欧米男性などと比べると、親子間の愛情表現が薄くなりがちな日本の男性。「日本の男性が愛情表現をあまりしない理由は、子育て中の親のアクションが大きく関わっている」と語るのは、人間の脳の特徴を活かした子育て方法を提案する脳科学者・黒川伊保子さんです。そんな黒川さんが語る、自分の息子を優しい子に育てるための方法とは?

思春期までにたくさん「優しいことば」を入力しよう

この国の母と子は、あまり愛を口にしません。指図と口ごたえ、文句と不機嫌だけが行き交う親子も少なくありません。子は、なぜ、愛を口にしないのでしょうか。それは、親が口にしないからです。

【漫画】共感力が身につく会話のコツ

ヒトの脳は、人工知能と一緒です(本当は逆、人工知能がヒトの脳を模しているのですが)。「優しいことば」なんて、入力しなければ出てきやしません。

だから、私は改革しました。息子が生まれてきた日から、「あなたが好きよ。愛してる」と伝え続けました。息子も自然に、「好きだよ、ママ。愛してる」と言ってくれるようになり、思春期以降も、優しいことばをかけてくれるようになったのです。

たとえば、手をぶつけて痛がれば、必ず「大丈夫?」と声をかけてくれます。

夫が「よくそんな見え透いたことが言えるよな」と言ったときも、「痛いのは、手じゃなくて心なんだよ」と言ってくれました。私も彼が転べば、飛んで行って抱き上げました。転んだショックを和らげてあげたくて。子どもが痛いのは、体より心だと私は思っていたからです。口には出さないのに、息子はこのことを知っていたのでしょう。

共感力のある子に育てるなら、共感型の対話をしよう

日本の男性は共感型の会話ができない人が多いです。理由は、この国の母たちが、息子相手に共感型の対話をせず、ゴール指向問題解決型の対話をしがちだからでしょう。

みなさんも、次の例のような会話に覚えはないでしょうか?

息子「今日、こんなことがあって」
母「あんたも、ぐずぐずしてるからね」《問題点の指摘》
息子「……」
母「いやなら、やめちゃえば?」《問題解決》

日頃、このように問題解決型の対話を使っている人は多いのではないでしょうか。同じことを夫にされたら、けっこうムカつく会話を、つい息子とはしてしまうものなのです。一方の共感型の会話になると、どんな変化が生まれるのでしょうか。

息子「今日、こんなことがあって」
母「あー、それは、つらいよねぇ。そこは、はっきり言っていいのでは?」《共感》
息子「うん、次はそうする」
母「がんばってね。あなたなら大丈夫」《承認》。

男子は、基本的に、母親から「ことばのエスコート」を教わらないと、ほかにチャンスがありません。男同士は、ゴール指向問題解決型で話をするからです。反対に、母親と共感型対話の訓練ができていれば、自然に、ことばのエスコートができる息子に育っていきます。