韓国開催の『LoL』世界大会がまもなく開幕! eyesさんに聞く「Worlds」観戦ガイド
2023年10月10日から11月19日にかけて、PCオンラインゲーム『League of Legends』(以下、LoL)の世界大会「League of Legends World Championship」(以下、Worlds)が、韓国にて開催されます。
2023年の世界王者を決める「Worlds」には、世界からトップ22チームが集結。日本からは、国内リーグ「League of Legends Japan League」(以下、LJL)のSummer Splitで優勝した、「DetonatioN FocusMe」(以下、DFM)が出場します。
今回は、LJLでキャスターを務めるeyesさんにインタビュー。まもなく開幕する「Worlds」に向けて、知っておきたい大会の仕組みやストーリー、日本チーム「DFM」の初戦にまつわる情報などを聞きました。
プレイインから出場する日本チーム、最初の目標は?
――最初に、「Worlds」がどのような大会なのか教えてください。
eyes:日本で開催されているLJLを含め、世界では9つのリージョンで『LoL』のプロリーグが行われています。年に一度、9つのプロリーグからトップチームが集結し、世界一を決めるのが、世界大会「Worlds」です。
今年の「Worlds」は、プレイインステージ、スイスステージ、ノックアウトステージという、3つのステージで構成されます。出場する22チームのうち、8チームはプレイインステージから出場。日本チーム「DFM」の試合も、プレイインステージから始まります。
――リージョンによって、出場チーム数やスタートするステージが異なりますが、どういった背景があるのでしょうか?
eyes:リージョンごとの出場チーム数は、過去の世界大会の成績をもとに決定され、良い結果を残しているリージョンには枠が多く設けられています。メジャーリージョンと呼ばれている、韓国(LCK)、中国(LPL)、ヨーロッパ(LEC)、北アメリカ(LCS)がそうですね。
一方で、あまり結果を残せていないリージョンは、マイナーリージョンと呼ばれ、出場チームの枠が少なくなっています。さらに、「Worlds」はベスト16からが本戦にあたりますが、マイナーリージョンのチームは、本戦に進むために、プレイインステージを勝ち抜かなければなりません。プレイインステージから本戦に進めるのは、2チームです。
――日本チームがプレイインステージを突破するための条件を教えてください。
eyes:プレイインステージでは、4チームずつグループAとグループBに分かれ、Bo3でのダブルエリミネーショントーナメントを行います。日本チームは、グループBに振り分けられました。グループのなかで、下位2チームになると大会敗退。上位2チームに入ると次の段階に進みますが、これだけではまだプレイインステージ突破にはなりません。
両グループの上位2チームはそれぞれ、グループAで1位のチームとグループBで2位のチーム、グループBで1位のチームとグループAで2位のチームという組み合わせで、Bo5を戦います。ここで勝てば、本戦のスイスステージに進むことができます。
なので、日本チームとしては、まずはグループBで2位以上に入り、さらにグループAの1位もしくは2位のチームと戦って勝つ、というのがプレイインステージを突破する条件です。
――過去の実績を踏まえて、日本チームの目標はどのあたりになると考えられますか?
eyes:日本チームは過去に、プレイインステージを突破してベスト16に入ったことがあり、これは日本にとって大きな快挙でした。ただ、当時は強いチームと当たらなければ勝ち進みやすい仕組みで、グループ分けの運が絡む部分もあったんですね。しかし、今年はより実力を試される仕組みになったといえます。
というのも、これまではグループで1位になれば、一気に本戦まで進むことができました。2021年に日本チームがベスト16に入ったときは、その方法で本戦に進んでいます。ですが、今年はグループの1位になっても、もう1つのグループの上位チームと戦わなければならず、必ず強いチームと当たるようになっています。
そのうえで、日本チームが目指すラインを考えると、今年はひとまずグループBの上位2チームに入ることが目標になるでしょう。グループAの上位チームとBo5で対戦するところまで行けたら、それだけですごいと思います。
プレイインステージのトーナメント表。勝ち抜いた2チームが本戦へ進出する
運要素が減り、より実力を重視した大会フォーマットに
――大会フォーマットは年々変化しているようですが、運要素を減らし、より実力を重視する形式に変更されているのでしょうか?
eyes:それはあると思いますね。特に今年は、その傾向が強い印象があります。昨年まで、プレイインステージの次にあるステージは、4つのグループに分かれて戦うグループステージでした。
そのグループ分けでは、各リージョンからの1位通過チームが分散するようになっていたのですが、リージョンによって実力に差があります。そのため、グループ分けでどのチームと同じになるか、運要素が生まれていたんです。しかし、今年はこの部分が大きく変更され、スイスステージという新しい形式に変わりました。
――昨年から変更された部分について、詳しく教えてください。
eyes:昨年までのグループステージでは、4チームずつ4グループに分かれて総当たり戦を行い、各グループの上位2チームがノックアウトステージに進みました。ですが、今年は、勝敗数の同じチーム同士が対戦するスイスステージに変わります。
スイスステージの初戦では、異なるリージョンのチームがランダムな組み合わせで対戦します。その後は、同じ勝敗数のチーム同士で対戦。これを5ラウンド行い、3敗したチームは大会敗退、3勝したチームはノックアウトステージに進出します。大会敗退やノックアウトステージ進出がかかった試合はBo3で、それ以外の試合はBo1で行われます。
そして、スイスステージを突破した8チームが、最後のステージであるノックアウトステージに進出。ノックアウトステージは昨年から変わっておらず、Bo5のシングルエリミネーショントーナメントで戦い、これを勝ち抜いたチームが世界王者に輝きます。
スイスステージでは勝敗数の同じチーム同士が対戦。3勝か3敗するまで続く
スイスステージを突破した8チームが、世界王者を決めるノックアウトステージに挑む
知っておきたい「Worlds」の注目チームとストーリー
――今年の「Worlds」での優勝候補となるリージョンや、全体的なリージョンのパワーバランスについて教えてください。
eyes:昨年の「Worlds」では、韓国チームが優勝しました。ですが、今年5月に開催された国際大会「Mid-Season Invitational」(以下、MSI)では、中国チームが優勝しています。直近5年の成績だと、中国チームのほうが全体的に成績が良いですね。
今のところ、中国チームが若干優勢と言われていますが、どちらが優勝するかわからないくらい、韓国と中国は拮抗しています。全体としては、その次にヨーロッパ、北アメリカと続くようなパワーバランスです。
――中国チームと韓国チームのなかで、注目すべきチームや選手はいますか?
eyes:中国チームで注目したいのは、まず「JD Gaming」。直近の「MSI」で優勝したチームですね。ミッドのknight選手は、世界ナンバーワンに今最も近いのではないかと言われています。また、ADCのRulerという韓国人選手は、“ADCの王様”と呼ばれています。この2人はすごく目立つので、世界大会を初めて見る人でも、すごさを感じられるでしょう。
次に、中国の2位通過チーム「Bilibili Gaming」。注目選手は、トップのBin選手です。Bin選手はジャックスを得意チャンピオンとしていて、相手を壊しにいくような攻撃的なプレイスタイルが特徴です。それに、Bin選手はインタビューでの発言が、すごくビッグマウスなんです。なので、好きな人はハマる選手だと思いますよ。
続いて、韓国チームで注目したいのは、「Gen.G」です。ミッドのChovy選手は、プロが彼のプレイを見て学ぶくらい、世界最高峰のミッドレーナー。ただ、いまだ世界大会のタイトルを取ったことがなく、今年優勝できるかどうかに期待が寄せられています。
また、ADCのPeyz選手は2年目の新人なのですが、Ruler選手が「JD Gaming」に移籍したあとに入った選手、つまり“ADCの王様”の後釜を任された選手です。プレッシャーのかかる起用でしたが、その実力でファンの不安を払拭しました。もしRuler選手とPeyz選手の対決があれば、見どころになりますね。
そして、韓国チームでは「T1」も外せません。「Worlds」で3回の優勝を果たし、うち2回は2連覇という、前人未到の成績を叩き出したFaker選手がいます。特に今年は韓国での開催ということもあり、Faker選手の“王の帰還”には多くのファンが期待しているでしょう。
――中国チームと韓国チーム以外にも、注目すべきチームはありますか?
eyes:ヨーロッパの1位通過チームである「G2 Esports」ですね。ヨーロッパは、強いと言われているメタの戦い方をひっくり返して、自分たちの戦い方を独自に組み上げているリージョンなんです。
「G2 Esports」は、まさにそうした戦い方を表したチームなので、どこまで勝ち進めるか楽しみです。あまり使われない意外なチャンピオンを使うこともあるので、番狂わせを起こしたらおもしろいなと思っています。
――今年の「Worlds」のテーマ曲では、MVでDeft選手が主人公として描かれています。これを含めて、知っておきたい「Worlds」のストーリーを教えてください。
eyes:昨年の「Worlds」で、Deft選手がいた「DRX」は、日本チームと同じプレイインステージから出場して、決勝まで上りつめました。そして、決勝でFaker選手のいる「T1」を倒し、優勝を果たしています。
実は、Deft選手とFaker選手は同じ高校の同級生だったんです。Deft選手もすばらしい選手なのですが、ずっとFaker選手が先を行く存在でした。しかし、その2人が決勝のステージで戦い、ついにDeft選手が立場を逆転させた。そのストーリーが、まさしく主人公だったということですね。
ただ、昨年優勝した「DRX」のメンバーは、現在チームがバラバラになっています。Deft選手が今いる「Dplus KIA」というチームは、韓国リーグでDeft選手の元チームメイトがいるチームを直接下し、「Worlds」への出場権を奪いました。
これによって、昨年の優勝メンバーのうち、今年の「Worlds」に出場するのはDeft選手と、北アメリカチームの「Team Liquid」に移籍したPyosik選手のみ。もし「Dplus KIA」が「Team Liquid」を下せば、Deft選手が「Worlds」優勝時のチームメイトを全員倒したことになるので、おもしろいストーリーの1つかなと思います。
それから、中国チームの「JD Gaming」が、今グランドスラムにリーチをかけていることも、大きな見どころです。グランドスラムとは、国内リーグのSpringシーズン、国際大会の「MSI」、国内リーグのSummerシーズンで優勝し、さらに世界大会の「Worlds」でも優勝することを指します。もし「JD Gaming」が今年「Worlds」で優勝すれば、『LoL』の歴史上、初めてグランドスラムが達成されるので、それも楽しみですね。
直近の国際大会「MSI」で優勝。グランドスラムにリーチをかける中国チーム「JD Gaming」
アメリカで開催された2022年の「Worlds」決勝ステージ
Deft選手とFaker選手。同級生の2人が決勝で戦うストーリーは大きな話題になった
K-POPグループ「NewJeans」が歌う、2023年の「Worlds」テーマソング『GODS』
新体制で挑むのか、ロスターに注目が集まる「DFM」
――日本チームの「DFM」について、改めてどのようなチームなのか教えてください。
eyes:「DFM」は、LJLが始まった当初から出場を続けている、『LoL』の国内シーンを代表するチームです。現在LJLで6連覇、通算では13回の優勝を果たしています。
――「DFM」は、どのロスターで「Worlds」に出場するか、まだわからない状況です(※)。ロスターの予想を含めて、メンバーを紹介いただけますか?
※「DFM」は、シーズン途中で急きょ体制変更を行ったため、ADCに「DFM Academy」からMilan選手を迎え、Yutapon選手がADCからトップにロールチェンジしていた。今年8月には、トップレーナーのapaMEN選手の加入が発表された。
eyes:予想では、トップはapaMEN選手になると思います。apaMEN選手は、LJLの最初期から活躍していたベテランで、高い実力を持つプレイヤー。ただ、一度現役を引退して2年近いブランクがあるので、その差をいかに埋められるか、世界大会でどれだけ暴れられるかに注目が集まります。
そして、Yutapon選手がADCに戻ると予想しています。Yutapon選手は、発足当初から「DFM」に所属し、ずっと第一線で戦っているプレイヤーです。Yutapon選手の魅力は、劣勢の状況でも逆転の可能性を感じさせてくれるところ。「彼なら何かやってくれるんじゃないか」という、チャレンジをしてくれる選手です。
ジャングルのSteal選手は、日本に来てとても長い韓国人プレイヤー。状況を分析して自分がやるべきことをプレイする、レーンを支えるタイプのジャングラーです。世界大会の試合では緊張しがちという懸念はあるものの、もうかなり歴も長いですから、大丈夫だろうと思っています。
ミッドのAria選手は、韓国リーグでの経験があり、世界大会でFaker選手をソロキルしたこともある韓国人プレイヤー。今年のプレイインステージでは、警戒すべき強いミッドレーナーが限られています。特にグループBのミッドレーナーのなかで、Aria選手はかなり強いので、ゲームを進めるうえで、とても期待が持てる選手だと思います。
サポートのHarp選手も、韓国リーグでの経験がある韓国人プレイヤー。アグレッシブに仕掛けるのが得意で、レーンでの戦いがとにかく強い選手です。ADCのYutapon選手が有利を築くための、土台をつくっている選手ですね。
――トップがapaMEN選手、ADCがYutapon選手の体制になると予想した理由を教えてください。
eyes:理由は、初戦の相手が「CTBC Flying Oyster」というチームだからです。パシフィック(PCS)に属するチャイニーズタイペイチームで、このチームはプレイインステージに出場する8チームのなかで、最もボットレーンが強いといえます。
そのため、「DFM」はベテランのYutapon選手を、ボットレーンに置きたいと考えるのではないかなと。そして、初戦にその体制で出場したら、そのまま続けて出場したほうがクオリティが上がっていくと考えられるので、そう予想しました。
今年のSummer Splitで優勝し、LJL6連覇の記録を樹立した「DFM」
「DFM」の対戦相手となるチーム、リージョンの特徴は?
――「DFM」が初戦で戦う「CTBC Flying Oyster」は、パシフィック(チャイニーズタイペイ・香港・東南アジア地域)のチームですが、どういったリージョンなのでしょうか?
eyes:パシフィックは、現在やや低迷していると言われています。パワーバランスとしては、メジャーリージョンと呼ばれる韓国、中国、ヨーロッパ、北アメリカの次に続く地域。低迷していると言ったのは、過去に2012年の「Worlds」で優勝したチーム「Taipei Assassins」のリージョンでもあるからです。
なので、もともと十分に実力のあるリージョンではあるのですが、有力選手が中国チームに移籍していた背景などから苦しんでいました。しかし、今年は「PSG Talon」にMaple選手とJunJia選手、「CTBC Flying Oyster」にShiauC選手が、中国チームでの活躍を経て戻ってきています。これによって今年は良い選手がそろっているので、プレイインステージを抜ける可能性がかなり高いリージョンだといえます。
――「CTBC Flying Oyster」というチームの特徴について教えてください。
eyes:やはりボットレーンの強さが最大の特徴ですね。「CTBC Flying Oyster」は、パシフィックの2位通過チームですが、1位通過チーム「PSG Talon」のボットレーンも圧倒していました。
そして、サポートのShiauC選手が、ミッドレーンに圧力をかけるのがとても上手く、ボットレーンで勝ったあとにミッドレーンをつぶしに行く動きが特徴的です。
なので、「DFM」にとっては、ボットレーンで負けないことと、ShiauC選手がミッドレーンに来たときに避けること、この2つが非常に大事になってくるでしょう。
――Bグループには、ベトナムチームの「Team Whales」も振り分けられています(※)。2戦目以降で「DFM」と対戦する可能性がありますが、どのような特徴のチームですか?
※Bグループの4チーム目は、10月9日に行われる予選「Worlds Qualifying Series」にて決定する。
eyes:ベトナムチームは、昔からとにかく仕掛けるのが好きで、アグレッシブに戦う傾向があります。一戦一戦の重みが違う世界大会でも、かまわずアグレッシブに仕掛けるので、相手はつい尻込んでしまいます。「DFM」が対戦することになったら、そうした戦い方に巻き込まれないことが重要になるでしょう。
今年生まれる「Worlds」の新たなストーリーを体感しよう
――今回の「Worlds」を通して、日本チームにはどのような戦いを期待したいですか?
eyes:今まで日本チームは世界大会で、レーン戦で差をつけられてしまい、その後の集団戦で厳しい戦いを強いられる試合展開が多くありました。序盤で大きく差がついてしまうと、なかなか逆転の未来が見えなくなってしまいます。
そのため、序盤から引き離されることなく、五分五分のまま進んで、中盤のファイトで勝つような展開を望んでいます。日本チームの世界大会での戦いですから、ハラハラドキドキしながら見られるような、そんな試合を期待したいですね。
――それでは最後に、「Worlds」の観戦に興味を持つ方にメッセージをお願いします。
eyes:『LoL』のeスポーツシーンにおいて、「Worlds」は大きな意味を持つ大会です。2011年に開催されたシーズン1から、年に一度、その年のナンバーワンを決めるために行われてきました。選手たちも、「今年のナンバーワンは俺たちだ」という気持ちを持ってプレイします。
そうした選手たちがくり広げる試合は、本当におもしろく、信じられないプレイも続々と飛び出します。決勝や準決勝、好きなチームの試合を見るだけでも、それを体感できると思います。「Worlds」は毎年、必ずストーリーが生まれます。そのストーリーを、ぜひ一緒に体感しましょう。
――eyesさん、ありがとうございました!
日本チーム「DFM」初戦は、10月11日16時よりスタート
世界大会「Worlds」は、10月10日に開幕。プレイインステージで行われる、日本チーム「DFM」の初戦は、10月11日16時よりスタートが予定されています。
大会配信は、公式日本語配信のほか、ストリーマーによるミラー配信も実施。日本では、k4senさん、SHAKAさん、らいじんさん、たかやスペシャルさん、JapaneseKoreanUGさんの5名がミラー配信を行うことが発表されています。ぜひ「Worlds」の観戦を楽しみましょう!
■2023年の「Worlds」開催スケジュール
・プレイインステージ:10月10日〜15日
・スイスステージ:10月19日〜23日、10月26〜29日
・ノックアウトステージ:11月2日〜5日、11月11日〜12日
・グランドファイナル:11月19日
2023年の世界王者を決める「Worlds」には、世界からトップ22チームが集結。日本からは、国内リーグ「League of Legends Japan League」(以下、LJL)のSummer Splitで優勝した、「DetonatioN FocusMe」(以下、DFM)が出場します。
プレイインから出場する日本チーム、最初の目標は?
――最初に、「Worlds」がどのような大会なのか教えてください。
eyes:日本で開催されているLJLを含め、世界では9つのリージョンで『LoL』のプロリーグが行われています。年に一度、9つのプロリーグからトップチームが集結し、世界一を決めるのが、世界大会「Worlds」です。
今年の「Worlds」は、プレイインステージ、スイスステージ、ノックアウトステージという、3つのステージで構成されます。出場する22チームのうち、8チームはプレイインステージから出場。日本チーム「DFM」の試合も、プレイインステージから始まります。
――リージョンによって、出場チーム数やスタートするステージが異なりますが、どういった背景があるのでしょうか?
eyes:リージョンごとの出場チーム数は、過去の世界大会の成績をもとに決定され、良い結果を残しているリージョンには枠が多く設けられています。メジャーリージョンと呼ばれている、韓国(LCK)、中国(LPL)、ヨーロッパ(LEC)、北アメリカ(LCS)がそうですね。
一方で、あまり結果を残せていないリージョンは、マイナーリージョンと呼ばれ、出場チームの枠が少なくなっています。さらに、「Worlds」はベスト16からが本戦にあたりますが、マイナーリージョンのチームは、本戦に進むために、プレイインステージを勝ち抜かなければなりません。プレイインステージから本戦に進めるのは、2チームです。
――日本チームがプレイインステージを突破するための条件を教えてください。
eyes:プレイインステージでは、4チームずつグループAとグループBに分かれ、Bo3でのダブルエリミネーショントーナメントを行います。日本チームは、グループBに振り分けられました。グループのなかで、下位2チームになると大会敗退。上位2チームに入ると次の段階に進みますが、これだけではまだプレイインステージ突破にはなりません。
両グループの上位2チームはそれぞれ、グループAで1位のチームとグループBで2位のチーム、グループBで1位のチームとグループAで2位のチームという組み合わせで、Bo5を戦います。ここで勝てば、本戦のスイスステージに進むことができます。
なので、日本チームとしては、まずはグループBで2位以上に入り、さらにグループAの1位もしくは2位のチームと戦って勝つ、というのがプレイインステージを突破する条件です。
――過去の実績を踏まえて、日本チームの目標はどのあたりになると考えられますか?
eyes:日本チームは過去に、プレイインステージを突破してベスト16に入ったことがあり、これは日本にとって大きな快挙でした。ただ、当時は強いチームと当たらなければ勝ち進みやすい仕組みで、グループ分けの運が絡む部分もあったんですね。しかし、今年はより実力を試される仕組みになったといえます。
というのも、これまではグループで1位になれば、一気に本戦まで進むことができました。2021年に日本チームがベスト16に入ったときは、その方法で本戦に進んでいます。ですが、今年はグループの1位になっても、もう1つのグループの上位チームと戦わなければならず、必ず強いチームと当たるようになっています。
そのうえで、日本チームが目指すラインを考えると、今年はひとまずグループBの上位2チームに入ることが目標になるでしょう。グループAの上位チームとBo5で対戦するところまで行けたら、それだけですごいと思います。
プレイインステージのトーナメント表。勝ち抜いた2チームが本戦へ進出する
運要素が減り、より実力を重視した大会フォーマットに
――大会フォーマットは年々変化しているようですが、運要素を減らし、より実力を重視する形式に変更されているのでしょうか?
eyes:それはあると思いますね。特に今年は、その傾向が強い印象があります。昨年まで、プレイインステージの次にあるステージは、4つのグループに分かれて戦うグループステージでした。
そのグループ分けでは、各リージョンからの1位通過チームが分散するようになっていたのですが、リージョンによって実力に差があります。そのため、グループ分けでどのチームと同じになるか、運要素が生まれていたんです。しかし、今年はこの部分が大きく変更され、スイスステージという新しい形式に変わりました。
――昨年から変更された部分について、詳しく教えてください。
eyes:昨年までのグループステージでは、4チームずつ4グループに分かれて総当たり戦を行い、各グループの上位2チームがノックアウトステージに進みました。ですが、今年は、勝敗数の同じチーム同士が対戦するスイスステージに変わります。
スイスステージの初戦では、異なるリージョンのチームがランダムな組み合わせで対戦します。その後は、同じ勝敗数のチーム同士で対戦。これを5ラウンド行い、3敗したチームは大会敗退、3勝したチームはノックアウトステージに進出します。大会敗退やノックアウトステージ進出がかかった試合はBo3で、それ以外の試合はBo1で行われます。
そして、スイスステージを突破した8チームが、最後のステージであるノックアウトステージに進出。ノックアウトステージは昨年から変わっておらず、Bo5のシングルエリミネーショントーナメントで戦い、これを勝ち抜いたチームが世界王者に輝きます。
スイスステージでは勝敗数の同じチーム同士が対戦。3勝か3敗するまで続く
スイスステージを突破した8チームが、世界王者を決めるノックアウトステージに挑む
知っておきたい「Worlds」の注目チームとストーリー
――今年の「Worlds」での優勝候補となるリージョンや、全体的なリージョンのパワーバランスについて教えてください。
eyes:昨年の「Worlds」では、韓国チームが優勝しました。ですが、今年5月に開催された国際大会「Mid-Season Invitational」(以下、MSI)では、中国チームが優勝しています。直近5年の成績だと、中国チームのほうが全体的に成績が良いですね。
今のところ、中国チームが若干優勢と言われていますが、どちらが優勝するかわからないくらい、韓国と中国は拮抗しています。全体としては、その次にヨーロッパ、北アメリカと続くようなパワーバランスです。
――中国チームと韓国チームのなかで、注目すべきチームや選手はいますか?
eyes:中国チームで注目したいのは、まず「JD Gaming」。直近の「MSI」で優勝したチームですね。ミッドのknight選手は、世界ナンバーワンに今最も近いのではないかと言われています。また、ADCのRulerという韓国人選手は、“ADCの王様”と呼ばれています。この2人はすごく目立つので、世界大会を初めて見る人でも、すごさを感じられるでしょう。
次に、中国の2位通過チーム「Bilibili Gaming」。注目選手は、トップのBin選手です。Bin選手はジャックスを得意チャンピオンとしていて、相手を壊しにいくような攻撃的なプレイスタイルが特徴です。それに、Bin選手はインタビューでの発言が、すごくビッグマウスなんです。なので、好きな人はハマる選手だと思いますよ。
続いて、韓国チームで注目したいのは、「Gen.G」です。ミッドのChovy選手は、プロが彼のプレイを見て学ぶくらい、世界最高峰のミッドレーナー。ただ、いまだ世界大会のタイトルを取ったことがなく、今年優勝できるかどうかに期待が寄せられています。
また、ADCのPeyz選手は2年目の新人なのですが、Ruler選手が「JD Gaming」に移籍したあとに入った選手、つまり“ADCの王様”の後釜を任された選手です。プレッシャーのかかる起用でしたが、その実力でファンの不安を払拭しました。もしRuler選手とPeyz選手の対決があれば、見どころになりますね。
そして、韓国チームでは「T1」も外せません。「Worlds」で3回の優勝を果たし、うち2回は2連覇という、前人未到の成績を叩き出したFaker選手がいます。特に今年は韓国での開催ということもあり、Faker選手の“王の帰還”には多くのファンが期待しているでしょう。
――中国チームと韓国チーム以外にも、注目すべきチームはありますか?
eyes:ヨーロッパの1位通過チームである「G2 Esports」ですね。ヨーロッパは、強いと言われているメタの戦い方をひっくり返して、自分たちの戦い方を独自に組み上げているリージョンなんです。
「G2 Esports」は、まさにそうした戦い方を表したチームなので、どこまで勝ち進めるか楽しみです。あまり使われない意外なチャンピオンを使うこともあるので、番狂わせを起こしたらおもしろいなと思っています。
――今年の「Worlds」のテーマ曲では、MVでDeft選手が主人公として描かれています。これを含めて、知っておきたい「Worlds」のストーリーを教えてください。
eyes:昨年の「Worlds」で、Deft選手がいた「DRX」は、日本チームと同じプレイインステージから出場して、決勝まで上りつめました。そして、決勝でFaker選手のいる「T1」を倒し、優勝を果たしています。
実は、Deft選手とFaker選手は同じ高校の同級生だったんです。Deft選手もすばらしい選手なのですが、ずっとFaker選手が先を行く存在でした。しかし、その2人が決勝のステージで戦い、ついにDeft選手が立場を逆転させた。そのストーリーが、まさしく主人公だったということですね。
ただ、昨年優勝した「DRX」のメンバーは、現在チームがバラバラになっています。Deft選手が今いる「Dplus KIA」というチームは、韓国リーグでDeft選手の元チームメイトがいるチームを直接下し、「Worlds」への出場権を奪いました。
これによって、昨年の優勝メンバーのうち、今年の「Worlds」に出場するのはDeft選手と、北アメリカチームの「Team Liquid」に移籍したPyosik選手のみ。もし「Dplus KIA」が「Team Liquid」を下せば、Deft選手が「Worlds」優勝時のチームメイトを全員倒したことになるので、おもしろいストーリーの1つかなと思います。
それから、中国チームの「JD Gaming」が、今グランドスラムにリーチをかけていることも、大きな見どころです。グランドスラムとは、国内リーグのSpringシーズン、国際大会の「MSI」、国内リーグのSummerシーズンで優勝し、さらに世界大会の「Worlds」でも優勝することを指します。もし「JD Gaming」が今年「Worlds」で優勝すれば、『LoL』の歴史上、初めてグランドスラムが達成されるので、それも楽しみですね。
直近の国際大会「MSI」で優勝。グランドスラムにリーチをかける中国チーム「JD Gaming」
アメリカで開催された2022年の「Worlds」決勝ステージ
Deft選手とFaker選手。同級生の2人が決勝で戦うストーリーは大きな話題になった
K-POPグループ「NewJeans」が歌う、2023年の「Worlds」テーマソング『GODS』
新体制で挑むのか、ロスターに注目が集まる「DFM」
――日本チームの「DFM」について、改めてどのようなチームなのか教えてください。
eyes:「DFM」は、LJLが始まった当初から出場を続けている、『LoL』の国内シーンを代表するチームです。現在LJLで6連覇、通算では13回の優勝を果たしています。
――「DFM」は、どのロスターで「Worlds」に出場するか、まだわからない状況です(※)。ロスターの予想を含めて、メンバーを紹介いただけますか?
※「DFM」は、シーズン途中で急きょ体制変更を行ったため、ADCに「DFM Academy」からMilan選手を迎え、Yutapon選手がADCからトップにロールチェンジしていた。今年8月には、トップレーナーのapaMEN選手の加入が発表された。
eyes:予想では、トップはapaMEN選手になると思います。apaMEN選手は、LJLの最初期から活躍していたベテランで、高い実力を持つプレイヤー。ただ、一度現役を引退して2年近いブランクがあるので、その差をいかに埋められるか、世界大会でどれだけ暴れられるかに注目が集まります。
そして、Yutapon選手がADCに戻ると予想しています。Yutapon選手は、発足当初から「DFM」に所属し、ずっと第一線で戦っているプレイヤーです。Yutapon選手の魅力は、劣勢の状況でも逆転の可能性を感じさせてくれるところ。「彼なら何かやってくれるんじゃないか」という、チャレンジをしてくれる選手です。
ジャングルのSteal選手は、日本に来てとても長い韓国人プレイヤー。状況を分析して自分がやるべきことをプレイする、レーンを支えるタイプのジャングラーです。世界大会の試合では緊張しがちという懸念はあるものの、もうかなり歴も長いですから、大丈夫だろうと思っています。
ミッドのAria選手は、韓国リーグでの経験があり、世界大会でFaker選手をソロキルしたこともある韓国人プレイヤー。今年のプレイインステージでは、警戒すべき強いミッドレーナーが限られています。特にグループBのミッドレーナーのなかで、Aria選手はかなり強いので、ゲームを進めるうえで、とても期待が持てる選手だと思います。
サポートのHarp選手も、韓国リーグでの経験がある韓国人プレイヤー。アグレッシブに仕掛けるのが得意で、レーンでの戦いがとにかく強い選手です。ADCのYutapon選手が有利を築くための、土台をつくっている選手ですね。
――トップがapaMEN選手、ADCがYutapon選手の体制になると予想した理由を教えてください。
eyes:理由は、初戦の相手が「CTBC Flying Oyster」というチームだからです。パシフィック(PCS)に属するチャイニーズタイペイチームで、このチームはプレイインステージに出場する8チームのなかで、最もボットレーンが強いといえます。
そのため、「DFM」はベテランのYutapon選手を、ボットレーンに置きたいと考えるのではないかなと。そして、初戦にその体制で出場したら、そのまま続けて出場したほうがクオリティが上がっていくと考えられるので、そう予想しました。
今年のSummer Splitで優勝し、LJL6連覇の記録を樹立した「DFM」
「DFM」の対戦相手となるチーム、リージョンの特徴は?
――「DFM」が初戦で戦う「CTBC Flying Oyster」は、パシフィック(チャイニーズタイペイ・香港・東南アジア地域)のチームですが、どういったリージョンなのでしょうか?
eyes:パシフィックは、現在やや低迷していると言われています。パワーバランスとしては、メジャーリージョンと呼ばれる韓国、中国、ヨーロッパ、北アメリカの次に続く地域。低迷していると言ったのは、過去に2012年の「Worlds」で優勝したチーム「Taipei Assassins」のリージョンでもあるからです。
なので、もともと十分に実力のあるリージョンではあるのですが、有力選手が中国チームに移籍していた背景などから苦しんでいました。しかし、今年は「PSG Talon」にMaple選手とJunJia選手、「CTBC Flying Oyster」にShiauC選手が、中国チームでの活躍を経て戻ってきています。これによって今年は良い選手がそろっているので、プレイインステージを抜ける可能性がかなり高いリージョンだといえます。
――「CTBC Flying Oyster」というチームの特徴について教えてください。
eyes:やはりボットレーンの強さが最大の特徴ですね。「CTBC Flying Oyster」は、パシフィックの2位通過チームですが、1位通過チーム「PSG Talon」のボットレーンも圧倒していました。
そして、サポートのShiauC選手が、ミッドレーンに圧力をかけるのがとても上手く、ボットレーンで勝ったあとにミッドレーンをつぶしに行く動きが特徴的です。
なので、「DFM」にとっては、ボットレーンで負けないことと、ShiauC選手がミッドレーンに来たときに避けること、この2つが非常に大事になってくるでしょう。
――Bグループには、ベトナムチームの「Team Whales」も振り分けられています(※)。2戦目以降で「DFM」と対戦する可能性がありますが、どのような特徴のチームですか?
※Bグループの4チーム目は、10月9日に行われる予選「Worlds Qualifying Series」にて決定する。
eyes:ベトナムチームは、昔からとにかく仕掛けるのが好きで、アグレッシブに戦う傾向があります。一戦一戦の重みが違う世界大会でも、かまわずアグレッシブに仕掛けるので、相手はつい尻込んでしまいます。「DFM」が対戦することになったら、そうした戦い方に巻き込まれないことが重要になるでしょう。
今年生まれる「Worlds」の新たなストーリーを体感しよう
――今回の「Worlds」を通して、日本チームにはどのような戦いを期待したいですか?
eyes:今まで日本チームは世界大会で、レーン戦で差をつけられてしまい、その後の集団戦で厳しい戦いを強いられる試合展開が多くありました。序盤で大きく差がついてしまうと、なかなか逆転の未来が見えなくなってしまいます。
そのため、序盤から引き離されることなく、五分五分のまま進んで、中盤のファイトで勝つような展開を望んでいます。日本チームの世界大会での戦いですから、ハラハラドキドキしながら見られるような、そんな試合を期待したいですね。
――それでは最後に、「Worlds」の観戦に興味を持つ方にメッセージをお願いします。
eyes:『LoL』のeスポーツシーンにおいて、「Worlds」は大きな意味を持つ大会です。2011年に開催されたシーズン1から、年に一度、その年のナンバーワンを決めるために行われてきました。選手たちも、「今年のナンバーワンは俺たちだ」という気持ちを持ってプレイします。
そうした選手たちがくり広げる試合は、本当におもしろく、信じられないプレイも続々と飛び出します。決勝や準決勝、好きなチームの試合を見るだけでも、それを体感できると思います。「Worlds」は毎年、必ずストーリーが生まれます。そのストーリーを、ぜひ一緒に体感しましょう。
――eyesさん、ありがとうございました!
日本チーム「DFM」初戦は、10月11日16時よりスタート
世界大会「Worlds」は、10月10日に開幕。プレイインステージで行われる、日本チーム「DFM」の初戦は、10月11日16時よりスタートが予定されています。
大会配信は、公式日本語配信のほか、ストリーマーによるミラー配信も実施。日本では、k4senさん、SHAKAさん、らいじんさん、たかやスペシャルさん、JapaneseKoreanUGさんの5名がミラー配信を行うことが発表されています。ぜひ「Worlds」の観戦を楽しみましょう!
■2023年の「Worlds」開催スケジュール
・プレイインステージ:10月10日〜15日
・スイスステージ:10月19日〜23日、10月26〜29日
・ノックアウトステージ:11月2日〜5日、11月11日〜12日
・グランドファイナル:11月19日