燕の低迷は「村上のせいじゃない」 5位からの復権へ…坂口智隆氏が明かすキーマン
坂口智隆氏が古巣ヤクルトの2024年を展望「噛み合えばAクラスを狙える」
リーグ連覇の王者が、2023年シーズンはまさかの最下位争いを余儀なくされた。57勝83敗3分、勝率.407で首位・阪神とのゲーム差は29。最下位・中日とは0ゲーム差で、かろうじて5位に踏みとどまった。誰もが予想できなかった急激な落ち込みは、なぜ起きたのか。
シーズン前にヤクルトを優勝候補に挙げていた坂口氏は「連覇した時のメンバーはほとんど抜けていない。うまく噛み合えば、能力的にはAクラスを狙えるチーム」と語る。主力がWBCに参加し、怪我人、不調と想定外の出来事も多く「そう簡単にいかないのがプロ野球。攻守で課題が出たシーズン」と解説する。
2022年に38セーブをマークした絶対的・守護神のスコット・マクガフ投手が退団。その穴は左腕・田口麗斗投手(50試合、3勝5敗33セーブ、防御率1.86)が埋めたが「田口選手の穴を埋めることはできなかった」。2022年に中継ぎで防御率1.25と活躍した田口の“穴”を、他の投手が埋めきれなかったと語る。打線についても「連覇した時は1軍の若手が争ったレギュラーポジションは1つだったが、今年は3つ。若くてもいいが、ある程度計算できて安定した成績を残せる選手が必要」と指摘する。
リーグ連覇の時は遊撃で長岡秀樹内野手を我慢強く起用。村上、山田哲人内野手、塩見泰隆外野手らがカバーしつつ、勝利と育成を両立させ頂点を掴んだ。だが、2023年は怪我も続出し並木秀尊外野手、内山壮真捕手、濱田太貴外野手らを、坂口氏の言う“育成枠”として起用。1軍経験を多く積んだだけに「あとは数字を残せるか。ここにこだわってレギュラーとしての成績を残せれば打線も機能していく」と期待を寄せる。
リーグ連覇からBクラス転落の要因は「村上じゃない」
開幕当初は村上の不振がクローズアップされたが、終わってみれば打率.256、31本塁打(リーグ2位)、84打点(同4位)と復調。3冠王に輝いた2022年と比べると数字を落としたが「個人的にはBクラスの要因は村上選手の『成績が悪かった』じゃない」と見ている。
「不振の中でも本塁打、打点は数字を残した。求められるのが毎年、3冠王だったらハードルは高すぎる。打線をみればサンタナが打率3割、オスナも20本打っている。中軸の脇を固める選手も数字を残している。“村上選手頼り”にもなっていないのだから、本来なら勝たないといけない」
鍵を握る選手には塩見の名前を挙げる。2023年は怪我の影響で51試合の出場(打率.301、8本塁打31打点)に留まったリードオフマン。中軸は村上、ホセ・オスナ内野手、ドミンゴ・サンタナ外野手が控えるだけに、得点能力を上げるためには上位の出塁率が大事になる。
「村上選手は誰もが認める存在。打線を考えると1番・塩見選手からはめていかないと。ある意味一番、軸にならないといけない。フルイニングとはいわないが、1年間1軍で居続けることが最低条件。塩見が1番として機能すれば攻撃のパターンはたくさん生まれる」
若手の台頭、即戦力ルーキーにも期待しつつ「日本一の阪神が優勝候補になるが、ヤクルトもAクラス争いに食い込める力は持っている。昨年出た課題を生かすことができれば、チームも大きく変わる」。セ・リーグを席巻した強さを取り戻すことができるか、注目される。(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)