イングランドに勝利し、スタンドのファンに向かって笑顔を見せる南アフリカのファフ・デクラーク【写真:イワモトアキト】

写真拡大 (全2枚)

ラグビーW杯フランス大会 カメラマン・イワモトアキト氏のフォトコラム

 連日熱戦が繰り広げられているラグビーワールドカップ(W杯)フランス大会。「THE ANSWER」は開幕戦から決勝戦まで現地取材するカメラマン・イワモトアキト氏のフォトコラムを随時掲載する。今回は21日(日本時間22日)に行われた準決勝でイングランドに16-15で勝った南アフリカのファフ・デクラーク。

 ◇ ◇ ◇

 どんな状況でも慌てない、いや、むしろピンチを楽しんでいる。南アフリカ代表SHのファフ・デクラークがピッチに現れると、スタジアムの温度が上がる気がする。

 イングランドとの準決勝、劣勢を強いられていた南アフリカに後半、頼れるあの男が投入された。2メートル級の大男たちの中、一際目立つ172センチのブロンドヘア、長い髪を揺らしながらピッチを駆け巡るデクラークの姿にスタジアムのボルテージが上がっていくのがわかる。

 出足の早いタックル、テンポの良いボール出し、次第にゲームの流れは南アフリカのリズムに。同じく途中交代でピッチに立ったSOのハンドレ・ポラードが、試合終了2分前に劇的なペナルティーゴールを成功させて逆転、2大会連続の決勝進出を果たした。

 個人やチームとして勝利を目指すのは当然だが、デクラークを見ていると勝利よりももっと大事なものを追い求めているような気がしてならない。それはラグビーをどれだけ楽しめたか、面白くできたか、表情の一つひとつから彼のラグビーに対する情熱が伝わってくる。

 準々決勝のフランス戦後、誰よりも早くファンの元へと向かったデクラーク。応援がどれだけ彼にとって力になり、彼のプレーがどれだけファンを楽しませたのか。写真に映る表情がすべてを物語っていた。

 いよいよラグビーW杯2023決勝戦、最後まで楽しんだもの勝ちでいこう。

■イワモト アキト / Akito Iwamoto

 フォトグラファー、ライター。名古屋市生まれ。明治大を経て2008年に中日新聞入社。記者として街ネタや事件事故、行政など幅広く取材。11年から同社写真部へ異動。18年サッカーW杯ロシア大会、19年ラグビーW杯日本大会を撮影。21年にフリーランスとなり、現在はラグビー日本代表の試合撮影のほか、JAPAN RUGBY LEAGUE ONEオフィシャルフォトグラファーを務める。

(イワモト アキト / Akito Iwamoto)