―鍵は日台産業協力だ―

Q)日経平均株価が先週末2月22日に史上最高値を更新しました。武者リサーチは今年は難なく4万円を超えると言ってきました。この史上最高値の意味するところは何なのか、この先どうなるのでしょうか。

A)株価は経済の最先行指標。これが高値を更新したということは日本の新時代、新しい繁栄の出発と考えることができる。今が登山のピークなのではない。むしろ、壮大な株価上昇が始まる。ひょっとするとすぐに5万、6万円となり、5~10年以内に10万円になる可能性がある。最高値を更新したことで市場参加者が妥当株価を測る物差しがなくなった。

Q)妥当株価をどのように測ればいいのでしょうか。武者リサーチはどう計算していますか。

A)2013年のアベノミクス登場以降の10年間、日経平均株価のPERは12~18倍の間で推移してきた。その中間値15倍(益回りは6.7%)がコンセンサスで見た妥当株価と考えられている。であれば、今年の予想EPSを2500円と見て、4万円が妥当株価となる。しかし、妥当PERは歴史的に大きく変化してきた。長期的に見て日本も米国も『妥当な株式益回りは長期国債利回りと同等水準』と見てよいのではないか。

 日米の株式益回りと国債利回りの長期推移を振り返ると、両者のスプレッドは大恐慌やバブル崩壊後のリスク回避心理の局面で大きく上昇し、市場心理の回復とともに縮小し、リスクテイクが強まった局面ではマイナスが続いてきたことが確認できる。米国の場合、リーマン・ショック直後の大幅なスプレッドがほぼ解消し、現在は『株式益回り=長期国債利回り』の水準にある。米連邦準備制度理事会(FRB)はかつて『株式益回り=長期国債利回り』を妥当株価としたフェアバリューモデルを試算していたが、今の米国はそこに戻っている。

 一方、日本はと見れば、1970~1990年代までのリスクテイク旺盛な時期には、日本の株式益回りは恒常的に債券利回りを下回り続けていた。しかし、2000年代に入りリスク回避姿勢が深刻化し、現在は大恐慌直後の米国のように、株式益回りが国債利回りを極端に上回る水準にある。今後、市場心理が改善し、米国のように益回りは長期国債利回りの水準に向かって低下していき、どこかの時点で『株式益回り=長期国債利回り』という均衡水準に行きつくのではないだろうか。

 では、日本の長期金利はどこまで上がるのか。2%インフレが定着し、日銀の超金融緩和政策が終わる時点で3%まで上昇したとしよう。となると、益回り3%、PER33倍が妥当株価となる。このように考えれば、今の企業業績(EPS)のままでも妥当株価は、日経平均株価8万円という水準が正当化されることになる。日経平均株価が史上最高値を突破したことによって、市場心理凍結時代の株価尺度が投げ捨てられれば、日本株式は糸の切れた凧のように大きく舞い上がる可能性があり得る。日経平均株価10万円は遠い将来の話ではなく、今そこにある現実なのかもしれない。

Q)日本の新たな繁栄の時代とはイメージがわきませんが、どのような形の国になるのでしょうか。

A)日本はハイテクの生産強国になるだろう。東アジアにおけるハイテク製造業のハブは、30年前に日本から中国、韓国、台湾に移った。これが日本に戻ってくるというイメージがほぼ確かになっている。今の 半導体ブームはその前兆と見てよい。現在の日本の景況改善をもたらした半導体ブームと円安などは、かねてから説明しているように、米中冷戦という地政学環境の変化抜きには考えられない。米国筋書きの世界サプライチェーンからの中国排除、日本産業復活が進行している、ということである。