死に直面し“生まれ変わった”藤巻。快進撃の末に見えた希望の光『グレイトギフト』第8話<ネタバレあり>

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<ドラマ『グレイトギフト』第8話レビュー 文:くまこでたまこ>

主演・反町隆史、脚本・黒岩勉によるサバイバル医療ミステリー『グレイトギフト』。

3月7日(木)に放送された第8話では、藤巻達臣(反町)が久留米穂希(波瑠)を守ろうと奮闘する姿が描かれた。

◆久留米が真犯人だと思う人々

藤巻以外は久留米を真犯人だと思っていた。それは久留米の過去もすべて調べていたからだと思うが、久留米のことを勝手に語るのはちょっと陰湿な気がする。

自分たちだって、勝手に憶測だけで語られれば腹を立てるだろうに、白鳥稔(佐々木蔵之介)らは久留米のストーリーを作る。さらに、久留米に対して、殺人球菌「ギフト」を使用することで、苦しむ患者を自分の手で救ったと高揚感を味わっている愚かな女性だというレッテルを平気で貼るのだ。

「久留米がやったって証拠ありますか?」「久留米が真犯人だって決めつけるんですね!」と問い詰めたい。

しかし、問い詰めた瞬間、私は白鳥に排除されそうなので、画面の外からひっそりと久留米を応援することと、久留米を集団で真犯人だと決めつけるチーム白鳥と決別することにした。もしこれで久留米が真犯人だとしても後悔はない。

そう固く決意を決めたのに、チーム白鳥は憎み切れない一面がある。“イケおじ”集団とたびたび話題になる白鳥らが陰湿でも、私がちょろすぎるせいか、少しでもかわいい場面を見ると、愛おしく思えてしまうから不思議なものだ。

第8話では、白鳥が藤巻と久留米の代わりに、殺人球菌「ギフト」を培養できる人物として、検査技師・奈良茉莉(小野花梨)に目を付ける。藤巻が培養には複雑なレシピが必要だといっていたこともあり、時間がかかると思っていた。

しかし、奈良はあっさりと培養に成功。あまりの出来事に、チーム白鳥の間には、ぽかんとした表情と少し間の抜けた空気が流れる。奈良に翻弄されているチーム白鳥がかわいすぎて、何度もリピートしてしまったのはここだけの話だ。

このシーンだけ切り取れば「イケおじ最高」で終わるのに、それだけで終わらせないのが『グレイトギフト』。第8話でも、イケおじはそれぞれのやり方で藤巻や久留米を追い詰めていくことになる。

◆藤巻の「ただいま」に歓喜

一人暮らしの私は、家を出る時に「行ってきます」「ただいま」を必ず言うようにしている。最近は防犯のために、一人暮らしの女性は「行ってきます」「ただいま」を言った方がいいというが、それとはまったく関係がない。

「行ってきます」「ただいま」を言うことで、離れた家族とつながっているように感じるから、欠かさずに言っている。だからこそ、私にとって、第8話で藤巻が久留米のいる部屋に入室した際に、「ただいま」と言ったシーンが印象的だった。

藤巻は無意識だったかもしれないし、家に帰ってきたから「ただいま」というのは、普通のことなのかもしれない。

帰宅する前まで久留米が「OCT7」を作った人物だという事実が発覚したり、白鳥に久留米を無力化するように言われたり、いろいろなことがあった。

しかし、藤巻は多少の気まずさはありながらも、ちゃんと「ただいま」を伝える。そのあまりに堂々とした藤巻による「ただいま」に、悶絶しかけたのは私だけではないはずだ。

「ただのあいさつだろ?」と言われてしまえばそれまでだが、私からしたらこの「ただいま」は、藤巻から久留米に対する信頼以外に思えなかった。裏切られたと思っていれば声もかけないと思う。

藤巻は悲しそうな表情で、「なんで黙っていたんですか」「僕には教えてくれてもよかったのでは」「僕も信用されていなかったというわけですね」とさまざまなことを投げかける。

その表情はたしかに悲しそうだったが、藤巻がどれだけ久留米を信じていたかが伝わってきて、ジーンとしてしまう。

私と久留米が同じ気持ちかどうかわからない。それでも久留米にも、藤巻が自分を信頼してくれていたことは十分に伝わっていたように感じる。だからこそ、久留米は藤巻に殺人球菌「ギフト」のカウンター球菌を託した。

藤巻が信頼してくれた分、自分の思いを藤巻に伝える久留米。藤巻もまたその思いを受け継いで、久留米が研究したものを見つめる。ただの研究ではない、久留米がいろいろな思いを駆け巡らせ、殺人球菌「ギフト」を消滅させようと奮闘した日々がそこにはあった。

藤巻は、久留米が真犯人ではないと確信したのだろう。藤巻は、久留米のためにも、殺人球菌「ギフト」に関わる事件を解決させるためにも動き出す。その目には、初期の藤巻には感じられなかった強さが存在していた。

◆追い詰められる郡司

第7話では、郡司博光(津田健次郎)の妻が登場し、一瞬郡司はもう駄目かもしないと諦めたが、不穏な空気が流れるなかでもちゃんと生き残っていた。そんな郡司は、第8話で絶好調に“ずるい男”として健在しながらも、生き地獄を味わうことになった。

「郡司のどこが好きなんですか?」と聞かれると、正直好きなところがありすぎで困る。完璧そうに見えて完璧ではないところも好きだし、正直、妻・香澄(西原亜希)に逆らえないところも大好きだ。

郡司は、第8話で2つの顔をのぞかせる。

まず病院にやって来た藤巻の妻・麻帆(明日海りお)とのシーン。病院内で2人だけで会うのはまずいといいながらも、その場を離れる気配がない。そんな郡司に、麻帆は藤巻と久留米の関係を聞いたと話す。

すると、郡司は藤巻が久留米に特別な感情をいだいているといい、「妬いてる?」と麻帆を試すような言い方をする。

先ほどまで、「2人だけで…」と言っていたのに、ちゃんと甘い空気を出す郡司。「おかしいやろ〜!さっきの発言、どこいった!」とツッコミを入れながらも、郡司推しとしては、麻帆にしか見せない郡司の行動は最強の供給なので、「いいぞ!もっとやれ!」である。

麻帆をリードする郡司もいいが、妻により生き地獄を味わうことになった郡司も最高だった。郡司をどうにかすることができるのは妻か白鳥だが、今回は妻が仕掛ける。妻は郡司を呼び出し、“仲良しさん”である本坊巧(筒井道隆)と引き合わせる。

驚く郡司に、本坊は殺人球菌「ギフト」の培養株を見せ、「あの悪魔(=白鳥)の息の根を止めましょう!」と吐き捨てる。白鳥を“悪魔”と呼ぶ本坊に、「悪魔はお前だよ!」と言いたかった。

しかし、本坊がいなければ、このドロドロ展開も郡司の絶望顔も見ることができなかったと思うと、彼に感謝の思いを伝えたい。

これまで藤巻をさまざまな手で追い詰めてきた郡司だったが、愛人・麻帆を人質にとられた上に、妻にも逆らえない。さらに追い打ちを掛けるように、下っ端だと思っていた本坊にも弱みを握られるという生き地獄へ。郡司がこの危機をどう乗り切るのか今から楽しみで仕方がない。

◆藤巻なりの正義を振りかざす

藤巻は久留米を守ったことで、代わりに殺人球菌「ギフト」を投与されてしまう。しかし、久留米の作った殺人球菌「ギフト」のカウンター球菌のおかげで、藤巻は生まれ変わった。

生まれ変わるという言い方が正しいかはわからない。それでも、白鳥に支配されていたこれまでの藤巻は、殺人球菌「ギフト」で死んだ気がする。その証拠に、藤巻の口調は変化していた。

一度死を体験した人間は強いと聞くが、本当にその通りだ。藤巻と久留米は、独身寮の荷物や、研究室で培養されたギフトなどをすべて持ち出していた。初期の藤巻からは考えられないほどにしたたかだった。

これまでは、殺人球菌「ギフト」が最強だった。でも、今はカウンター球菌が存在している。藤巻も久留米も、もう白鳥に従わなくていいのだ。藤巻と久留米の快進撃は、第8話から始まった。

チーム白鳥は、藤巻が復讐として白鳥を殺そうとすると思っていた。しかし、藤巻はそんなことはしない。強い意志を持ち、白鳥を黙らせる藤巻。

久留米が真犯人ではないことや自分が真犯人を捜すこと、そして殺人球菌「ギフト」と「OCT7」を世の中から消し去って見せると強い口調で告げる。藤巻のたくましさに、言葉には表すことができないほどの熱い思いが込み上げた。

白鳥に藤巻らしい「正義」で立ち向かう藤巻。これまでやられてばかりだった藤巻が白鳥に反撃した瞬間は、これから先、忘れることがないシーンとなった。

ラストは衝撃だったが、次につながる希望の光が見えた。藤巻と久留米の「正義」が、事件の真相を突き止める日を見届けたい。