アメリカ・ボストンのチャールズタウン海軍工廠には、世界最古の航行可能な現役軍艦「コンスティチューション」が入渠しています。200年以上前に竣工した帆船ですが、現在の任務は何でしょうか。実際に乗船してきました。

その帆船、実は世界最古

 アメリカのマサチューセッツ州にあるボストン市に、「チャールズタウン海軍工廠」と呼ばれる施設があります。今から約200年前の1800年に開設されたこの施設では、1974(昭和49)年に閉鎖されるまで、数多くのアメリカ海軍の艦艇が建造、修理されてきました。現在では、ボストン国立歴史公園の一部として一般公開されています。

 そんなチャールズタウン海軍工廠には、ドックに「世界最古の航行可能な現役軍艦」が入渠しています。それが、巨大な3本マストが目を引く帆船「コンスティチューション」です。


ボストン港でタグボートに曳航される帆船「コンスティチューション」(画像:アメリカ国防総省)。

数多くの輝かしい戦歴を誇る「コンスティチューション」

「コンスティチューション」は、1797年10月21日に進水したフリゲートで、全長93m、全幅13.3m、メインマストの高さは甲板から頂点まで54.4mあります。また武装に関しても、32ポンドカロネード砲が24門、24ポンド長砲が30門、さらに18ポンド船首砲が1門と充実しています。

 そんな「コンスティチューション」は、就役以来57年にも及ぶ戦闘艦としてのキャリアの中で、数々の輝かしい戦歴も残しています。1812年の英米戦争に際しては、当時世界最強と謳われたイギリス海軍のフリゲート「ゲリエール」と戦闘し、勝利を収めています。なお、これはアメリカ海軍にとって、イギリス海軍とのフリゲート同士の海戦での初勝利となっています。

「コンスティチューション」の現在の任務は?

「コンスティチューション」には「オールド・アイアンサイド」(古い鉄の横っ腹)というあだ名がつけられています。これは、「ゲリエール」との戦闘に際して、同艦の発射した砲弾を「コンスティチューション」の船体が跳ね返した逸話に由来しているといいます。


「コンスティチューション」の錨(2023年6月、稲葉義泰撮影)。

 筆者(稲葉義泰:軍事ライター)は2023年6月末、「コンスティチューション」を見学しました。艦内では、当時の兵器や船室での生活などを直接体感できるほか、お金を払えば艦尾に星条旗を掲揚し、さらにそれを証明書とともに持ち帰ることもできます。

 最初に触れたとおり、「コンスティチューション」は現役、かつ航行可能な軍艦ではありますが、現在は帆を張って自走することはできず、タグボートにけん引されて移動できるにとどまります。また、就役時には450名の乗組員や海兵隊員が乗艦していましたが、現在では約90名の水兵や士官が船体の管理にあたっています。

 そんな「コンスティチューション」の現在の任務は、「国家の船」(ship of state)として、アメリカ海軍の歴史や海軍力の重要性を後世に伝える、いわば広報艦としての役割を果たすことなのだそう。

 アメリカ海軍によると、「コンスティチューション」には現在でも毎年約60万人もの人々が訪れるといいます。つまり、「コンスティチューション」は今この瞬間も、立派に任務を遂行しているのです。