リアム・ローソンが語る角田裕毅の素顔「5年のつき合い。直感的に『彼は強い』と感じた」
リアム・ローソン(21歳)インタビュー
マックス・フェルスタッペンや角田裕毅の"後輩"にあたるレッドブルジュニアチームのメンバーに選ばれ、昨シーズンはFIA F2で4勝をマークしてランキング3位を獲得。ニュージーランド出身のリアム・ローソンは、着実にF1へのステップアップを歩んできた。
そんな「将来のF1ドライバー候補生」が今シーズン、鳴り物入りでTEAM MUGENからスーパーフォーミュラへ参戦。その実力は、どれほどのものか──。ファンや関係者の間で期待と不安が交錯するなか、2023シーズンが幕を開けた。
ローソンから見た「角田裕毅」という人物像は? photo by Yoshida Shigenobu
結果、ローソンの速さは"ホンモノ"だった。開幕戦・富士でいきなりデビューウィンを飾ると、第4戦・オートポリス、第6戦・富士も制してシーズン3勝をマーク。最終戦・鈴鹿では初のポールポジションを獲得するなど最後までチャンピオン争いを演じ、最終的にランキング2位でルーキーイヤーを終了した。
「スーパーフォーミュラでの1年は、F1へステップアップするために非常に勉強になるカテゴリーだった」
そして今年8月、ローソンはついに夢を掴み取る。F1第14戦オランダGPでクラッシュによって負傷したダニエル・リカルドの代役として、アルファタウリからF1デビューを果たした。
第17戦カタールGPを終了したところでリカルドが復帰したため、代役参戦の役目は終了した。しかし本人にとって、5レースを経験した2カ月間は濃密だったという。
初めてのF1で得られたものとは──。そして、アルファタウリでチームメイトとなった角田裕毅についても語ってくれた。
※ ※ ※ ※ ※
── まずはスーパーフォーミュラを1年間、戦ってみて何を感じましたか?
「F1とほかのカテゴリーは、昨年戦ったF2も含めて、すごく大きな差があると感じました。F1は空力をはじめ、テクノロジーの部分、チームの組織、エンジニアやメーカーとのやりとり......そして関わるメンバーもたくさんいる。だからF2からF1へ上がるのは、すごく大きなステップアップだと思っています。
ただ、今年スーパーフォーミュラに参戦することができ、F2よりもF1に近い環境にいれたことは大きな経験になりました。クルマのセッティングを仕上げていく工程も、F2とは比較にならない。
F2では触らないような細かいところにも注目して、エンジニアと話し合いながら決めていくということができました。何よりチームがプロフェッショナルな点も、とてもいい経験となった。F1に乗るまでにスーパーフォーミュラで7レース戦ったことは、本当にいい(F1にステップアップする)準備になったと思っています」
── あなたは来日する前、ピエール・ガスリー(レッドブルジュニアチームの先輩)やニック・キャシディ(母国ニュージーランドの先輩)にスーパーフォーミュラ参戦について相談したと聞いています。もし、同じように後輩から相談を受けたら、あなたはどう答えますか?
「絶対にスーパーフォーミュラに挑戦するべきだ、と答えます。ここでの経験は絶対、今後のドライバー人生に活かせるものになっているから。
もしかすると、今後もレッドブルのドライバーが日本にやってくる機会があるかもしれない。それが誰になるかはわからないけど、将来F1へのステップアップを目指しているのなら、僕は日本に来て経験を積んだほうがいいと思うよ」
── そして今年8月、あなたはついにその夢を叶えました。オランダGP、イタリアGP、シンガポールGP、日本GP、カタールGPの計5レースに出走しましたが、F1の世界で過ごした2カ月間はいかがでしたか?
「今振り返ると、すごく濃密で、忙しくて、大変な2カ月間だった。最初に乗ることが決まった時は『まさか?』とビックリしたよ。
でも、そこからすぐに走行セッションが始まって、ゆっくり考えている暇もないまま、次々とセッションが進み、すぐに次のレースがやってくる......という状況だった。やらなければいけないことはすごく多かったけど、チャレンジングな日々だったよ」
── 今年はリザーブドライバーとしてF1開催サーキットに帯同していましたが、やはりレギュラードライバーになると、現地での忙しさは異なりますか。
「いや、まったく違うというわけではない。エンジニアとのミーティングや走行後のデブリーフィングにもリザーブドライバーは全部出席するし、ファクトリーで待機している時はシミュレーターにたくさん乗って、さまざまな確認作業も行なうし。
だからやることは、レギュラードライバーと大きくは変わらない。ただ唯一違うのは、F1マシンをドライブするか否か、というところかな」
── とはいえ、F1にレギュラードライバーとして参戦するとなると、グランプリによってはトークショーに出席したり、記者会見に出席することもあると思います。
「たしかにそうだね。実際にF1にドライバーとして参戦すると、たくさんのメディアが取材にきてカメラもたくさん向けられるし。それはF1に乗った時に感じた、大きな違いかもしれない」
── F1デビューを果たしたアルファタウリでは、角田裕毅がチームメイトでした。彼のスキルやキャラクターをどのように感じましたか?
「僕とユウキは5年くらい前から一緒にレースをしてきているので、お互いによく知る仲なんだ。FIA F3で一緒に戦ったのが出会いのスタートだったね。そこから一緒になる機会も多く、振り返るとすごくいい経験も重ねてきたよ。
彼のキャラクターは『すごく強い』という印象だね。もちろん、スピードの速さも兼ね備えているドライバーであることも間違いない。その『強い気持ち』は徐々に身についていったというより、最初にレースを戦ったころから変わらず。直感的に『彼は強い』と感じたよ」
── 休日にふたりでどこかに出かける機会などはありましたか?
「休日にかぎったわけではないけれど、ともに過ごした時間は多かったよ。特にニュージーランドで行なわれたトヨタレーシングシリーズに参戦していた時は同じチームだったから、ふたりでいろんな経験をした。
サーキットではライバルとして戦い、時間が空いた時は一緒にトレーニングをして......休日も関係なく一緒に過ごす機会があったんだ」
── すごく仲がよさそうですね。
「だって5年のつき合いだから。お互いによく知った仲だし、イギリスで一緒に生活をしていたこともあった。
あ、彼の手料理を食べたこともあるよ。もちろん、美味しかった。僕と彼は、今でもすごくいい関係なんだ」
【profile】
リアム・ローソン
2002年2月11日生まれ、ニュージーランド出身。7歳からカートをはじめ、国内のフォーミュラレースで好成績を残したのち、2019年からレッドブルジュニアチームに所属。2019年〜2020年はFIA F3、2021年〜2022年FIA F2とステップアップを果たす。2023年はレッドブルF1のリザーブドライバーを務めつつ、スーパーフォーミュラに参戦してランキング2位。同年8月、負傷したダニエル・リカルドの代役としてアルファタウリよりF1デビュー。