岡田采配に感じた主流への“アンチテーゼ” 阪神OBが分析…起用法に見えた強固な意志
阪神、オリックスで岡田氏にかわいがってもらった野田浩司氏
2023年のレギュラーシーズンはセ・リーグが阪神、パ・リーグはオリックスが制した。この両球団で活躍した投手である野球評論家の野田浩司氏にとっても、感慨深い結果だ。「もう引退して20年以上になるけど、1回はこの組み合わせで日本シリーズにならないかなと思っていました。今年はその最大のチャンスですよね」。阪神・岡田彰布監督は現役時代にお世話になった大先輩。そんな選手時代の思い出とともに、今年の阪神の強さについても語ってもらった。
「岡田さんにはよくご飯に連れていってもらって、野球の話とか聞かせてもらいました。阪神からオリックスへのトレード通告を受けた時には相談に乗ってもらったし、グラウンドレベルではよくマウンドに来てくれた人です」と野田氏は話す。「『お前の球じゃ打たれへんよ』とか『もっといかんかい!』系の言葉が多かったですね。『打ってやるから、取り返してやるから思い切って行け』とかもね」。この“岡田ゲキ”で何度もマウンドで落ち着きを取り戻すことができたそうだ。
野田氏が阪神時代のプロ3年目、1990年5月6日の大洋戦(横浜)では、実際に岡田氏のバットに助けられたという。「超乱打戦の試合で10-9の8回裏に僕が抑えで登板したんですけど、2点を取られて逆転されちゃったんですよ。そうしたら9回表に岡田さんが(大洋投手の)遠藤(一彦)さんから逆転打を打ち返してくれたんです」。
その試合、野田氏は岡田氏の逆転打で12-11となった9回裏を抑えて、勝利投手になった。「その時の記憶はありますね。自分が抑えを失敗した試合だったんで。あの時は、ホントよかったぁって思いましたから」。
野田氏は岡田氏とオリックスでも一緒になった。「僕が(1992年オフに)移籍して1年後に岡田さんも来られたんですけど、同じように阪神から来た(投手の)渡辺(伸彦)さんと3人で食事に行ったりしました。オリックスに来たときの岡田さんは、何かすごく楽しそうにやられていた印象もありますね」と懐かしそうに振り返った。そして、2023年レギュラーシーズンの岡田阪神については「勝負勘とかすごいと思います」とうなった。
「去年まで岡田さんは解説でいろいろ言われていたじゃないですか。『いや、ここは違うよ、ここはこうやんか』みたいに。それをホンマにベンチで(実行)したという感じですよね。奥が深いというか、このバッターで、このピッチャーで、この球筋で、今の状況だったら、ここにしか打球飛ばんよみたいなのも、よく言われていましたけど、そういうものもね」
昔風の野球も取り入れた岡田阪神の優勝に「爽快感もあった」
投手を見極める眼力にも改めて凄さを感じたという。「村上(頌樹)と大竹(耕太郎)が大きかったと思いますけど、大竹は(現役ドラフトで)岡田さんが獲ったんでしょ。大竹はソフトバンクの頃、ハマったときはいとも簡単に抑えるんですけど、つかまった時は簡単につかまるという印象がありましたが、今年はいい方ばかりですもんね。岡田さんがうまく使ったんじゃないでしょうか」。
桐敷拓馬のリリーフ特性も見抜いたが「JFK(ジェフ・ウィリアムス、藤川球児、久保田智之)もそうだったし、オリックス監督の時は平野(佳寿)を後ろに回しましたからね。その辺もね」。
近本、中野を1、2番に置くなどの虎打線に関しても「最近は打順を固定しなかったり、2番打者に強打者を入れたりするのが主流になっていますけど、岡田さんはそういうことをせず、言い方が正しいかわかりませんが、昔風の野球も取り入れて見事にぶっちぎり優勝ですからね。僕も昔の人間なので、それはある意味、爽快感もありました。アメリカからの近代野球ばかりじゃなく、ちょっと前の野球でもやれるんじゃないかってね」と野田氏はうれしそうに分析した。
「大竹はオリックスにはどうでしょうかねぇ。伊藤将司はオリックス打線も打てないんじゃないかなぁ……」。両球団のOBとしてはクライマックスシリーズのファイナルステージを飛び越えて、やはり阪神対オリックスの日本シリーズ対決を夢見るばかり。「OBとしてというより、みんなそうじゃないですか。面白そうでしょ、ぶっちぎり優勝同士だから。そりゃあ見たいですよね」と正直な胸の内も口にした。(山口真司 / Shinji Yamaguchi)