森保一監督が率いる日本代表は、アジアカップのグループリーグで苦戦を余儀なくされている。ベトナムに一時はリードされ、イラクには1−2と敗戦。グループ2位で、どうにかベスト16に勝ち上がった。

 今大会のエースと目された久保建英(22歳)だが、そのプレーは及第点が与えられるのか?

 グループリーグ3試合の久保のプレーを振り返ってみたい。


インドネシア戦に先発、後半37分までプレーした久保建英 photo by Reuters/AFLO

 ベトナム戦の後半39分に出場すると、久保はたった1分で試合の決着をつけている。最終ラインの前のスペースを見つけると、堂安律からのパスを呼び込み、上田綺世に決定的パスを入れ、3点目を演出。一気に攻撃スピードを上げる技術戦術センスは卓抜だった。チームは1−2から3−2へと逆転していたが、追加点を奪えない展開だっただけに、停滞感を打ち破ったと言える。

 一方でイラク戦の久保は先発トップ下でプレーしたが、前線で孤立した感は否めなかった。伊東純也、南野拓実、浅野拓磨はそれぞれ近い距離をとって連係から守備を崩していくタイプではなく、プレーを練り込めない。久保もやや空回りだった。

 そこで久保はインサイドハーフっぽく神出鬼没となり(鎌田大地が最近の代表でやっていたような動き)、パス出しやクロスに活路を見出しながら、「カウンター攻撃」に術式を変更している。実際、浅野のスピードを生かしたラストパスはハイレベルだった。しかし、浅野のシュートは大きく枠を外れた。逆サイドからは伊東も足を使って入っており決定機だったが......。

 そしてインドネシア戦、久保は再び先発でトップ下を任されている。堂安律、中村敬斗、上田綺世とのかみ合わせは悪くない。左右サイドバックとの連係も、この日はよかった。

 24分、相手ボールを奪った攻守切り替えから、上田が落としたボールを受けた久保はゴール前に入った遠藤航へパス。そのこぼれを右足で狙った。連続性のある攻撃を展開した。

 33分、久保は左サイドで浮き球のパスを中村に通す。芝生のせいでボールの通りが悪く、空中を使ったのだろう。シュートのこぼれ球を拾い、ミドルを放つもブロックされた。続くプレーで、右サイドの毎熊晟矢とのワンツーからノールックのパス。出色のビジョンと判断で、その折り返しを中村が右足で合わせたシュートはポストを直撃した。

【大事なときに所属クラブを離れ...】

 44分には、味方のパスの出し入れから左サイドバックの中山雄太が幅を取ったところ、久保は間隙を縫って裏へ走ってパスを受ける。そして、左足クロスでファーから入った毎熊に通した。ただ、その折り返しを上田は決めることはできなかった。

「ボールロストが多い」

 そう久保を批判する論調もあるようだが、圧倒的に多くプレーに関与し、決定的な仕事をしていた。多く打席に立てば、必然的に凡退数も増える。それだけ攻撃に関わっていること自体、エースの証明だろう。

 今はチーム構造上、トップの近くにいるだけだとボールが巡ってこない。鎌田、三笘薫が不在の影響で、前へボールを進める力が弱くなっており、トップ下が中盤やディフェンスラインの前まで下がってプレーに関与しないと、ノッキング状態に陥る。久保はつなぎの仕事にも関与することでリスクを負い、攻撃を活性化していたのだ。

 グループリーグを通して、久保のプレーは決して悪くない。

 もっとも、本人がこれに甘んじるプレーヤーでもないだろう。久保の天賦の才は、コンビネーションにある。周りの選手を輝かせ、自らも輝く相互作用に特徴があり、圧倒的な精度とひらめきで守備を崩す。その多彩さが彼をワールドクラスの選手にしている。

 それ以外の様式にも適応できる選手だが、率直に言って、森保ジャパンはボールプレーヤーを十分に運用できていない。選手の選び方や組み合わせからモチベーションの作り方まで、グループリーグでは最善のチームを用意できなかった。選手個人の実力は各クラブで示されているだけに、どこに原因があるかは明白だ。

 久保が不在の間、レアル・ソシエダ(以下ラ・レアル)は大きく変化しつつある。

 ラ・レアルはリーグ戦でアスレティック・ビルバオにバスクダービー決戦で敗れたが、セルタには快勝を収めた。スペイン国王杯ではマラガ、アラベス、オサスナを次々と撃破し、準々決勝ではセルタも1−2と敵地で下し、準決勝進出を決めている(準決勝ファーストレグは2月7日の予定)。そして2月14日には、チャンピオンズリーグでパリ・サンジェルマンと決戦に及ぶ。

 陣容もすでに変わっている。

 右サイドバックはBチームのジョン・ミケル・アランブルが台頭。国王杯、セルタ戦は先発を務めた。また、ウニオン・ベルリンからスリナム代表FWシェラルド・ベッカーと移籍金210万ユーロ(約3億2000万円)で獲得。前線の万能タイプで、国王杯、セルタ戦ではトップで先発し、いきなり得点を決めた。また、左サイドバックに故障者が多発したことで、アトレティコ・マドリードからハビ・ガランも獲得している。

 久保は中心選手でありポジションが脅かされることはないだろう。しかし、重要な局面でクラブにいない事実は重いし、顔ぶれも変わる。彼はそのリスクを背負い、アジアカップを戦っている。アジア戴冠だけが、唯一の救いということか。久保が森保ジャパンを牽引するしかない。