吉田選手(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

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プロ野球日本ハムの吉田輝星投手(22)とオリックス黒木優太投手(29)のトレードが2023年11月24日に成立した。夏の甲子園で活躍しドラフト1位で入団した吉田のトレードは野球ファンの間で話題を呼んだ。トレードを成立させた両球団の思惑、狙いはどこにあるのか。元楽天のヘッドコーチ橋上秀樹氏(57)はJ-CASTニュースの取材に、「オリックスにとってプラス要素しかない」との見解を示した。

日本ハムでは先発希望も叶わず

吉田は18年夏の甲子園大会で金足農業高校のエースとしてチームを準優勝に導き、秋のドラフト会議で日本ハムに1位指名されて入団。ルーキーイヤーの19年は4試合に先発して1勝3敗、防御率12.27。20年は5試合に先発し21年は1試合の登板に留まった。22年から中継ぎに配置転換となり、今季は3試合に登板して勝ち負け付かず防御率は9.00だった。

一方の黒木は立正大から16年のドラフト会議でオリックスから2位指名されて入団。1軍では主に中継ぎとして登板し、今季は12試合に登板して1勝5敗、防御率6.58を記録した。プロ7年で通算133試合に登板して10勝11敗、3セーブ、47ホールド、防御率4.37。

橋上氏は吉田のトレードに関して「日本ハムの考えとしては単純に黒木選手に対する来シーズンの戦力としての期待が吉田選手よりも大きかったというのがひとつだと思います」とし、次のように持論を展開した。

「吉田選手をドラフト1位で獲得しましたが、吉田選手が伸び悩んでいた。まだ若いですし、今後のことを考えて日本ハムでの成長は少し厳しいと判断したのかもしれません。何歳でプロ入りしたかにもよりますが、高卒で獲得した選手は5年までに出てきてほしい。吉田選手は1軍で登板しているが、先発したいという本人の希望と現場の彼に対する要望が他の選手の兼ね合いもあり希望が叶わない状況でした。そこで日本ハムと比較的つながりの深い中嶋(聡)監督や厚澤(和幸)コーチらがいるオリックスにトレードを頼みやすかったのかもしれません」

「メディア露出含めてスター性ある選手がほしいはず」

一方のオリックスは吉田の潜在能力とスター性を買っていると指摘した。今オフにエース山本由伸投手(25)がポスティングシステムを利用して大リーグに移籍する可能性が高く、チームにとって看板選手の移籍は大きな痛手となる。

橋上氏は「オリックス側の視点で考えた時に現状、戦力的に吉田選手が加入したことでどこかを補うことができるかといえばないと思います。現有戦力だけで十分だと思いますが、吉田選手が少しでも良くなれば『やはりオリックスの育成力はたいしたものだな』となる。それに山本選手がメジャーリーグに行くことを考えると、メディアの露出も含めてスター性のある選手がほしいはず。吉田選手の獲得は、そういうことも視野に入っていると思います」との見解を示した。

そして投手陣のレベルが高いオリックスに移籍することで、吉田の意識が変化して一皮むける可能性があると指摘した。

橋上氏は「オリックスは日本ハムよりも1軍ベンチ入りのハードルが高い」と前置きし、「オリックスのようなレベルの高いところに入ることによって自分のピッチングスタイルを見つけることができるかもしれません。自分よりスピードのある投手がこんなにいるのだと感じることで、ピッチャーとして生き残る道はどういうものかが見えてくるかもしれない。自分のピッチングスタイルを変化させるきっかけがつかめるかもしれません」と期待を寄せた。

さらに「吉田選手は注目されているピッチャーなので、オリックスが来年育成できればチームとしての育成力がさらに高い評価を受ける。今回のトレードはオリックスにとってマイナス的なものは何もない。プラス要素しかないでしょう」とした。