日本航空(JAL)は、11月12日で定期運航を終えたボーイング777-200ER型機の最後の1機(機体記号:JA703J)を使ったイベントを羽田空港で開催した。

イベントは全3回で、定員は各回40名。海外を含め約1,400名の応募があり、倍率は10倍以上だったという。初回の11月19日は36名が参加し、バイロットや客室乗務員、整備士の説明を受けながら客室やコックピット、ギャレーを見学したり、機体の近くに寄って写真撮を撮ったりと、約3時間にわたってJA703Jの最後の姿を堪能した。

▲機体洗浄で使う道具。四角いパッドに洗剤水をつけて洗い、冬は凍結防止のためモップで乾拭きする

イベントの目玉は、実際の道具を使った機体の洗浄体験。グランドハンドリングスタッフが「道具を機体と平行に当てれば、力を入れなくてもきれいに洗えます」などとコツを説明し、参加者は約2メートルの棒に付いたスポンジパッドを使って機体の後方部分を擦り洗いした。

また、機体見学に先立ってトークショーが開かれ、整備士の和田雅洋さん、客室乗務員の松木絵梨奈さん、副操縦士の横田篤さんの3人が、参加者から寄せられた質問に答えた。

▲トークショーを行った(左から)整備士の和田雅洋さん、客室乗務員の松木絵梨奈さん、副操縦士の横田篤さん

和田さんは「設計段階からETOPSが念頭にあるので、整備方式も変わった」と説明。左右のエンジンを別の整備士が担当する必要があり、人員のアサインがそれまでと変わったことが特徴だという。

訓練生時代にOJTで乗務した初めての飛行機が777-200ERだったという松木さんは、「CAとして歩んでいく道のりが楽しみになったの覚えている」と当時の心境を披露。777-200ERが国内線に転用されてからも乗務する機会があり、「ビジネスクラスのシートベルトの形状が国内線機材と異なるので、丁寧な説明を心がけた」という。

また、横田さんは、大きな機体を扱うのに苦労したというエピソードを紹介。機体が重くなったことで慣性力が強く働くようになり、風に流されたときに元に戻すのが難しいといい、「ズレに早く気付いて直さないと、よいフライトができない」と話した。

イベントを企画したJAL運航本部777運航乗員部の永瀬智規さんは、5月に離日したJA701Jの退役イベントも担当。今回は“非日常体験”として、前回のイベントにはなかった機体の洗浄体験を提案した。「やったことがなかったので、どうしたら安全に実施できるか、関係部署と調整を重ねた」といい、安全確認のためのスタッフを立ち会わせることで実現にこぎつけた。とはいえ、一度に対応できるのは10名程度が上限で、4グループにわけることで40名が参加できるようにしたという。

今後、11月23日と25日も同様のイベントが開かれたあと、JA703Jは本格的な退役整備に入り、12月12日に売却のため米・カリフォルニアに向かう。

▲機体洗浄を実演するグランドハンドリングスタッフ▲コックピットの計器類を参加者に説明する横田さん▲ギャレーの設備を参加者に説明する和田さん▲PAシステムの使い方を参加者に説明する松木さん▲参加者に配られた記念品。航空機用エンジンオイルの空き缶を使ったペン立てやステッカーなど