●街ブラ激戦区に老舗『モヤさま』投入

民放キー5局(日本テレビ、テレビ朝日、TBS、テレビ東京、フジテレビ)の10月改編情報が15日、出そろった。各局で既存番組の枠移動が行われ、土曜昼には旅&街ブラ番組が集中、全国ネットのアニメ枠が久々に新設される。帯番組やコア視聴率の状況、ジャニーズ事務所の性加害問題への対応も含め、各局の改編説明会から、この10月編成の動向をまとめた。

民放キー5局

○■テレ朝19時台3番組、フジ20時台3番組で枠移動

22年度に開局初となる個人全体視聴率で全日・プライムの2冠と世帯3冠を獲得したテレ朝は、引き続き「オールターゲット戦略」を展開。奥川晃弘コンテンツ編成局長は「今回の改編で、このいい流れを一層強化するために、積極的な枠移動と番組のリニューアルを行っています」とし、10月を待たずして9月より、火曜19時に深夜から『出川一茂ホラン☆フシギの会』、水曜19時に深夜から『朝メシまで。』、木曜19時に土曜22時から『楽しく学ぶ!世界動画ニュース』を枠移動した。他にも、水曜19時の『隣のブラボー様』をリニューアルした『1泊家族』が土曜18時30分に、木曜19時の『ニンチド調査ショー』をリニューアルした『ザ・ニンチドショー』が土曜22時に編成されるほか、日中・深夜帯もまたいで番組の枠移動を行っている。

フジは、火曜20時に月曜23時から『突然ですが占ってもいいですか?』、水曜20時に木曜20時から『奇跡体験!アンビリバボー』、金曜20時に同21時から『ウワサのお客さま』が枠移動。木曜20時は特番から昇格の『オドオド×ハラハラ』を編成し、月曜を除く平日20時台を刷新した。

テレ東は“9回目のお引越し”となる『モヤモヤさまぁ〜ず2』(火曜23時台→土曜11:30)のほか、『男子ごはん』(日曜11:25→同11:00)、『日曜ビッグバラエティ』(日曜18:55〜→同18:30〜)が枠移動し、『家、ついて行ってイイですか?』が20時30分スタートで90分枠に拡大する。

そして、日テレは土曜23時に金曜23時から『アナザースカイ』、TBSは月曜22時に同21時から『クレイジージャーニー』と、各局で枠移動によって縦の流れの強化を図っている。

また日テレは、同局が重視するコア層(13〜49歳)で唯一、長期間にわたりトップを逃している土曜朝〜昼を改善すべく、情報バラエティ『ゼロイチ』を終了。新たに、『ニッポン人の頭の中』(10:30〜)、『メシドラ 兼近&真之介のグルメドライブ!』(11:55〜)という2本のバラエティを編成する。

これに伴い土曜昼は、『王様のブランチ』(TBS)、『ぶらぶらサタデー』(フジ)、『モヤモヤさまぁ〜ず2』、『メシドラ』と旅&街ブラ番組が集中することになるが、『モヤさま』を投入するテレ東の工藤仁巳コンテンツ編成部長は「もちろん競合が多い時間だと思っていますが、うちは老舗だと思っているので、改めてこの時間で“モヤさま、ゆっくり見られていいね”、“この時間で見てみたい”と思ってほしいということで、ここに編成しました」と、激戦区に臨む意識を語った。

『メシドラ 兼近&真之介のグルメドライブ!』 (C)日テレ

『モヤモヤさまぁ〜ず2』 (C)テレビ東京

○■アニメ枠の競合増加にテレ東「テレビで見る意識が上がれば」

今改編では、日テレとTBSで久々に全国ネットのアニメ枠が新設される。

日テレは、金曜23時にアニメ枠「FRIDAY ANIME NIGHT」(通称・フラアニ)を新設し、第1弾として『葬送のフリーレン』を放送。同局が全国ネットのレギュラーアニメ枠を新設するのは31年ぶりとなるが、江成真二総合編成センター部長は「積極視聴ジャンルであるアニメ放送でリアルタイム視聴を喚起して、国内外でムーブメントを作っていきたい」と狙いを語る。

管轄するのは、映画、アニメ、深夜ドラマ、配信ドラマといったストーリーコンテンツの企画制作集団を一つに集め、配信やグローバルに向けてのコンテンツを生み出していく組織としてグローバルビジネス局に6月新設された「スタジオセンター」。「フラアニ」は、『金曜ロードショー』の直後の枠となり、佐藤貴博スタジオセンター長は「ジブリの鈴木敏夫さんも『金曜ロードショー』によってジブリは大きくなったと言ってくれていますが、そういうアニメ文化を育ててきた『金曜ロードショー』につながる“フラアニ”は、全世界が注目するアニメ枠かと思っています」とアピールした。

「FRIDAY ANIME NIGHT」 (C)日テレ

『七つの大罪 黙示録の四騎士』 (C)鈴木央・講談社/「七つの大罪 黙示録の四騎士」製作委員会

4年ぶりの全国ネット新アニメ枠を日曜16時30分に編成するTBSは、第1弾として『七つの大罪 黙示録の四騎士』を放送。畠山渉企画総括は「日5のアニメ枠の前にさらにアニメを編成することによりまして、日曜の夕方が、子どもたち、親子を含めてご覧になっていただけるチャンネルになればという形で編成いたします」と話す。

アニメコンテンツの強化は、TBSグループの中期経営計画「VISION2030」で掲げる「EDGE戦略」の柱の1つとして位置付けており、同局では7月に開局以来初めて、アニメ単体の事業部「アニメ事業部」を新設。同部の伊藤將彦氏は「2023年、TBSはアニメ事業に本腰を入れてまいります」と意気込みを示している。

こうした動きを受け、キー局で唯一「アニメ局」を設置し、多くのアニメ枠を抱えるテレ東は「正直、競合が増えるのは大変ですが、アニメというものをテレビで見てもらうという視聴者の意識がもっと上がってくれれば」(工藤コンテンツ編成部長)を見解をコメント。原作の争奪戦が激しくなることも予想されるが、長年にわたって築いた信頼関係もアドバンテージになるようだ。

●生放送の帯バラエティに「非常に高く評価」「数字は上昇傾向」

従来、情報番組が放送されていた時間帯にバラエティで活路を見いだしたTBS『ラヴィット!』。放送開始から2年半が経過し、個人全体視聴率で見ると横並び5位というポジションだが、土曜やGP帯の派生番組、イベントなど多面的な展開を見せており、畠山企画総括は「本当にTBSを代表する番組になりました。引き続き、いろんな形でTBSの顔として頑張ってもらいたいと思っています」と評価する。

また、渡邉真二郎編成部長は「ALL(個人全体)はまだまだこれから伸ばしていきたいという段階ですが、特にF1(女性20〜34歳)・F2(同35〜49歳)という女性の若い世代の視聴率が昨年比でかなり伸びております。TVerの再生数も順調ですし、『LOVE IT! ROCK』に関しても1万人の応募に対して10倍近くの応募があって営業的な価値もすごく高いと評価してますし、コアファンから熱く支えられているということで、非常に高く評価できる番組と考えております」とした。

また、かまいたち、モグライダー、見取り図、ニューヨークの4組が出演するGP帯の新バラエティ番組『ジョンソン』の高柳健人プロデューサーは、『ラヴィット!』について、「芸人さんがノビノビやっている姿を見させてもらって、反響を含めて見たときに、素晴らしいなと思っております」とキャスティングの参考にしていることを明かし、「『ジョンソン』は、いろんな芸人さんが出たいと思ってもらえる番組にしたいと思っているので、『ジョンソン』発でもファミリーができていくことが大事だと思っていますし、広がりができることを期待しながら作っていきたいと思います」と意欲を示した。

『ぽかぽか』

『ラヴィット!』同じ帯の生放送バラエティで、互いの放送内で“姉妹番組”宣言もしたフジテレビ『ぽかぽか』について、中嶋優一編成部長は「1月に始まってから、本当に正直申し上げて、想定よりも順調に推移していると捉えております。このまま内容もブレずに、国民の皆さまに愛される番組を目指していってほしいと思っております」とした上で、「一部で終了するみたいな報道がありましたけれども、そのようなことは弊社の中で議論も行われてないというのが実情でございます」と強調。

立松嗣章編成制作局長も「夏休みという期間を利用してプロモーションを強化したんですけれども、おかげさまで数字も上昇傾向ということで、大変我々としては手応えを感じております」とした。同番組は8月28日週から9月4日週を比較して、週平均視聴率がコア(13〜49歳)で約0.2ポイント増、個人全体で約0.1ポイント増と、夏休み期間が終わった後も数字が上昇している。

帯番組で4月に朝の改革を行った日テレ。従来の枠切りを8時から9時に変更したが、江成総合編成センター部長は「視聴率的に改編前から上昇しているというところではございませんが、『ZIP!』『DayDay.』チームがそれぞれ、どういう企画が視聴者に合ってるのかを日々試行錯誤しながら放送させていただいております」とした上で、「夏休みで若い方にご覧いただいたりして、徐々に上昇傾向にあるかなと思っております。特に『DayDay.』は『Nizi Project』のシーズン2も好評なので、そこから上昇気流に乗れれば」と期待を述べた。

○■TBSがコア視聴率で健闘「流れができている」

TBSは、PUT(総個人視聴率)が低下する中で、今年4月クールのゴールデン帯・プライム帯の数字が、個人全体と同局が重視する新ファミリーコア(4〜49歳)でいずれも前年比同率をキープ。新ファミリーコアはゴールデンでフジを抜いて2位となり、プライムはフジと同率2位で並んだ。

この健闘の要因について、渡邉編成部長は「例えば、火曜日は4月改編で『THE神業チャレンジ』を7時に編成しまして、前年同期比で新ファミリーコアが上がっていて、そこから8時の『バナナサンド』が非常に人気でございます。さらに、『マツコの知らない世界』、火ドラに至るまで火曜日が非常にいい新ファミリーコアの流れができています」と説明。また、「金曜の『それSnow Manにやらせて下さい』に関しましても、3回のスペシャルがいずれも新ファミリーコアを獲っています。このように少しずつ曜日ごとに新ファミリーコアの底上げができているということの集合の結果になっている」と分析した。

●ドラマ枠増加で他ジャンルの番組予算に影響は

配信視聴の増加やストックコンテンツとして価値が見直されている連続ドラマ。近年、毎改編でその放送枠が増えているが、今回もフジテレビが金曜21時に新設し、第1弾として『うちの弁護士は手がかかる』が放送される。

昨年4月改編で水曜22時、同10月改編で火曜深夜、今年4月改編で火曜23時(カンテレ制作)と積極的にドラマ枠を増やしているフジだが、多額の制作費がかかるドラマ枠が増えると、バラエティをはじめ他ジャンルの番組予算に影響が出ることも懸念される。

この点について、これまでバラエティ畑を歩み、今年6月に編成部長に就任した中嶋氏は「ドラマもバラエティもお金をかければかけるほどいい作品ができるとは思っていなくて、バラエティも知恵を絞ればお金がなくてもいいものができることもありますし、お金をかけたほうがいいバラエティもあると思います。その総合的なバランスは私のほうでコントロールして、ドラマのファンにも楽しんでいただけるようなタイムテーブルを編成しました」と話した。

『うちの弁護士は手がかかる』 (C)フジテレビ

○■ジャニーズタレント起用方針でテレ東「新規は極めて慎重に判断」

今回の改編発表は、ジャニーズ事務所の性加害問題で大きな動きが出たタイミングと重なり、各局で所属タレントの起用方針や出演番組について説明が行われた。

再発防止特別チームの調査結果を受けたジャニーズ事務所の会見前に改編説明会が行われたTBSは「バラエティやドラマのジャニーズ事務所の方々の出演に関してはこれまで通り続けていくという方針です」(渡邉編成部長)、フジも「所属されているタレントさんに問題があったわけではないので、これまで通りの番組出演という判断でキャスティングしています」(立松編成制作局長)とした。

事務所の会見後、スポンサーが所属タレントとの契約を見直す動きが続出しているが、テレ朝は「現時点で確認できている範囲では影響はない」(河野太一総合編成部長)とし、ジャニーズJr.が出演する『#裸の少年』については「番組タイトルは企画内容をベースに総合的な判断をしているので、現状変更の予定はない」と説明。『週刊ニュースリーダー』も城島茂の出演は継続し、東山紀之が事務所の社長に就任してMCを降板した『サンデーLIVE!!』は当面局アナで対応するとした。

日テレもスポンサーの影響について、「現時点で編成方針の変更の予定はございませんが、今後も事務所の対応をしっかり確認していきたい」(江成総合編成センター部長)と見解。所属タレントが主演を務めてきた月曜25時台のドラマ枠「シンドラ」の新作が未発表だが、枠は継続で後日発表予定となっており、『news zero』の月曜日に出演する櫻井翔らもキャスター続投となる。

テレ東は改編説明会に先立ち、「既存番組の出演者など契約済みのタレント起用を除き、10月の新体制発足で具体的な成果を得られたと確認できるまでは、ジャニーズ事務所への新規の出演依頼は極めて慎重に判断する方針です」と、踏み込んだコメントを発表している。