「いろんな人に何を言われようと…」 本田真凜、強行出場の裏に信念 涙の2分50秒で溢れた感謝
フィギュアスケート全日本選手権・女子SP
フィギュアスケートの全日本選手権(長野・ビッグハット)は22日、女子シングルのショートプログラム(SP)などが行われた。9年連続の出場となった22歳・本田真凜(JAL)は、右骨盤の痛みと戦いながらも演技を完遂。44.42点で上位24選手によるフリーには進めなかったが、大学ラストイヤーの大舞台を悔いなく終えた。
ジュニア時代から9年連続となった大舞台。右骨盤に故障を抱えながら、本田は万感の思いでリンクに立った。「長いスケート生活の中でも一番と言っていいくらい悪いコンディションだった」。明大4年で、大学ラストイヤー。痛みがあっても「棄権」の選択肢はなかった。
「全力で思い切って最後まで滑り切る自分を、自分自身にも見せたかったし、どんな状況でもたくさん応援して下さる方がいる。棄権という形ではなく、自分の今できることを見せられたら、恩返しに少しでもなっていたら……という気持ちでした」
煌びやかな装飾が付いたグラデーションの衣装で、SP曲「Faded」に乗って滑り始めた。冒頭の3回転サルコーに着氷。回転不足だったが、会場は大きな拍手に包まれた。ステップ、スピンにも気持ちを込め、演技を完遂。フィニッシュ後は両手で顔を覆い、目には涙が光った。
結果は44.42点で最下位の28位。フリーには進めなかったが、格別の思い入れがある大会を「悔いも何一つない」2分50秒の演技で終えた。リンクを去る前、片膝を折り、右手でそっとリンクに触れた。
「数年前の自分では、こんなに応援してくださっている方がいるんだと気づけていなかった部分もある。たくさんの方が途中でも声をかけてくださった。9年目の全日本ですが、毎年特別な気持ちもあるし、何回滑ってもここを目指す気持ちはわかる。自分もその一人なので。最初にジュニア上がりで全日本に出られる年齢になった時から、大学4年生の今まで一度も落ちることなく演技ができたことは、自分の頑張ってきた成果だと思う」
「いろんな人に何を言われようと…」示したかった感謝の演技
2歳からスケート靴を履き、2016年には世界ジュニア女王にもなった。「スケートをしていたからこそ幸せなこともたくさんありましたし、逆に苦しいことだったり、いろいろあった」。11月の東日本選手権で総合5位となって出場権を得たが、先週の練習で右骨盤を痛めた。くじけそうになっても、支えてくれた人に演技で感謝を伝えたい信念があった。
「私のことを知らない人、いろんな人に何を言われようと、自分のことを応援してくださっている方に思いを込めて全力で演技できた。頑張ってこられたなと思いますし、勇気を出させて下さって、ここまで頑張らせて下さったたくさんの方に感謝しているという気持ちが伝えられたらいいなって。その気持ちだけで頑張れました」
今後については「話せることは今はない」と明言しなかった。
「今は競技者として大会に出場している自分に、一番輝けている場所かなと感じているんですけど、全く点数にとらわれず、自由にのびのびお客さんに楽しんでもらえるように滑っている自分も好き。全日本が終わってからも氷に乗り続けて、沢山新しいことを練習していきたい」。確かなことは本田がスケートを愛する心を失わず、諦めず継続したこと。日本最高峰の大会に9年連続で出場した事実が、それを証明している。
(THE ANSWER編集部・宮内 宏哉 / Hiroya Miyauchi)