中国市場のPHV販売台数は絶対数ではまだEVに及ばないが、伸び率は大きく上回る。写真は吉利汽車製のPHV「銀河L7」(同社ウェブサイトより)

急激なEV(電気自動車)シフトを続けてきた中国の自動車業界で、エンジンを併用するPHV(プラグインハイブリッド車)の競争力を再評価する声が高まっている。

「PHVとEVは今後も長きにわたり併存するだろう。新エネルギー車市場における比率は、それぞれ半分ずつになる可能性が高い」。中堅自動車メーカー、吉利汽車(ジーリー)の淦家閲CEO(最高経営責任者)は1月5日、新型EV「銀河E8」の発売イベントでそんな見方を披露した。

(訳注:「新エネルギー車」は中国独自の定義で、EV、PHV、燃料電池車[FCV]の3種類を指す。通常のハイブリッド車[HV]は含まない)

PHVの伸び率はEVの3.5倍

事実、PHVの販売台数はEVを猛追している。中国汽車工業協会のデータによれば、中国市場における2023年1月から11月までのPHVの販売台数は、レンジエクステンダー型EVを含めて243万9000台と前年同期比83.5%も増加した。

(訳注:「レンジエクステンダー型EV」は、航続距離延長用の発電専用エンジンを搭載したEVを指す。中国の販売統計上はPHVに分類される)

これに対して、同じ期間のEVの販売台数は586万台と絶対数では大きく上回るものの、前年同期比の増加率は23.6%にとどまった。PHVの成長速度はEVの3.5倍であり、勢いの差は明らかだ。

中国市場でのPHV人気を象徴する1社が、新エネルギー車専業大手の比亜迪(BYD)だ。同社の2023年の販売台数はEVが157万5000台だったのに対し、PHVは143万8000台とその差14万台弱に迫った。その他の中国メーカーも、PHVやレンジエクステンダー型EVの追加投入を急いでいる。

「2023年の新エネルギー車市場が予想以上に拡大したのは、PHVの急成長のおかげだ」。吉利汽車の副総裁(副社長)を務める林潔氏は、財新記者の取材に対してそう語り、背景を次のように解説した。


PHVを含む新エネルギー車の優遇政策延長を受け、商品戦略を見直すメーカーが相次いでいる。写真は吉利汽車の本社ビル(同社ウェブサイトより)

「中国の自動車業界では、新エネルギー車の自動車取得税減免など中国政府の優遇政策に関して、PHVはいずれ対象から外されるとの見方が主流だった。ところが2023年6月、政府が従来の優遇政策を2027年末まで延長すると発表したことが、PHVの追い風になった」

メーカーが戦略を軌道修正

優遇政策の延長を受けて、吉利汽車は商品戦略を速やかに修正。サブブランドの「銀河」と「領克(リンク)」のラインナップに複数のPHVを追加した。さらに近い将来、複数の新型PHVの発売を予定しているという。


本記事は「財新」の提供記事です

これまでEVだけを生産・販売してきたメーカーも、次々に軌道修正を打ち出している。例えば、国有自動車大手の長安汽車の傘下にある高級EVメーカーの阿維塔科技(アバター・テクノロジー)は、レンジエクステンダー型EVの複数の新型車を今後投入していく計画だ。

(財新記者:安麗敏)
※原文の配信は1月6日

(財新 Biz&Tech)