2024年にJALが導入した新型長距離国際線主力機「エアバスA350-1000」には、斬新な機構を持つファーストクラスが設置されました。しかしJALのファーストが“斬新”だったのは、同社初のジェット機でも同様でした。

「3つのモードに切り替え可能」な最新ファースト

 2024年1月、JAL(日本航空)が新型の長距離国際線主力機「エアバスA350-1000」を就航させました。同社の長距離国際線主力機が更新されるのは約20年ぶりで、客室仕様も全面的に一新されています。

 とくにファーストクラスは同社初の完全個室型を採用。他の航空会社ではあまり類を見ない、150cm超の高い壁を設置しています。座席は通常時の「ソファー」モードに加え、座席兼ベッドとする「シート&シングルベッド」、席をすべてベッドとして使う「ダブルベッド」の3モードが選択できる特徴的な仕様となっています。


JALのエアバスA350-1000(乗りものニュース編集部撮影)。

 新時代を思わせる最新のファーストクラスですが、実は、60年以上前にJALのジェット機として初めて設けられたファーストクラスとの共通点もあります。

 羽田空港のJAL格納庫の片隅には、JAL初のジェット旅客機であるダグラスDC-8「FUJI号」の実機の機首部分が保存されており、このなかに当時のファーストクラスの座席が設置されています。同機は今から64年前、1960年に就航しました。

 このDC-8の機体最前方には、同機の客室における最大の特徴「機内ラウンジ」があり、その後ろにファーストクラスが設置されています。現在のエコノミークラスに相当する「ツーリストクラス」が横3-3列だったのに対し、ファーストクラスは横2-2列のレイアウトとなっていました。

 とはいえ、もちろんこの頃の席はファーストクラスといえどもフルフラットにはできませんし、モニターもありません。席の幅は現代の一般的なエコノミークラスよりも少し広そうなイメージです。

 しかし、この座席は、現在のJAL最新ファーストクラスにも引けをとらない、個性的なものとなっていました。

60年以上前の「JALファーストクラス」特徴は?

 DC-8のファーストクラスを特徴づけるのは、壁に飾られた扇に象徴される「和テイスト全開」な内装でしょう。座席は伝統的な老松紋があしらわれた西陣織のシートカバーで覆われ、光の当たり方次第では、かなり“ギラギラ”した席に見えることもあります。


JALのDC-8(画像:JAL)。

 また、そのサービスは、現代からするとびっくりするようなものがあったそうです。当時の資料によると、食事は非常に豪華で、ロブスターと思しき巨大エビのメニューなども振る舞われたそうです。JALでは2024年現在、A350-1000運航便を含むファーストクラス旅客に対し、キャビアなどを提供するサービスもありますが、インパクトの面では、黎明期のファーストクラスの食事に軍配が上がるかもしれません。

 その一方、DC-8でも見られた「和テイスト」が、A350-1000でも違う形で引き継がれているのです。

 後者の新客室に打ち出されたコンセプトは「日本の伝統美」。JALが発行するWebマガジン「OnTrip JAL」で、客室開発担当者は「日本の伝統的な織り柄やパターンを“忍ばせる”ようなデザインアプローチを心がけました」とコメントしています。