日本戦で重傷を負い、松葉杖で見た敗戦 カメラ越しに伝わったアルゼンチンラグビー革新の予感【フォトコラム】
ラグビーW杯フランス大会 カメラマン・イワモトアキト氏のフォトコラム
連日熱戦が繰り広げられているラグビーワールドカップ(W杯)フランス大会。「THE ANSWER」は開幕戦から決勝戦まで現地取材するカメラマン・イワモトアキト氏のフォトコラムを随時掲載する。今回は20日(日本時間21日)に行われた準決勝でニュージーランドに6-44で敗れたアルゼンチンから。
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不思議と悔しさや悲しさをその表情から感じることはなかった。アルゼンチン代表のパブロ・マテーラ、その瞳は次への戦いに向けた闘志が宿っているようだった。
ニュージーランドとの準決勝、勝てばアルゼンチン初の決勝進出となる試合だった。結果は44-6での敗戦、悲願のファイナルには手が届かなかった。
予選プール最終戦、ナントで行われた日本との試合で右ハムストリング断裂の重傷を負った。チームは勝利を手にするも、プレーヤーとして決勝トーナメントのピッチに立つことは叶わなかった。
この日、スタンドで試合を見つめたマテーラの目にニュージーランドとの一戦はどう映ったのか。死闘を終えたピッチの選手たちの表情は、悲しみと失意でいっぱいだったが、マテーラの顔は違った。
悔しさがないわけがない。19年の日本大会ではキャプテンとしてチームを引っ張るキーマン。今大会も主軸としてチームを支えた。「自分がピッチに立ってさえいれば…」――。その感情は自然と沸き立つもの。
ただマテーラの姿からカメラ越しに伝わってきたのは、仲間へのリスペクトとアルゼンチンラグビーの進化の可能性だった。
試合後のマテーラの瞳には、ピッチで戦うロス・プーマス(アルゼンチン代表の愛称)の姿が焼きついているように思えた。スタンドから見つめたW杯、この経験がマテーラ、そしてロス・プーマスの革新につながっていく気がしてならない。
ファイナルを逃したアルゼンチンは3位決定戦へ。相手はイングランドに決まった。進化の鍵を握る大一番が待っている。
■イワモト アキト / Akito Iwamoto
フォトグラファー、ライター。名古屋市生まれ。明治大を経て2008年に中日新聞入社。記者として街ネタや事件事故、行政など幅広く取材。11年から同社写真部へ異動。18年サッカーW杯ロシア大会、19年ラグビーW杯日本大会を撮影。21年にフリーランスとなり、現在はラグビー日本代表の試合撮影のほか、JAPAN RUGBY LEAGUE ONEオフィシャルフォトグラファーを務める。
(イワモト アキト / Akito Iwamoto)