アメリカの電気自動車メーカー・Fiskerが、人気YouTuberによる否定的なレビューに対処すべくディーラーに電話をかけたものの、録音されていると知らずに口をすべらせ、その模様がソーシャルメディアで大きく注目を集めました。

Fisker EV might crash after a YouTuber’s review

https://www.morningbrew.com/daily/stories/2024/03/08/fisker-EV-bad-youtube-review

Scathing Fisker Ocean Review Exposes How It’s Rushing To Put Out The Fire | Carscoops

https://www.carscoops.com/2024/03/scathing-fisker-ocean-review-that-goes-viral-exposes-how-the-brand-is-rushing-to-put-out-the-fire/

Fisker's Ocean SUV Fails To Impress YouTuber Marques Brownlee: 'Not Acceptably Usable' - Fisker (NYSE:FSR) - Benzinga

https://www.benzinga.com/news/24/02/37198484/fiskers-ocean-suv-fails-to-impress-youtuber-marques-brownlee-not-acceptably-usable

問題の発端は、ガジェットのレビューで人気のYouTuber「MKBHD」ことマルケス・ブラウンリー氏が2024年2月18日に公開した以下のレビュー動画です。

This is the Worst Car I've Ever Reviewed - YouTube

この動画の中でブラウンリー氏は、FiskerのEVであるFisker Oceanをレビューし、「基本性能はまずまずで、車内スペースは十分。オーディオの音域やデザインの良さも兼ね備えています」と評しました。

車体の評価は上々だった一方で、それを完全に覆してしまうほどソフトウェア面への不満が多く、ブラウンリー氏は先進運転支援システム(ADAS)やカメラシステムなどにエラーが頻発することや、車両とスマートフォンをBluetoothでペアリングする際にトラブルが発生すること、ソーラーパネルを搭載しているのに蓄電量や航続距離に関する詳細がわからないことなどから、「このバージョンのFisker Oceanは買わないでください」と結論づけました。



ブラウンリー氏によると、実はレビューを始める前から悪い予感がしていたとのこと。ブラウンリー氏がレビューのためにFiskerに車両を用意するよう依頼したところ、Fiskerはソフトウェアがアップデートされるまで貸与しないと回答し、車両の手配を拒否しました。

将来的な改善を待ったりせず、現に消費者が乗っている車をレビューすることをモットーとしているブラウンリー氏は、Fiskerから車両を借りる代わりに、カーディーラーのJ&S Mitsubishiに車の手配を依頼しました。こうして作成されたレビュー動画が前述のムービーです。

「これまでで最悪の車」とのタイトルが付けられたブラウンリー氏のレビュー動画は、投稿から3週間ほどしか経過していませんが、記事作成時点までに444万回も再生されました。

事態の収拾に動いたFiskerは、さらなる悪手を打つことになります。ブラウンリー氏が動画の中で、ディーラーに謝辞を送ったことから、車両を手配したディーラーを突き止めたFiskerは、J&S Mitsubishiのオーナー兼ゼネラルマネージャーのジョージ・サリバ氏に電話しましたが、その際に録音されていることを知らず、不用意な発言を連発してしまいました。



Fiskerの上級エンジニアのルース・ウィットロー氏と名乗った電話の人物は、笑いながら「異端審問の一環として、あなたの爪をはがしてもいいですか?」とサリバ氏に言い放ったのを皮切りに、誰に自動車を引き渡したのかを教えるようサリバ氏に要求したり、ブラウンリー氏の動画がソーシャルメディアで話題になっていることをFiskerの経営陣が問題視していることなどを伝えたりしました。

また、レビューに使われた車両はディーラーが所有しているものだということをサリバ氏が告げると、アップデートを実施して問題を修正することを申し出ましたが、その「2.0ソフトウェアアップデート」でも多くの不具合が改善されずに残ることを率直に認めてしまいました。

サリバ氏が公開した通話のムービーは、TikTokで360万回以上も再生されています。

ブラウンリー氏のレビューや、ディーラーに電話をかけた際の対応のまずさの影響なのかは不明ですが、Fiskerの株価はレビュー動画が投稿された2月中旬から記事作成時点までに半分近くまで下落しました。また、Fisker Oceanの市場投入の遅れなどによる業務不振に苦しめられているFiskerは、2024年2月末に発表した決算で、「あと12カ月存続できるだけの十分な資金を持っていない」ことを報告しています。



自動車専門のニュースサイト・Carscoopsは、Fiskerについて「ブラウンリー氏のレビューは、若い企業が熟慮や実行性を欠いた設計を選択している様子を浮き彫りにし、またディーラーへの電話はFiskerの車と同じくらいお粗末でした」「公平を期すために私たちの経験を伝えると、Fiskerの広報部門は積極的で対応が早く、ブラウンリー氏のレビューについて問い合わせたところ、すぐに返事をくれました。Rivianのような新興のEV企業では、このような対応が得られないことがよくあり、テスラのように取りつく島もない対応をする企業もあります。Fiskerが早くこのでこぼこ道を脱することを願うばかりです」と述べました。