思いどおりにいかないときに短気を起こしてしまうことが、ほとんどの人にとって目標達成の妨げになると言います(写真:dimarik/PIXTA)

思いどおりにいかないとき、つい短気を起こしたことはないだろうか。「全米最高峰のインフルエンサー」ティム・フェリスもそんな1人だ。

「新しいことに挑戦していて、数週間経っても進歩がほとんど見えてこないと、とくにストレスを感じる」と述べるティム・フェリスに、体操のアメリカ代表の元コーチが贈ったアドバイスとは。

ティム・フェリスが、現代のパイオニア106人に成功の秘密を聞きまくってまとめた本『巨神のツール 俺の生存戦略』の『健康編』の中から、紹介しよう。

著名コーチの口ぐせ

クリストファー・ソマーは体操のアメリカ代表チームの元コーチだ。


世界的に有名なコーチであるソマーは、教え子を世界トップクラスのパワフルなアスリートに育て上げることで知られている。

彼は、40年間にわたるコーチ生活において、自身のトレーニング技術に関する詳細なメモ(成功と失敗の両方について)を取っていた。

そのエッセンスを適切なかたちに変えることで、ハイレベルのアスリートと初心者の両方に使える優れたエクササイズ・システム(ジムナスティックス・ストレングス・トレーニング、GST)を生み出した。

GSTとアクロヨガを組み合わせて利用することで、私の身体は過去1年間で完全に生まれ変わった。私は39歳だが、身体の柔軟性も可動性も20歳のときより向上している。

「落ち着くんだ。何をそんなに慌てている?」

これは、コーチ・ソマーがよく使う表現で、ある種の適応には、一貫した刺激が数週間または数カ月にわたって必要になるという意味だ。

やみくもに急いでも、ケガが待っているだけだ。GSTを行っていると、まったく進歩しない期間が長く続いた後、いきなり飛躍的に成長し始める。

私の場合、彼の「ハムストリング・シリーズ」を練習して6カ月目に差しかかった頃、自分の最大可動域が一夜にして倍になったように思えたことがある。

それまで一向に成果が見えなかったのにだ。

これは、ソマーにとってはまったく珍しくないパターンだそうだ。

コーチ・ソマーからのアドバイス

どんな人もストレスを感じることがあるが、私の場合は、何か新しいことに挑戦していて、数週間経っても進歩がほとんど見えてこないと、とくにストレスを感じる。

コーチ・ソマーからは、結合組織の適応には200〜210日間かかると常々聞かされていた。

それでも「開脚前挙」の練習を始めて2〜3週間後には、もう万策尽きたような気になっていた。

コーチ・ソマーには毎週、練習風景をドロップボックス経由で送っていた。あるとき、その報告メモに、「目に見える進歩がまったくないので、やる気を維持しづらい」と正直に書いてみた。

以下は、コーチからの返信メールだ。私はエバーノートにその場で保存し、折に触れて読み返すようにしている。どこを取っても素晴らしい内容だ。

ティムへ

焦っちゃだめだ。筋力の向上を期待するには、あまりにも性急すぎる。

こうした動きをするための筋力が向上するには、少なくとも6週間はかかる。それ以前に感じる「進歩」はすべて、単にシナプスの伝達効率が上がっただけにすぎない。

つまり、練習した結果、中枢神経系がその特定の動きに関して、以前よりも効率的に機能するようになった、ということだ。だが、それを筋力の向上と混同してはいけない。

進歩が見えないことによる一時的なストレスに対処することは、一芸に秀でるための重要なノウハウの一部だ。不可欠と言ってもいい。

それは、一流アスリートの誰もが学ばなければならなかったことだ。


もしエクセレンスの追求がたやすくできるものなら、誰だってやる。

実際、思いどおりにいかないときに短気を起こしてしまうことが、ほとんどの人にとって目標を達成できない原因になるのだ。

時間的に無理な期待をすれば、不必要にいらだつことになる。失敗した気分になるからだ。

並外れたことを達成する過程は、正比例のグラフのようには進まない。ここでの秘訣は、毎日こつこつと、やるべきことをやり続けることだ。

倫理観と、不屈の意思を兼ね備えることだ。本当に、そうした単純なことなんだ。

時間軸的な見方を捨て去ろう

どんなことがあっても立ち止まらず、何があっても決めた目標からぶれない。決心したら、とにかくやる。妥協はしない。


そして、優れた長期的な結果を出すには優れたフォーカスが必要になる、という事実を受け入れることだ。感情もドラマも要らない。

道の途中でちょっとつまずいたとしても、自分を責める必要はない。過程を重視し、楽しめるようになろう。このことは非常に重要だ。

というのは、君が過ごす時間で言えば、目標にいたる過程の方が、最終的に目標を達成したときの「栄光の一瞬」よりもずっと長くなるからだ。

もちろん、成功したときには喜ぶべきだ。

だが、もっと重要なことは、失敗したときにその失敗から学ぶこと。

実のところ、しょっちゅう失敗していないようなら、君の目標が低すぎるということだ。さらに言えば、自分のベスト以下のレベルで絶対に満足してはいけない。

時間軸的な見方を捨て去ろう。時間はかかるだけかかる。

もし長期目標が1つで、そのための中間目標が存在しないなら、単純明快だ。1つだけ決心して、それを達成できるように努力すればいい。目標の維持もはるかに簡単だ。

でも、目標達成のために小さな決心をひっきりなしに行う必要があるようなら、最終的な目標からうっかりそれてしまう危険がずっと増える。

「ただ1つの決心」は、君が使える最強のツールの1つだ。

(ティム・フェリス : 起業家、作家)