データでわかる「万博開催年の株価」の驚く結果
(写真:つのだよしお/アフロ)
11月30日に大阪・関西万博の入場チケット販売がスタートしました。会場建設にかかる費用が膨れ上がりすぎなど、何かとお騒がせな話題にもなっている万博ですが、株式投資をするうえではとても重要なイベントになります。そこで今回は万博にちなんだ「株価のジンクス」を紹介します。
大阪・関西万博は、大阪ベイエリアの人工島、夢洲(ゆめしま)で2025年4月から開催されます。2025年と言えば、再来年。「まだ2024年にもなっていないのに、そんな先の話をするなんて気が早すぎる」と思うかもしれません。しかし、そうでもないのです、万博にちなむ株価のジンクスを検証すると、今だからこそ、株式投資のうえでは万博に注目すべきということがわかります。
過去の万博と株価の関係を調べると…
結果から紹介しましょう。次の表は各国で行われた過去の万博を対象として、開催された年と、その前年の株価騰落率を調べたものです。
分析は1962年のシアトル開催以降の登録博覧会を対象としています。万博は小規模なものも含めると数多く開催されています。もっとも最近では、2020年のドバイの前は、2017年にカザフスタンでアスタナ万博が開催されました。
しかし、アスタナ万博は認定博覧会となり登録博とは違うカテゴリーです。これらの違いについてはネットなどで詳細な解説も多いため、そちらを参考にしてもらいたいのですが、一言でいえば万博の規模が大きく異なります。アスタナ博の入場者数は約400万人と発表されました。2020年のドバイの登録博では、入場者数が約2400万人とアスタナ博の6倍程度になります。
ちなみに、今回の大阪・関西万博では運営主体の日本国際博覧会協会は現在、約2820万人の入場者数を見込んでいます。
さて表で結果を見てみましょう。まず、注目したい点は開催年の騰落率です。それぞれの開催国で代表とされる株価指数の年間騰落率を見てみました。すると9回中6回が赤字です。表中の赤字は「株価が下落したケース」を示すものなので、67%の確率で下落しました。つまり、万博の開催年の株価は下がりやすいことがわかります。
しかし、上表の結果で、最も注目したいポイントは開催前年の騰落率です。9回中で8回が青字となっています。青字は株価が上昇したケースを示すものなので、おおむね9割の確率で開催前年は株価が上昇しました。
万博の開催前年は株価が高く、開催年は株価が安い
ここまでの結果を整理しましょう。「万博の開催前年は株価が高く、開催年は株価が安い」というものです。なぜ、このような結果になるのでしょうか。
例えば、今回の大阪・関西万博を例にあげてみましょう。万博費用が膨らんでいることは足元で批判されています。しかし増大した費用は、裏を返すと建設需要が増えることにもつながります。建設工事が増えることは景気を刺激する要因にもなります。
さらに、万博の開催地の夢洲では2029年に統合型リゾート(IR:Integrated Resort)が開業予定となっています。万博が1つのキッカケとなり、観光への需要が一層、盛り上がることで、わが国が目指す観光立国の実現も見込まれます。
こうした万博への期待が開催前年に「株高」となって表れるのです。しかし一旦織り込まれた期待が、出尽くしてしまうことで開催年は株安になると考えられます。
このような大阪・関西万博にちなんだ株のジンクスを使った投資を考えるなら、例えば日経平均株価のインデックスファンドなどを使って。この年末の投資も考えられるでしょう。
さて、上表から開催年は株価が安くなる傾向が示されましたが、さらに開催年の株価を深ぼりして見てみましょう。
次の図は、大阪・関西万博でいえば、再来年に相当する開催年をより深く見た結果です。
万博開催後に株価はどうなる?
開催年を「開催前」「開催期間中」「開催後」の3つの期間に分けて、株価の動きを見ています。
「開催前」の騰落率は下落(赤字)が多くなりました。一方で、「開催期間中」と「開催後」は上昇(青字)が多く見られます。つまり、開催年をより細かく見ると、開催前までは株価は下げてしまいますが、実際に万博が始まると株価は反転上昇する傾向が強いということです。万博開催を契機に将来に向けた成長の期待を株価が織り込んでいくと考えられます。
ですので、万博にちなんだ株価のジンクスから投資タイミングについて、より深く考えるならば、この年末に投資するも、来年末に一旦は手仕舞うのですが、万博開催で再度、投資を考えていく姿勢がいいかもしれません。
(吉野 貴晶 : ニッセイアセットマネジメント 投資工学開発センター長)