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ビッグモーター支援 複数社、名乗り

経営再建中のビッグモーターは、2023年9月に実施された銀行団との2回目の協議において、「10月末をめどにスポンサー企業を選定する」ことを明らかにしていた。

【画像】ビッグモーター、行ってみた 騒動後の店舗の現状は?【現地より】 全14枚

実際、ビッグモーターを支援したい(=買いたい)という企業は意外と多く、数々の大手企業が名乗りを上げ、10月末現在では5社にまで絞られていた。


経営再建中のビッグモーターは、2023年9月に実施された銀行団との2回目の協議において、「10月末をめどにスポンサー企業を選定する」ことを明らかにしていた。

5社とは、
1、オリックス
2、IDOM
3、QVC
4、ネクステージ
5、ゲオ
の5社で最終候補としてあげられるのが1〜3の3社である。

さらにこの3社の中でも最も支援に積極的なのがガリバーを展開する(株)IDOM(=イドム)だった。

それがなぜか、今朝の読売新聞に「ビッグモーター支援、ガリバーのイドムが検討中止」という記事がでている。

あれだけ積極的だったイドムが支援の検討をやめるという。

理由は「ビッグモーターのコンプライアンス欠如」「企業体質が改善していない点が障害」とのことだ。

この記事をそのまま読んで、素直に納得する人が大半だとは思うが、筆者は別の見方をしている。

今朝この報道がされ、普段、様々な情報を送ってくれている複数の関係者からメールが届いた。皆さん、イドムがスポンサーから手を引く本当の理由を理解している。

後述するがビッグモーター支援から手を引くのは別に理由があると予想する。

そもそも、ビッグモーターのような大きな会社がわずか3か月で企業体質を完全に変えることがいかに困難なことかは、同業者のイドムならわかると思うのだが。

あまりに突然で不思議 支援撤回

ビッグモーターは今年7月25日に社長・副社長を務めていた兼重親子のが完全退陣を発表した。

全国に250店舗以上を有し、従業員は5000人以上。保険不正請求にはじまり不当解雇や街路樹問題、国交省や金融庁の立ち入り検査など様々な問題が次から次に噴出しており、各地で裁判も進んでいる。

企業体質を改善し新たなスタートを切るために、スポンサーの支援が必要だったわけで、イドムも、同業者ゆえその難しさは十分理解して支援候補企業として積極的に動いていたはずだ。

それがこのタイミングで突然、「企業体質が改善されない」ことを理由にスポンサーになる検討をやめるというのはあまりにも突然すぎるし、不思議である。

とあるメディアの記者が理由を尋ねたが、イドムは「理由に関してはお答えできません」と明言したとのことである。

ガリバーのプレスリリースが火種に?

10月31日、筆者は現代ビジネス(講談社)に

【スクープ】「ガリバー」でも「ビッグモーター」に続き同様の不正…複数の大手損保会社が「保険金不正請求」を調査

という記事を書いた。

この記事が出た直後からイドムの株価は暴落しストップ安となった。

ビッグモーターは非上場企業だったので、こんなことを気にすることもなかったが、イドムは東証プライムの上場企業である。

そして翌11月1日に同社は「現代ビジネスの記事は事実ではない」という内容のリリースを出した。

そのリリースの内容を真に受けたであろう個人投資家たちは、一斉にSNS上で筆者と現代ビジネス編集部の批判をはじめた。

「記事は間違っていた」「ウソ記事を書く酷いジャーナリスト」「素晴らしいリリース!さすが俺たちのイドム!」などなど。

そしてその後、株価も元に戻ったようである。

イドムが出したリリースを見ると、しばしば「弊社と東京海上の双方が調査」「協定時における双方の確認不備」「両社間の確認不足」など。

イドムと東京海上が協力して調査を行っている印象を与える。

実際はどうなのか? 東京海上広報部に確認したところ、

「『弊社の認識』とは異なる部分が一部ある」として、次の回答を頂いた。

「両社で点検調査した事実はない」

1

「120件について両社で点検調査を行いました」

イドムに点検依頼している件数が120件あるというのが弊社の認識である。120件については点検を進めていただいており、調査を継続中の段階で、完了はしていない。今後協議を行っていく段階。

2

「点検調査を実施した120件のうち、東京海上日動火災保険から再調査を依頼された8件」

弊社が調査依頼している件数はあくまで120件であり、120件の調査を依頼する際に、イドム側に優先的に確認を進めてほしい代表例として8件をお伝えしたもの。

3

「再調査の結果、8件のうち3件で両社間の確認不足による誤請求が確認」

両社間の確認不足による誤請求3件というのはイドム側の認識である。引き続き120件の調査結果の回答を求めていく。

なお、東京海上においてはビッグモーター社で顕在化した不正請求の類型を踏まえて、広くサンプル調査を行っておりイドムについてもその一環とのことである。

支援から降りようとする理由を予想

「イドムがビッグモーター支援の候補から外れる」理由。

あれだけビッグモーター支援に熱心だったのに……、筆者の周囲にいる情報提供者の間で飛び交う事実と憶測を参考までに記しておこうと思う。

・損保の大々的な調査に関する報道や、その後のリリース内容に関して様々な疑惑が出てきたため、イドムに対しての融資を銀行団が渋ったのではないか。

・イドムやネクステージにだけは買収されたくないというのがビッグモーター側の本音か。

・今年9月頃から、大手損保からの調査依頼に対して担当者が火消しに回っていたのは事実。その担当者複数名はビッグモーターで保険金不正請求を指示していたイドムへの転職組。

・ビッグモーター時代にパワハラや暴力を受けた社員も少なからずおり、ビッグモーター時代の悪評が銀行→イドムに対して支援のための融資をとどまらせた可能性もある。

イドムは上場企業であるため、株主に対する説明責任もある。これからどのような説明を行っていくのか。引き続き注目しておきたい。