NASA、ロシアの月探査機「ルナ25号」が衝突したとみられる地点の画像を公開
アメリカ航空宇宙局(NASA)は9月1日、NASAの月周回衛星「ルナー・リコネサンス・オービター(Lunar Reconnaissance Orbiter:LRO)」で撮影された、ロシアの月探査機「ルナ25号(Luna 25)」が衝突したとみられる地点の画像を公開しました。【2023年9月4日10時】
【▲ NASAの月周回衛星「ルナー・リコネサンス・オービター(LRO)」の光学観測装置「LROC」で撮影された、ロシアの月探査機「ルナ25号(Luna 25)」の衝突推定地点。画像の一辺の長さは1100mに相当する(Credit: NASA’s Goddard Space Flight Center/Arizona State University)】
こちらがその画像です。元になったデータはLROに搭載されている光学観測装置「LROC」で日本時間2023年8月25日の朝に取得されました。画像中央の矢印の先には直径約10mの新しいクレーターが生じています。
NASAによると、この小さなクレーターはルナ25号の着陸予定地点から約400km離れた南緯57.865度・東経61.360度に位置しています。ここは月の南半球にあるポンテクランG・クレーター(Pontécoulant G、直径約42km)の南西側の内縁で、20度以上の勾配がある場所だといいます。
【▲ 冒頭の画像の中央付近を4倍に拡大したもの。画像の一辺の長さは275mに相当する(Credit: NASA’s Goddard Space Flight Center/Arizona State University)】
次に掲載するアニメーション画像は2020年6月27日にLROCで取得された同じ場所の画像と比較したものです。画像中央のクレーターは3年前にはまだ存在していなかったことがわかります。NASAによると、この場所が最後に観測された2022年6月の時点でもクレーターは存在していなかったこと、ルナ25号の着陸予定地点に比較的近いことから、この小さなクレーターはルナ25号の衝突によって形成された可能性が高いとみられています。
【▲ ルナ25号の衝突推定地点を2020年6月に撮影された画像と比較したアニメーション。画像中央の小さなクレーターは3年前にはまだ存在していなかったことがわかる(Credit: NASA’s Goddard Space Flight Center/Arizona State University)】
ルナ25号は旧ソ連時代の1976年に打ち上げられた「ルナ24号」以来となるロシアの月探査機で、日本時間2023年8月11日にボストチヌイ宇宙基地から「ソユーズ2.1b」ロケットで打ち上げられました。
探査機には質量分析計やカメラなどが搭載されていて、ボグスラフスキー・クレーター(Boguslawsky、直径約95km)の北に着陸してから月の土壌(レゴリス)の採取と組成の分析を実施する計画でした。
【▲ 打ち上げ準備中に撮影されたロシアの月探査機「ルナ25号」(Credit: Roscosmos)】
ルナ25号による月面着陸は2023年8月21日の予定でしたが、着陸前の軌道へ遷移させるためのエンジン噴射が日本時間2023年8月19日夜に実施された際に通信が途絶しており、予定外の軌道へ遷移したために月面へ衝突したとみられていました。
NASAによると、ロシアの国営宇宙企業ロスコスモスから衝突地点の推定位置が8月21日に発表されており、これを受けてLROの運用チームは衝突推定地点の観測を行うためのコマンドを8月22日にLROへ送信していたということです。
Source
Image Credit: NASA’s Goddard Space Flight Center/Arizona State University, RoscosmosNASA - NASA’s LRO Observes Crater Likely from Luna 25 Impact
文/sorae編集部