいメンバー”が出てくるのは『相棒』ならではですよね。これだけ長く続けてきたからできるんだなと思いました」

寺脇:「しかも、同窓会みたいになるのかと思いきや、また新鮮に取り組むことができる。これも『相棒』ならではかなと思います。そうそう、22年ぶりに青楽師匠(小宮孝泰)も登場しましたね。season1以来です」

水谷:「season1の第3話ですよ。忘れもしない。そう思うと、再登場できる人はまだまだたくさんいそうな気がして楽しみですね。『相棒』のエピソードは400本以上あるわけですから」

 

◆生成AIは“いいこと”に使うべき

2週にわたって放送される最終回拡大スペシャル「トレードオフ」では、3月6日(水)放送の前篇で、右京の“謎の動画”が問題になった。

現実の世界でも、近年は生成AI(人工知能)を悪用したフェイク動画がたびたび物議を醸している。

生成AIをめぐっては、俳優の仕事がAIに置き換えられてしまうのではないかと危惧する声も少なくない。

こうした問題について、水谷と寺脇はどのように考えているのだろうか。

水谷:「心というものがあるとしたら、AIはどこまでそれを表現できるのでしょう? 心は人としてもっとも大切なところで、それはAIは持たないのではないかと思うんですね。

いわゆるフェイク動画にはAIはもってこいで、実際、世界的にそういうものを作る人たちが出てきています。だけど、あれは本当に人としての付き合いをしているということではないですものね。だから人間がAIに置き換えられることは最終的にはないけれど、悪用はできてしまう。

アメリカでは、AIが色々と問題を起こすのではないかということで、脚本家や俳優の労働組合がストライキを行いましたね。自分たちの敵が出てきたと、どうしてもネガティブなほうにAIを捉えています。ですが考えなければいけないのは、AIをプラスに使えることはあるんですかということ。

こうすれば人としてAIといい付き合いができますよ、というやり方は、まだ何も出てきていない。これからはそうした“いいこと”にAIを使うにはどうしたらいいのか考えていくべきでしょうね」

寺脇:「AIに心はないですもんね。右京さんの正義に対する考え方とか罪に対する怒りもAIにはないだろうし、薫の第六感も味覚の鋭さもない。

『これ変な味がするな』と薫が感じ取って凶器が発覚したという話が以前ありました。AIは味をうまいこと表現することはできるかもしれないけど、『なんかそんなにおいしくないですね』という感覚はないじゃないかなと。

やっぱり道具なんですよ。とても便利な道具。そればかりに頼ってはいけないと思うけれど、うまく使えるところはどんどん使っていくといいのかなと」

◆“社会派ドラマ”としての魅力

『相棒』シリーズといえば、現実の政治問題や社会問題などを彷彿させる要素を取り入れた独自のストーリーも見どころのひとつ。

最終回拡大スペシャル「トレードオフ」では、内閣官房長官や法務大臣が登場し、そこに内調やテレビ局も関わってくるスケールの大きな物語が展開する。

これまでさまざまな権力者の悪事に立ち向かってきた特命係。“社会派ドラマ”としての『相棒』の魅力について水谷と寺脇が語る。

水谷:「僕はね、よく思うのですけれども、権力というのはいい使い方をすればいいリーダーになるんですよ。ところが権力をもつと往々にして力を悪用してしまう。権力を利用して何か悪いことをしてしまうんです。権力を利用して世の中をよくするというと、なかなかイメージが湧かないですよね。

でも、実はリーダーというものは、みんな権力をもっている。いい使い方をするリーダーはいいリーダーなんです。ですがリーダーになると権力の使い方を間違えてしまう人が多い。『相棒』では、権力をもった人間が悪い方向に力を使っていることに対して、僕ら特命係が切り込んでいく。それはシリーズが始まったときからそうで、相変わらず健在だなと感じます」

寺脇:「ドラマだから、フィクションじゃないですか。だけどフィクションだからこそ、わりと忖度なく切り込んでいけるところが魅力ですよね。視聴者は『相棒』を見ることで、実際の政治や社会で起きていることも考えられる。

現実の世界では得てしてうやむやになってしまうじゃないですか。だけど『相棒』ではうやむやにさせないところまで持っていくことができる。それでスカッとしてもらえるところはあるのではないでしょうか。

せめて『相棒』の中だけでも、違うことは違う、間違っていることは間違っていると切り込んでいけるようにしたい。視聴者の気持ちを代弁しているところがあるのではないかなと思いますね」

水谷:「そうそう、実際に警視庁に勤めている方から、右京ほど事件を解決していたら、本当ならもっと出世するはずだと言われたことがあるんですよ。けれどぜんぜん出世しませんね(笑)。時々そんなことも思いながら撮影に取り組んでいます」

『相棒』TELASAオリジナルドラマの配信記念インタビュー、後編ではオリジナルドラマの魅力のほか、今後『相棒』シリーズで実現したいことを水谷と寺脇が語る。