日本シリーズの勝者は阪神かオリックスか 運命の第7戦のポイントを前田幸長が解説
日本シリーズ第6戦は、オリックスが5対1で阪神を下し、逆王手をかけた。
2回表にシェルドン・ノイジーのソロ本塁打で先制されたが、直後に若月健矢のタイムリー、中川圭太の犠飛で逆転。5回裏には紅林弘太郎の2点本塁打が飛び出し、前回抑え込まれた阪神先発の村上頌樹から4点を奪った。8回裏にも頓宮裕真に一発が飛び出し1点を追加。
投げては山本由伸が阪神打線に9安打を浴びるも1点に抑え、日本シリーズ新記録となる14三振を奪う好投を見せた。第6戦のポイントになったシーンはどこだったのか。ロッテ、中日、巨人で活躍した前田幸長氏に解説してもらった。
第7戦は総動員で戦うと語った阪神・岡田彰布監督 photo by Sankei Visual
第1戦で6回途中7失点KOされたオリックスの山本投手が、どんなピッチングを見せるのか注目していましたが、序盤は硬さがあって、ボール自体もよくありませんでした。
2回にノイジー選手にホームランを浴びて先制されてしまいます。ここまで阪神打線はホームランでの得点はなく、そこまで調子のよくなかったノイジー選手に打たれたことで、山本投手も動揺があったと思いますし、前回登板の嫌なイメージが頭をよぎったのではないでしょうか。
さらに、佐藤輝明選手、糸原健斗選手に連打され、一死一、三塁のピンチを招き、つづく木浪聖也選手は三振に打ちとりますが、9番・坂本誠志郎選手に死球を与え、二死満塁となり1番の近本光司選手を迎えます。
このシリーズ4割を超す高打率を残している近本選手に対し、初球はカーブでストライク、2球目に151キロのストレートをファウルで追い込むと、1球ボールのあと4球目にフォークで空振り三振。なんとか1点で凌ぐことができました。
山本投手は4回にも一死一、三塁のピンチを迎えますが、坂本選手を三振、近本選手にはライトへ大飛球を放たれますが、森友哉選手が好捕して無失点で切り抜けました。
阪神にしてみれば、2回と4回に追加点を奪えなかったことがすべて。もし1点でもとっていれば一気に阪神の流れとなり、試合が決まっていた可能性もあった。それを許さなかったのはさすがです。
この日のピッチングは、とくに中盤以降どの球種でもカウントを稼げて、勝負球にもなった。ストレートはキャッチャーの構えたところにほぼきていましたし、フォークもしっかり低めに集めることができた。早いカウントで追い込めたことで、阪神打線に的を絞らせなかった。それが日本シリーズ新記録となる14奪三振につながったのだと思います。3年連続沢村賞の実力をまざまざと見せつけてくれましたね。
【第7戦のカギはベンチワーク】一方、前回の投球でオリックス打線を7回無失点に抑えた村上投手ですが、この日はボールから入ることが多く、カウントを整えるのに苦労していた印象です。しかもフォークの落ちも悪く、そこをうまくとらえられた。5回に紅林選手に打たれた2ランもフォークでした。
オリックスはスタメンに杉本裕太郎選手、頓宮裕真選手、レアンドロ・セデーニョ選手など、一発のある打者を並べました。そのことによって「いいコースに投げないといけない」と、村上投手のピッチングを慎重にさせたのかもしれません。前回に比べて、大胆さがなかったですし、ボール1個分、半個分の出し入れができませんでした。
オリックスが快勝して、これで対戦成績は3勝3敗のタイとなりました。第1戦で抑えられた村上投手を攻略し、山本投手も完投するなど、オリックスにとっては最高の勝ち方で逆王手をかけました、これで優位になったかと言えば、決してそうではない。私はまったくの五分五分だと思います。
山本投手が完投し、リリーフ陣を温存できたという見方もありますが、中嶋聡監督にしてみれば「継投するのが怖かった」というのが本音だと思います。宇田川優希投手は疲労の心配がありますし、山?颯一郎投手、平野佳寿投手も万全とは言い難い。昨年の日本シリーズのように、リリーフで逃げ切ることは簡単ではありません。ですので、第7戦はリリーフ勝負には持ち込みたくないはずです。
逆に阪神は、敗れたとはいえ村上と2番手で登板した西勇輝のふたりで凌げた。第7戦は青柳晃洋投手が先発ですので、岡田彰布監督は積極的にリリーフ陣をつぎ込んでくると思いますし、リリーフ勝負に持ち込みたい。
第7戦は両チームとも総力戦になるはずです。継投の遅れ、作戦ミスが出たチームが負ける。ベンチワークに注目したいですね。