「本物の日本のラーメン」を食べたいならドイツ・フランクフルトへ! 欧州各地から“口コミ”で客が集まる名店「無垢」の味は独学で作られた
新横浜ラーメン博物館(横浜市)は、30周年を迎える2024年へ向けた取り組みとして、過去に出店した約40店舗が2年間かけて3週間のリレー形式で出店するプロジェクト「あの銘店をもう一度」を2022年7月1日から始めています。このプロジェクトにあわせ、店舗を紹介する記事の連載も同時に進行中。新横浜ラーメン博物館の協力を得て、「おとなの週末Web」でも掲載します。
逆輸入ラーメンの第2弾「無垢ツヴァイテ」年末年始を挟んで約1カ月の出店期間
第26弾は逆輸入ラーメンの第2弾として出店していただいたドイツ・フランクフルト「無垢ツヴァイテ」さんです。
【あの銘店をもう一度・第26弾・「無垢ツヴァイテ」】
出店期間:2023年12月12日(火)〜2024年1月10日(水)
※2023年12月31日(日)〜2024年1月1日(月)は休館日となります。
※無垢ツヴァイテの出店期間は28日間です(休館日を除く)
出店場所:横浜市港北区新横浜2-14-21
新横浜ラーメン博物館地下1階
※第24弾「蜂屋」の場所
営業時間:新横浜ラーメン博物館の営業に準じる
・過去のラー博出店期間
2014年6月25日〜2020年4月3日
岩岡洋志・新横浜ラーメン博物館館長のコメント「雰囲気、スタッフ、味、独自性…全て申し分ないお店」
私たちが無垢さんに初めて伺ったのが2012年の秋。当時はまず海外のラーメンを食べ歩くことが目的で、正直なところ探していた日本にはない独自性のあるラーメンに出会うことはほとんどありませんでした。
この時はフランスから入り、パリ、ベルリン、デュッセルドルフ、フランクフルトと食べ歩きました。最後に訪れたのが無垢さんでした。醸し出す雰囲気、スタッフの温かさ、そして味のクオリティと独自性と、全て申し分ないお店でびっくりしたことを覚えております。
店主の山本真一さんの考え方や姿勢にも大変魅せられました。そしてその数カ月後に山本さんが帰国されたとき、当館に寄っていただき、そこで出店の話をさせていただきました。その後も私たちは幾度となく、フランクフルトを訪れました。
コラムにも書きましたが、横浜市とフランクフルト市はパートナー都市ということもあり、出店時には横浜市の記者クラブで記者会見もさせていただきました。また新横浜の近くにはドイツの企業や学校もあったため、多くのドイツ人の方にもご利用していただきました。
2020年に新型コロナウイルスがまん延したことにより、私たちも長い間、休館をしたことと、日本より早くドイツはロックダウンになった関係もあり、やむを得ず休館中に無垢さんは卒業することとなりました。
アフターコロナとなった今、改めて無垢さんにご出店いただく機会をいただきましたので、是非足を運んでいただければと思います。
ラー博史上初、ヨーロッパからの逆輸入
新横浜ラーメン博物館では2013年より、日本にお店がなく海外で独自の進化を遂げたラーメン店を紹介する「逆輸入ラーメン」をスタートしました。
第1弾はアメリカ・ハリウッドの「IKEMEN HOLLYWOOD」(出店期間:2013年4月24日〜2014年6月1日)、そして第2弾はドイツ・フランクフルトのラーメン店「無垢ツヴァイテ」が2014年6月25日(水)にオープンしました。
※現地では「無垢」の屋号で営業。ツヴァイテはドイツ語で2号店の意味
2012年頃、アジア、北米に次いで、ヨーロッパでもラーメンが注目を浴び、イギリス、フランス、イタリア、ベルギーなど各地でラーメン店が開業し始めました。私たちは当時9カ国ほどヨーロッパを食べ歩き、各国の食に精通している方々から「わざわざそのラーメンを食べるためにドイツ・フランクフルトまで足を運ぶお店がある」という話を聞き、そのお店が「無垢」だったのです。
大手食品商社の営業マンが2010年に独立し、開業
創業者の山本真一さんは日本の大学卒業後「日本の食の素晴らしさを世界に伝えたい」という想いのもと2004年に渡独。「SSP Kosumguter Trade & Consult GmbH」という欧州向けに日本食材を卸す、大手食品商社の営業マンとしてドイツ中を駆け回っていました。
そんな山本さんが何故独立してラーメン店を立ち上げたのでしょうか?
山本さん曰く「私自身、日本食の勉強をして卸先の人々にその素晴らしさを伝えてきましたが、委ねたその先にいるお客様の顔や意見というものは見えませんでした。そのことが歯がゆくて、直接お客さんに感動を伝える仕事をしたいという想いの元、2010年に独立をしました。ラーメンを選んだのは私自身が大好きだったことと、日本食の素晴らしさを伝えるにはラーメンが最もよいと思ったからです」とのこと。
「いざ独立しても資金的な余裕もなかったですので、内装はほとんど手作りでした。にもかかわらず、こだわってしまい、資金が底をつきそうになりました。今では笑い話ですが、当時は不安で眠れませんでした」と当時の様子を語ってくれました。
「かん水」も自身で調合、ドイツという限られた環境で生まれたラーメン
ではどのようにラーメンが生まれたのでしょうか?
「ラーメンはほぼ独学で作りました。日本はラーメンを作る環境が恵まれているのに対し、ドイツは限られた環境でした、例えば、麺に使用するかん水。日本では当たり前のように手に入りますが、当時のドイツでは薬局に行って炭酸ナトリウムと炭酸カリウムを購入して自分で調合していました。小麦粉も日本のようにラーメン用にブレンドされた小麦はありません。パン用粉が主体で、麺を作ってもぼそぼそとした食感でラーメンに適しませんでした。そのため粉というものは全て試し、ピザ用の小麦と、パスタ用の小麦に辿り着きました」とのこと。
しかし、山本さんはこの環境があったからこそ今に繋がっていると言います。
「もしあの時、日本のようにラーメンを作る環境が整っていたら、既成概念に縛られたラーメンしか作れなかったと思います。制限されているからこそ、知恵と工夫が生まれたのだと思います」
そして「どんなに技術や知識がある日本のラーメン店でも、海外でラーメンを作るというのは全く別の話。限られた環境の中でラーメンを作りだせたことが私たちの最大のアドバンテージ。私はアフリカでも現地の食材を使ってラーメンを作る自信があります」とのこと。
これこそが無垢の強みです。
口コミで広がり、欧州中から客が訪れる
無垢は当初、看板もなければHPも持たないお店でした。
私たちが初めて訪れた2012年には既に多くのお客さんで賑わっておりました。ではいかにしてお店は繁盛していったのでしょうか?
山本さん曰く「最初からお客さんがたくさん来たわけではありません。滑らかな曲線を描いていった感じです。最初は日本人の方が来られて、次第に認めていただき、そしてその日本人の方が“ここは本物の日本のラーメンが食べられるよ”とドイツ人の方を連れてきてくれて、そしてドイツ人の方がドイツ人の友達を連れてきてくれて、その口コミによってドイツ外の欧州の方々も来るようになりました。私たちは一切のマーケティングをしませんでした。何故ならば口コミに勝るマーケティングはないと思っているからです」
口コミというのは、味や空間、おもてなしといった様々な要素が期待を上回っているから広がります。打ち上げ花火ではなく、じっくりと時間をかけて自分たちのイズムを貫いたからこそ、欧州中からお客さんが訪れるお店になったのだと思います。
当時、ヨーロッパの口コミサイト「トリップアドバイザー」ではフランクフルト市内の1700軒近くあるレストランの中で、星付きのお店を上回るTOP10入りを果たしていました。
無垢では8割の席を予約、2割の席をウォークインで受けています。2014年にラー博にオープンしたころの本店は、1日100件を超える予約の問い合わせがあり、数カ月先まで予約が埋まっている状況でした。
2014年にラー博に出店、横浜とフランクフルトはパートナー都市
私たちが初めて無垢に訪れたのは2012年の11月。この時の調査ではフランスのパリ、ドイツのベルリン、デュッセルドルフ、フランクフルトを訪れています。この時からせっかく海外のラーメンを調査するのであれば映像を残していこうと、「世界ラーメン紀行」という番組をYouTube(ラー博TV)で配信することとなりました。
下記の動画は、当時無垢を取材した「世界ラーメン紀行vol.4 ドイツフランクフルト編」です。
私たちは海外を食べ歩いた中で、日本にラーメン店がなく、海外で独自の進化を遂げたお店というコンセプトのもと、お店を探していたのですが、無垢がやろうとしていたことは私たちが探していたお店そのものでした。
そして、その年の年末に店主の山本さんが日本に帰国した際にお会いし、来年(2013年)から、日本にお店がなく、海外で発展を遂げたお店を紹介する「逆輸入ラーメン」を始めることをお話して、ラブコールを送りました。
その翌年から幾度となくフランクフルトへ訪れ、2013年の8月に山本さんから出店していただけるというお話をいただきました。
ラー博出店に際し、フランクフルト市は横浜市とパートナー都市ということもあり、横浜市の記者クラブにて、出店記者会見をさせていただきました。
そして2014年6月25日、「無垢ツヴァイテ」としてラー博にオープンしました。
オープン時にはフランクフルトのスタッフ全員が駆け付けてくれ、その後も店主の山本さんは横浜に滞在してくれました。
「MUKU’S ローストポーク丼」ファースト・ビジネスクラスの機内食に、ラーメンの枠を超えて飛躍
その後、無垢はさらに飛躍します。フランクフルト本店はさらに予約が取れづらくなり、2016年からはフランクフルト国際空港のJALファーストクラスラウンジ・サクララウンジにて「MUKUまかないカレー」を提供。
2019年にはフランクフルト発(成田行き)のファーストクラス・ビジネスクラスにて機内食のご当地丼として、店主の山本さんが監修・開発したこだわりの「MUKU’S ローストポーク丼」を提供するなど、ラーメンの域を超えて日本食の代表として様々な場面で活躍をしております。
無垢のホームページには以下のことが書かれています。
食や文化、そして想いは受け継がれていく
お店は感情の産物だ
そもそも食は、競争でもなく戦いでもない
自然からいただく源泉を
無垢な想いで人の心を通し
広く世界がその支流まで
幸せで満たされる未来を夢見て
無垢の姿勢は「仲間と向き合い、お客様と向き合い、そしてラーメンと向き合うこと。そのために食材選び、調理法、器、インテリアなど細部まで妥協せず徹底的に行っています。その無垢な想いがラーメンを通じ、無垢を気にいったお客さんが新しいお客さんを連れてくるという口コミで広がり、今ではヨーロッパ中からわざわざ訪れるお店となりました。
進化を遂げる無垢のラーメン
無垢のラーメンは7年弱の出店期間の中で、常に進化を遂げておりました。オープン時はシグニチャーメニューである「無垢ラーメン」、本店の人気メニュー「焦げ味噌ラーメン」、ドイツの食文化と融合した「無垢ツヴァイテラーメン」の3種類でスタート。
その後、「無垢ラーメン」を「無垢ラーメンNull」として新たな無垢ラーメンが誕生。最後の1年は、日本で得た技術と知識を注ぎ込んだ「醤油ラーメン」や「塩ラーメン」もリリースしました。
今回の出店は無垢の原点でもある「無垢ラーメンNull」を進化させた2023-2024年度バージョンを中心に、期間中、様々な無垢の進化したメニューを提供する予定です。
先に述べたように無垢の麺は、限られた環境の中で、欧州全土の様々な粉を試した中で辿り着いた唯一無二の麺です。ピザ用の小麦粉と、パスタ用の小麦粉をブレンドし、日本では使用しないような雑穀なども加え、独特の風味と食感を持ち合わせています。
無垢のメニューは全て化学調味料を使用せず、自然界からの源泉を、無垢な想いと培った技術・知識でお客様に安全・安心を提供しております。
【MUKUフランクフルト本店】
電話:+49 (0) 69 4844 5153
営業
lunch(木曜日〜日曜日)12:00〜14:00
Dinner(水曜日〜日曜日)18:00〜22:00
定休日は月曜日・火曜日
HP:https://www.muku-ramen.com/
コロナで休館中だった2020年の卒業を経て、4週間の復活!
「無垢ツヴァイテ」は、2020年からの新型コロナウイルスのまん延により、新横浜ラーメン博物館の休館中に卒業をする形となりました。
本来であれば皆様に卒業を告知したうえで最終日を迎えたかったのですが、上記のような理由により果たせませんでした。
今回は、短い期間ではございますが、皆様の前で進化した無垢ツヴァイテを披露いたします。この機会に是非お召し上がりください。
出店期間は2023年12月12日(火)〜2024年1月10日(水)の4週間です。※2023年12月31日(日)〜2024年1月1日(月)は当館の休館日です。皆様のお越しをお待ち申し上げております。
『新横浜ラーメン博物館』の情報
住所:横浜市港北区新横浜2-14-21
交通:JR東海道新幹線・JR横浜線の新横浜駅から徒歩5分、横浜市営地下鉄の新横浜駅8番出口から徒歩1分
営業時間:平日11時〜21時、土日祝10時半〜21時
休館日:年末年始(12月31日、1月1日)
入場料:当日入場券大人450円、小・中・高校生・シニア(65歳以上)100円、小学生未満は無料
※障害者手帳をお持ちの方と、同数の付き添いの方は無料
入場フリーパス「6ヶ月パス」500円、「年間パス」800円
※協力:新横浜ラーメン博物館
https://www.raumen.co.jp/