「脱毛」に目覚めたイタリアのアラフォー男性と反旗を翻すZ世代、勝つのは…
男女ともに美意識の高いイタリアでは、30代から40代の男性の間で脱毛をすることが常識になりつつあります。彼らは脱毛についてどのように考え、どうやって脱毛しているのでしょうか? その一方で、Z世代では脱毛に縛られない考え方も生まれており、体毛を巡る戦いがヒートアップしています。
ムダ毛処理に興味津々
イタリアの女性は脚、腕、脇の下、VIOゾーン(デリケートゾーン)に体毛がないのが常識です。エステサロンを利用したり、家庭でカミソリやワックス、クリームを使ったりすることが一般的です。
これまで脱毛は主に女性がするものでしたが、近年、ムダ毛の除去に興味を持つ男性が増えています。2023年はグーグル・イタリアで「メンズ 脱毛」というキーワードの検索が急増しました。
地元メディアのFocus誌によると、イタリアでレーザーによる永久脱毛をしている人の男女の割合を見てみると、10人中3人が男性とのこと。その数を欧州の他国と比べた場合、イタリアはスペインに次いで2番目に多い国となっています。また、除毛クリームメーカーのVeet Menが18歳から54歳までの男性を対象に行った調査では、回答者の約60%が脱毛の経験があると答えました。
そのようなイタリアでは、2023年のクリスマス商戦で家庭用光脱毛器が主力商品とされ、テレビCMや家電量販店のバナー広告でも盛んに紹介されていました。テレビの宣伝では女性を主役にしつつ男性が使うシーンも放映されていた一方、パッケージのデザインや本体とセットとなるポーチの色が男性向けという商品も販売されています。
イタリアのあるニュースサイトが行った調査によれば、光脱毛器に興味を持った人の40%を男性が占めているとの結果が得られたそう。男女を問わず、安価に手軽にムダ毛を処理できる家庭用光脱毛器の需要が高まっていることがわかります。
ヒゲは処理しない
では、イタリアの男性はどこを脱毛するのか? Veet Menの調査によると、イタリア人男性に人気の脱毛部位は脇の下、VIO、胸、腹部、背中、眉毛、脚の順になるとのこと。脱毛する理由としては「見た目の美しさの追求」と「流行」を挙げる人が多く、他方で「衛生面」と「スポーツ時の快適性」を求める人もいました。
イタリア人男性を日本人男性と比較すると、違いが顕著に浮かび上がります。情報サイトの駅探PICKSによれば、日本人男性に人気の脱毛部位はヒゲ、すね、VIO、太もも、全身、腹部の順となるそう。
日本人男性の最も脱毛したい部分がヒゲである理由として、「剃るのが面倒」「清潔感を求めて」が上位に挙げられています。もともと体毛が濃く、男性のおしゃれとしてヒゲにこだわりを持つイタリア人男性とは大きな違いが見られます。日本人男性が興味を持っている脱毛方法の一位は「医療クリニック」で、家庭用光脱毛器を欲しがるイタリア人男性とはこの点でも異なります。
脱毛からの解放
一方、より若い世代の間では新しい考え方も生まれています。オンライン医療サイトのMio dottoreは、Z世代と呼ばれる25 歳未満の人たちの3分の1は、脱毛という常識に囚われなくなっているといいます。「体毛を処理しないことが正常 (33%)」 「体毛を処理しないのは自由と同義語 (33%) 」というアンケート結果もあり、こういった価値観から「体毛ポジティヴ運動(Body Hair Positivity Movement)」も誕生しました。この動きは、従来の社会的な規範や価値観から女性だけでなく男性をも解放する試みとしてSNSで共有され、欧米中に広がっています。
男性なりの美しさを追求するイタリアの30代から40代の男性の間では、「体毛がないことが美しい」という意識が広がりつつあります。その一方で、より若い世代では脱毛に囚われないことに新たな価値を見出しています。まだ保守的なルッキズムが根ざすイタリアにおいて、これからZ世代が脱毛市場にどのような影響を与えていくのかが注目されます。
執筆/Ciho