“唯一の友だち”の裏切りも受け入れる…藤巻の懐の広さに脱帽『グレイトギフト』第6話<ネタバレあり>
<ドラマ『グレイトギフト』第6話レビュー 文:くまこでたまこ>
主演・反町隆史、脚本・黒岩勉によるサバイバル医療ミステリー『グレイトギフト』。
2月22日(木)に放送された第6話では、逆襲に動き出したものの、唯一の友だちから裏切られる藤巻達臣(反町)の姿が描かれた。
◆覚醒しようとする藤巻と絶対に裏切らない久留米
第6話でも、藤巻は散々な目に遭う。それでも、藤巻は立ち止まることをしなかったし、自分なりに進んでいこうとあがき続けた。
新理事長・白鳥稔(佐々木蔵之介)、心臓外科医・郡司博光(津田健次郎)、事務長・本坊巧(筒井道隆)、会員制ラウンジのオーナー・安曇杏梨(倉科カナ)という強敵を前にしても、喚き散らすこともしない。
ただ自分にできることだけを考えて、白鳥に今後は自らの意志で殺人球菌「ギフト」を作ると宣言し、代わりに莫大な金を要求する。何か考えがあるとはわかっていても、誰に対しても温厚なあの藤巻から出た発言なのかと耳を疑いたくなってしまう。
さらに、驚くことに検査技師・久留米穂希(波瑠)にも、殺人球菌「ギフト」を作るのを手伝ってもらうと強めに告げる。敵か味方もわからない久留米をそばに置いても大丈夫なのかと心配したが、それは大きなお世話というものだった。
結果から言えば久留米は藤巻を裏切っていなかったし、藤巻も久留米が自分を裏切っているとも思っていなかった。誰もが「白鳥先生」に忠誠を誓うなか、久留米だけは「藤巻先生がそうおっしゃるんでしたら」「私は藤巻先生に従います」と藤巻の名前を挙げた。ここまで藤巻を信じてくれた人がいただろうか、いやいない。
久留米の存在や言葉が、第6話でも藤巻を支えたことは間違いない。だからこそ、久留米だけでも藤巻の味方でいてくれることが、イチ視聴者としても救われた。
その後、殺人球菌「ギフト」を培養するために、研究室に戻った藤巻と久留米。ピリピリしたモードになるかと思えば、藤巻は盗聴を恐れてメモで久留米を屋上へと呼び出す。
あまりのスマートさに、本当に不器用だった藤巻なのかと疑いたくなる。しかし、多くの裏切りを体験した藤巻は、いろいろな知恵を働かせ、成長していた。久留米とともに、殺人球菌「ギフト」の事件に終止符を打つために動き出す藤巻が誇らしかった。
◆神林に藤巻が向けた「友だち」という言葉
藤巻と警視庁の元刑事・神林育人(尾上松也)は、共通点も多く、どことなく同じ雰囲気を感じていた。そんな2人は、ちゃんと友だちだったように思う。
殺人球菌「ギフト」の件で、警察に怪しまれることを警戒していたため、神林が近づくたびに、藤巻はびくびくしていた。しかし、神林はそんな藤巻に常に優しく声を掛け、時にはプリンも分けてくれた。
藤巻はそんな神林を信じていた。神林が友だちと言ってくれた時に見せた藤巻のうれしそうな表情はいま思い出してもほっこりするし、個人的には名シーンだと思っている。友だちとなった2人が、殺人球菌「ギフト」の件で共闘してくれたらどんなにうれしいことかと待ち望んでいたが、そんなにうまくはいかなかった。
第6話では、私が思い描いていたものとは真逆な展開になった。神林が藤巻を裏切ったのだ。藤巻が久留米とともに、神林へ事件の全貌を密告し、ともに白鳥を逮捕しようとしていたが、そのすべては神林から白鳥に報告されていた。
藤巻は、神林が娘の命を守るため、白鳥にすがることしかできないことを痛いほど理解していた。だからこそ、神林から全貌を聞いても藤巻は怒ることはなかった。それどころか、藤巻は神林に「友だちとして話を聞くくらいはできますから」と告げた。唯一の“友だち”の裏切りさえ包み込む、藤巻の懐の広さに脱帽した瞬間だった。
藤巻が神林にそうと言えたのは、あの日、神林が自分を「友だち」と呼んでくれたことがうそではないと知っていたから。神林が藤巻を救ってくれたように、藤巻が友だちである神林を苦しみから救ってくれる未来に期待したい。
◆ギフトを誕生させた人が動き出す
女子会を開いた後の私は、「人生いろいろあるからさ…頑張ろうね」という言葉を口にする。人の数だけ、悩みはあり、その悩みは謎に重なる。そのたびに何で私だけと落ち込むが、基本的にはポジティブなので、「まぁいっか」で終わらせてしまうのだ。
そんな私でも、藤巻の人生を体験したら立ち直れない自信がある。裏切りの数々に疲弊し、自分の研究室で楽しそうに座っている白鳥を見たら、藤巻同様に「もういっそのこと殺してくださいー!」と叫んでしまうと思う。
「これ以上、人を殺したくありません!」と本音をぶちまけ、白鳥が仕掛けた盗聴器の存在もわかっていると白鳥に訴える。白鳥はそんな藤巻にも動じることはなく、藤巻が手にしていた盗聴器がいつからあるのか問うのだ。
鬼畜すぎる白鳥に、藤巻にこだわる理由を問いたくなる。一方で、藤巻には申し訳ないが、取り乱した素の藤巻に対して、白鳥が藤巻を構いたくなる理由がわかってしまう。私も白鳥と変わらないほど鬼畜なのかもしれないと思ったのはここだけの話だ。
しかし、そんなのんきなことを考えている場合ではなかった。盗聴器は白鳥が仕掛けたものではなかった上に、藤巻のスマホに殺人球菌「ギフト」の創造者と名乗る人物から電話がかかってくる。その人物は、殺人球菌「ギフト」の売買をやめるように指示してきたのだ。
従わない場合は、病院内の患者にギフトを送るという殺人球菌「ギフト」を作った人物。その言葉に、藤巻と白鳥は患者の元へと走り出す。向いている方向が異なっていた藤巻と白鳥だったが、患者を救いたいという思いは一緒だった。
第7話では、藤巻と白鳥は一緒になって、殺人球菌「ギフト」を作った人物を探そうと奮闘するのだろう。対立し合っていた2人が休戦し、協力して殺人球菌「ギフト」を作った人物を見つけ出そうとするのかと思うと、楽しみで仕方がない。
藤巻と白鳥が、殺人球菌「ギフト」を作った人物をどうやって追い詰めていくのか、第7話への期待が高まる第6話となった。