「ひとつひとつのショットが(完全に決まらずに)90%だったり、80%だったりしても、しっかり重ねることで、エンドを通して120%になっている」(上野美優/SC軽井沢クラブ)

「総合的なチーム力というか、誰かの調子が悪くても、必ず他の誰かが補っていて、全員が悪いことがない」(佐々木穂香/ロコ・ステラ)

「調子がよくなくても、勝ちへの道を見出すことができる」(近江谷杏菜/フォルティウス)

 まもなく開幕する第41回全農 日本カーリング選手権(1月28日〜2月4日/札幌市 どうぎんカーリングスタジアム)。3連覇を狙う"女王"ロコ・ソラーレについて聞くと、ライバルチームの選手たちはそう答えた。

 ロコ・ソラーレの強さについては、安定感、経験値、コミュニケーション、LSD(ラストストーンドロー)、アイスへの対応......さまざまな言葉で語られるが、特に近年は前述の3選手が挙げてくれたように「悪い時でも勝ちきる」部分が際立っている。

 そして今季は、「悪い」とまではいかなくても、成績面で苦しんでいる印象がある。

 開幕戦に選んだ地元のアドヴィックスカップこそ優勝したものの、秋のカナダ遠征以降は9大会に参加して、決勝に進出したのは日本代表として出場したパンコンチネンタル選手権(PCCC)のみ。そのPCCCでの銀メダル獲得も、世界選手権出場権確保もすばらしい結果ではあるが、勝ちきれなかったことは事実だ。

 ただ、それを不調や停滞と捉えてしまうのは早計だろう。ロコ・ソラーレは今季、デリバリーを根本から見直す決断をした。

 サードの吉田知那美は、「チームとして勝ちやすい状態へ持っていく訓練」と語っていたが、チームとして投げ方をあらためて確認することで、アイスリーディングのスピードアップなどが見込める。


日本選手権3連覇を狙うロコ・ソラーレ

 時に勝敗よりも、投げ方の矯正を重視したため、結果にはなかなか結びつかなかったが、カナダ遠征中に「完成形に近づきつつある」とスキップの藤澤五月。一定の手応えを得ていただけに、不調というより"充電"や"助走"と解釈したほうが、このチームに限ってはなじむかもしれない。

 シーズン開幕前に「"ここで勝ちたい"という試合を明確にして、結果を出せる準備をしたい」と藤澤が語っていたように、日本選手権でその"完成形"を披露できれば、3連覇にもっとも近いチームであることは間違いない。

 一方、ライバルチームも虎視淡々と女王の座を狙う。

 小谷優奈をスキップに据えて新たなスタートをきり、今季3勝を挙げているフォルティウス。昨年末に地元開催の軽井沢国際で初優勝を果たし、勢いに乗る中部電力。昨年の日本選手権でロコ・ソラーレから白星を奪っている北海道銀行。

 さらに、今季ツアーでロコ・ソラーレに勝利しているSC軽井沢クラブとロコ・ステラ。また、新鋭の岩手県協会やGRANDIRとは、ロコ・ソラーレにとって今回が初顔合わせとなる。何が起きても不思議ではない。

 2026年ミラノ・コルティナダンペッツォオリンピックの代表選考に向けて、今回と来年の日本選手権の優勝チームは大きなアドバンテージを得る。

 充実の強化を積んできたライバルチームが、ロコ・ソラーレを止めるのか。ロコ・ソラーレが地力と進化で勝ちきるのか。熾烈な1週間が始まる。