みそ、納豆、ぬか漬け、ヨーグルト…私たちの食卓には、毎日たくさんの発酵食品が並びます。発酵食品には、うれしい健康効果がいっぱい。元気なご長寿さんも毎日食べている「発酵食品」を味方に、おいしく食べて健康・長生きを目指しましょう。

発酵食品は体にいいことづくめ!

発酵食品のうれしい健康効果を、東京農業大学名誉教授で発酵学を専門にしている小泉武夫先生に教えてもらいました。

●1:腸内環境をととのえ免疫機能を高める

ヨーグルトやチーズ、ぬか漬け、キムチに多い乳酸菌は、腸内で善玉菌としてはたらき、悪玉菌の増殖を抑制してくれます。また、納豆に含まれる納豆菌は、腸内の悪玉菌のはたらきを抑えて腸内環境を整えてくれます。腸と免疫には密接な関係があり、腸内細菌のバランスが保たれることで、免疫機能の活性化にもつながります。

●2:代謝を助けて太りにくい体に

太りにくい体をつくるには、食べたものをエネルギーに変換する「代謝」のはたらきが重要。納豆や塩麹、甘酒、ぬか漬けに多く含まれるビタミンB群は、食べ物から取り入れた糖質や脂質、たんぱく質の代謝を助ける栄養素。お酢に含まれる酢酸やクエン酸も、代謝を高めてくれる成分です。

また、太りにくい体をつくるには、腸内環境を整えることも大切。キムチは、腸で善玉菌としてはたらく乳酸菌を豊富に含むほか、唐辛子のカプサイシンが脂肪燃焼を促進してくれます。

●3:抗酸化作用でアンチエイジングにも

体をサビさせる活性酸素は、老化の原因のひとつ。みそやしょうゆ、黒酢に含まれる褐色色素「メラノイジン」には活性酸素を除去する強い抗酸化作用があり、アンチエイジング効果が期待できます。

また、納豆やみその原料である大豆に含まれる「イソフラボン」には、抗酸化作用のほか、女性ホルモンに似た働きがあることから、更年期障害や骨粗しょう症の予防など、女性にうれしい効果も期待できます。

●4:疲労回復やストレス解消も期待できる

疲れたときにおすすめなのが酢。酢に含まれるクエン酸は体内の疲労物質を分解してエネルギーに変換してくれる優れもの。また、飲む点滴と言われる甘酒は、一杯ですばやく栄養補給できるパーフェクト発酵食品です。

さらにぬか漬けやキムチ、甘酒には、脳の興奮を静めリラックスさせるアミノ酸の一種GABAを含み、納豆は精神を安定させるセロトニンの分泌を促す効果があります。

●5:生活習慣病を予防

納豆に含まれる酵素「ナットウキナーゼ」には、血栓の成分を分解し血流を改善する効果が。また、酢にも血管を広げ血液中の疲労物質を分解するはたらきがあり、血圧の正常化が期待できます。

さらにみそは、血中コレステロールの上昇を抑えるほか、褐色色素の「メラノイジン」には、食後の血糖値の上昇を抑える働きも発見されています。

毎日一杯のみそ汁が健康の秘訣

日本の食文化を支えてきた発酵調味料「みそ」は、最も身近な発酵食品。みそは、抗酸化作用のあるメラノイジンやイソフラボン、サポニン、ビタミンEを含み、老化の原因となる活性酸素を抑える働きがあり、アンチエイジングや更年期障害、骨粗しょう症の予防に効果が期待できます。

さらに大豆由来の成分が血中コレステロールを抑え、生活習慣病の予防にも。また、大豆たんぱく質に含まれるペプチドには高血圧抑制効果もあり、血圧上昇の抑制にもつながります。いいことづくめのみそ。まずは毎日一杯のみそ汁を取りいれることから始めてみましょう。

●根菜とトマトの具だくさんみそ汁

野菜たっぷりのみそ汁は、食物繊維が豊富にとれて整腸作用も期待できます。

今回は、具だくさんのおみそ汁にトマトを加えたレシピをご紹介。酸味のあるトマトとおみその相性は抜群。最後にかつお節を加えることで、だし汁を使用しなくても満足感のある味わいに仕上がります。

【材料(2人分)】​

【A】

だし汁(または水) 500ml
タマネギ(くし切り) 100g(約1/2個)
ゴボウ(皮つきのまま細切り、水にはさらさない) 20g(約1/10本)
ニンジン(細切り) 30g(約1/6本)

【B】

シイタケ(石づきを落として細切り) 2枚
ミニトマト(半分に切る) 3個
油揚げ(短冊切り) 20g
お好みのみそ 大さじ1
かつお節 5g(ひとつかみくらい)
刻みネギ 適量

【つくり方】

(1) 鍋に【A】を入れて中火にかけ、湧いてきたらアクを取り、【B】も加えて弱めの中火で10分ほど煮る。

(2) 火を止めてみそを加えて溶き、かつお節を加える。

ごぼうは水にさらすとポリフェノールが溶け出してしまうので、なるべく皮付きのまま、さらさずに調理します。みそは栄養と風味を損なわないため、なるべく火を止めてから加えましょう。

 

冷やしても温めてもおいしい完全栄養ドリンク

健康や美容によいとして人気の甘酒。甘酒には、酒粕を水で溶いて砂糖を加えた「酒粕甘酒」と、米麹とおかゆからつくる「麹甘酒」の二種類があります。

注目すべきは、麹甘酒の驚くべき栄養価。ブドウ糖のほか、必須アミノ酸、ビタミン類などを含み、まるで点滴のように栄養の宝庫! 運動のあとや疲れたとき、食欲がないときの栄養補給にもピッタリです。また、麹菌が生成する「コウジ酸」は美白成分としても注目されています。栄養もあり美白も叶う麴甘酒、ぜひ毎日の食事に取り入れましょう。

●甘酒発酵カレー

甘酒は飲むだけじゃなく食べてもよし。甘酒やみそ、お酢、しょうゆなど発酵調味料を加えてつくる、まろやかな味わいのカレー。電子レンジだけでつくれるのも手軽でうれしいポイントです。

【材料(2人分)】

【A】

合挽き肉 200g
タマネギ(粗みじん切り) 200g(約1個)
ニンジン(あられ切り) 50g(各1/4本)

【B】

あらごしトマトパック 400g(1パック)
甘酒(濃縮タイプ) 100g
おろしショウガ 大さじ1/2
おろしニンニク 小さじ1
カレー粉 大さじ2
しょうゆ 大さじ2
好みのみそ 大さじ1
米粉 大さじ1
好みの酢 大さじ1

【C】

卵黄、黒こしょう、刻みパセリ 各適量
ごはん 適量

【つくり方】

(1) 大きめの耐熱ボウルに【B】を入れてよく混ぜ合わせ、【A】も加えて全体に混ぜる。ふんわりラップをし、600Wの電子レンジで10分加熱する。

(2) 一度レンジから取り出し、全体に混ぜて再び5分加熱する。

(3) 器にごはんを盛り、(1)と【C】を添える。

電子レンジの加熱時間は600Wを基準にしています。500Wの場合は1.2倍、700Wの場合は0.8倍を目安に加減してください。機種によって多少差があります

電子レンジやオーブントースターで加熱する際は、付属の説明書に従って、高温に耐えられる耐熱ガラスの皿やボウルなどを使用してください

液体を電子レンジで加熱した場合、取り出して混ぜるときに、場合によって突然沸騰する可能性があります(突沸現象)。できるだけ口の広い容器に入れ、粗熱をとってから取り出すなどご注意ください 

 

『ご長寿さんも食べている 発酵ごはんで健康・長生き』(扶桑社)では、こちらで紹介した以外にも、発酵食品を生かした健康になれるレシピを多数掲載しています。