「何も恥じることはない」井上尚弥に惨敗も止まぬ賛辞 タパレスに母国紙も健闘ぶりを再評価「闘志は数字に表れない」

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井上に敗れ、悔し気な表情を浮かべたタパレス。しかし、彼の奮闘には母国内での評価は高まっている。(C)Takamoto TOKUHARA/CoCoKARAnext

 マーロン・タパレス(フィリピン)が、井上尚弥(大橋)と繰り広げた攻防戦は、母国の人々を大いに感化させた。

 昨年12月26日に東京・有明アリーナで行われたボクシングの世界スーパーバンタム級4団体統一戦12回戦で、WBA&IBF王者だったタパレスは、WBC&WBO王者の井上に10回1分2秒KO負け。フィリピン人史上初の「4団体統一」の夢は儚く散った。

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 眼前に立ちはだかった“怪物”は、あまりに頭抜けていた。タパレスは試合序盤からL字ガードを用いた守勢に回されながらも、井上が「思っていた以上に凄い」と評したほどに耐え続けた。だが、4回にダウンを喫すると、10回にガードの上から強烈なワンツーパンチを被弾。リングに膝から崩れ落ちると、再び立ち上がることはできなかった。

 ともすれば、防戦一方という試合展開にも見える。だが、国内メディアのタパレスに対する評価は大きく変わっている。フィリピンの日刊紙『Phil Star』は「成功を収めた敗者」と銘打った記事を掲載。「タパレスは日本の偉大なるナオヤ・イノウエと徹底的に血を流して戦った」とし、「タパレスはイノウエによりハードなボクシングと賢さを強いた。彼は明らかに劣勢だったが、10回まで耐え抜いた。最終的に死肉となったが、闘志は数字には表れない」と絶賛している。

 世界が注目した大一番での敗戦だ。しかし、同紙は「恥じることは何もない」と断言。「イノウエは懸命に戦わなければいけなかった。彼は汚れなき記録(無敗記録)の完璧さが保たれたことに安堵したに違いない」とし、次のように死闘を繰り広げた母国の名手を称えた。

「タパレスは多くの人々の心を掴んだ。彼は最後まで勇敢な心で戦ったのだ。イノウエという怪物に死に物狂いで戦った末に敗れたが、彼は敗者となっても尊敬を勝ち取るという素晴らしい物語をフィリピンに伝えてくれている」

 敗れてなお、賛辞を集めているタパレス。井上に真っ向から対峙した彼の勇ましい姿は、母国民の胸を打っているようだ。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]