平常とは生活パターンが変わる夏休み。スケジュール管理は大切です(写真:IYO/PIXTA)

【質問】

中2と小5の子どもがいる母です。また夏休みの季節がやってきました。子どもにとっては嬉しい夏休みかもしれませんが、親は子どものダラダラする姿を見ては、お小言を言ってしまう夏休みです。生活リズムが狂いやすく、また学校の夏休みの宿題や塾の勉強をしっかりやっているかなども目につきやすくなります。学校でスケジュールを立てるよう言われていますが、作っても形ばかりでほとんど実行できません。どのようにすれば親にとっても、子どもにとっても充実したものにできるでしょうか?

仮名:木村さん

リズムが変わる夏休み。スケジュール管理はどうする?

夏休みに向けて、学校では計画を立てるよう指示するプリントが配られることもあります。しかし実際にそのとおりに生活する子は少なく、提出しなければならないから書く子も多いでしょう。かく言う筆者も子どもの頃、そんな子どもの一人でした。

確かに、平常とは生活パターンが変わる長期休みですから、スケジュール管理は大切ではあります。

しかし、大人たちは、子どもに「スケジュールを作りなさい」とは言っても、作り方まで教えることはほとんどありません。「どうすれば効率的に予定をこなすことができるか?」「どうすれば楽しめる予定を作ることができるのか?」まで教えているケースは少ないのではないでしょうか。それでは子どもたちにやる気が出ないのも無理はありません。

そこで、筆者は「子どもたちのスケジュールをゲーム化してしまう」方法をおすすめしています。子どもたちはゲームやクイズには主体的に取り組みます。親がやりなさいと言わなくてもやるため、そのゲームの特徴を生かして、スケジュール管理そのものをゲーム化させてしまうのです。

そもそも、子どもたちはなぜゲームにハマるのでしょうか。さまざまな要因があると思いますが、「自分の成長や進歩が見える化」されていることが要因の一つだと考えます。ゲームは、自分の成長が数字やレベルで表示され、やればやるほど自分が高まっている実感が得られます。ゲームオーバーになっても、またやりたいと言うなんて、勉強では考えられないことです。

さて、ここからが本題です。スケジュール管理そのものをゲーム化させるとは次のようなことです。

あらゆるタスクをポイント化し、成長を「見える化」

「1冊の手帳を用意し、あらゆるタスクをポイント化し、成長していることを数字で『見える化』する」

これで子どもたちは前向きに行動する可能性がぐっと上がります。それでは詳しく説明していきます。

(1)子どもにやるかどうかの確認を取る

子どもに「手帳を使ってポイントがたまる楽しい方法があるけど、どうする?これで夏休みのやるべきことも、できるようになるらしいよ」と伝えます。そこで子どもがやりたいと言ったら、手帳を用意します。または学校で渡された計画表が使えればそれを使っても構いません。決して親の一方的な考えで子どもの許可なく進めないことがコツです。

(2)1週間だけスケジュールを決める

はじめは1週間だけお試し期間を設定します。そして1週間経ったら、更新するかどうか子どもの意向を聞き、進めるかやめるかを決めます。夏休みの場合は、最終的に夏休み終了とともに終わりにします。終わりを設定しないとマンネリ化し、ダラダラ感が出てくるためです。

(3)タスクの書き込みとポイント設定

いよいよ書き込み作業です。ここが一番大切な段階です。

主に親が気になるのは、生活習慣と学習(宿題・課題)だと思いますので、次の項目を“子どもと話をしながら、同意のうえで”、いつやるかを決めると同時に、それぞれのタスクにポイントを設定してください(以下のポイントは一例ですので、点数は各家庭で決めてください。また、子どもがやりたくないと言った項目は設定しません)。

◆生活習慣について(設定例)
 ・起きる時間、寝る時間を守れたら3ポイント(さらに自分で起きられたらボーナスポイント2ポイント)
 ・家庭のお手伝い(掃除や食事の後片付け、洗濯物をたたむ等)は1つにつき5ポイント。体を動かす労働のためポイントは少々高めに設定するなどもよいでしょう。

◆やるべきことやルーチンワーク(設定例)
 ・プリント1枚につき3ポイント
 ・習い事にきちんと行ったら5ポイント
 ・習い事の課題が終わったら5ポイント
 ・夏休みの課題は科目ごとに分け、ひとつの科目が終わったら30ポイント(さらに予定した期日までに終わったらボーナスポイント50ポイントなど)

◆やりたいこと(設定例)
 ・決められた時間内でゲームや動画視聴できたら1ポイント など

ゲームや動画視聴でもポイントが入ると驚くかもしれませんが、あえてポイント化していきます。つまり、自分にとってハードルが高いこと(やりたくないこと)はポイントが高く、やりたいことは簡単にできるのでポイントを低く設定します。

例えば、朝自分で起きられない子は、早起きはハードルが高いため、もし自分で起きられたらポイントは高くなりますが、ゲームは自らやるのでポイントが低いということです。

子どもたちが好きなバトルゲームなどでは、難敵を倒したらポイントが高く、簡単に倒せる敵であればポイントは低いはずです。ここでもそのようにポイントをつけます。

(4)ポイント交換

たまったポイントは交換できるように設定してもいいでしょう。例えば木村さんの家庭では「KIMURA PAY(通称キムペイ)」とネーミングするなども面白いかもしれません。ポイントは、ゲームや動画視聴の時間延長や、お小遣いの一部に交換するといったことに使えるようにするのはどうでしょう。

ここで次のような疑問を持つ人がいるかもしれません。

「子どもはポイントがなければ今後やらない子になるのではないか?」

これまで、このやり方を実施された方々からは、そのような報告はありませんでした。逆に良い効果がその後も生まれたという報告は多数受けています。仮に「もっとポイントが多くないとやらない!」と子ども言うのであれば、「じゃ、この仕組みはやめよう」と伝え、やめてしまえばいいだけです。

以上の仕組みは、ポイントのために頑張ってしまうことから始まりますが、やがて継続することで学力は高まり、生活習慣が正されることで効率的になり、さらに褒められる機会が増えることで「できる自分」が作られることがあります。

すると、もはやポイントは不要になっていきます。初めは外発的動機づけから入っていきますが、やがて内発的動機づけに変化していくということです。もちろん、ポイント制にするかしないかは家庭の判断を優先してください。

(5)使用上の注意

・勉強など通常やりたくないことは、比較的「勉強の中でもやってもいいこと」から一日を始めるようにする

・それでもやりたくない場合、例えば「教科書、ノートを開いて準備」もポイントにする

・ポイントは加算のみで減算(ペナルティ)は原則なし

・子ども手帳は親の管理ツールではなく、子どもが自主的に自分で管理する自主管理ツールです。やっているかどうかのチェックではなく、ポイント設定、集計のときに一緒に取り組む程度です。

「やりなさい」と連呼するより、ツールを使って楽しく


以上のようなモデルは市販の手帳、ホワイトボード、ノートを使っても行うことができますが、筆者は2016年に「子ども手帳」という手帳を開発しました。過去約3万人の子どもたちが使用してくれました。

参考までに、2つの使用事例を掲載しておきますので、イメージとして参考にしてみてください。


参考例1


参考例2

同じ夏休みを過ごすなら、親子ともに楽しく、チャレンジングでありたいものです。そのためには、ただ「やるべきことはちゃんとやりなさい」「計画立てなさい」と連呼するよりも、ツールを使って、楽しく、面白くやってみてはいかがでしょうか。わが家の夏休み恒例「ポイント祭り」という感じで。参考になれば幸いです。


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(石田 勝紀 : 教育デザインラボ代表理事、教育評論家)