コスパ試算は◎? 北陸鉄道石川線「延伸 or 北陸線直通」の存続案 ただ課題は山積み
犀川大橋は併用軌道? 7000系電車は直流600Vだし…。
結論は8月にも出る
北陸鉄道石川線で使われる7000系電車(大藤碩哉撮影)。
廃止か存続か――今後で揺れる北陸鉄道石川線は、その方向性が2023年8月にも決定しますが、北陸鉄道と沿線自治体でつくる「石川中央都市圏地域公共交通協議会」は、存続させる場合の案もいくつか検討しています。
そのひとつが、金沢市の中心部・香林坊へ延伸するというもの。現行で石川線は、市中心部からはやや離れた野町駅が終点であり、ここから香林坊や金沢駅、武蔵といった地区へはバスなどへの乗り継ぎが必要です。
もうひとつが、新西金沢駅でJR北陸本線(編注:2024年春からはIRいしかわ鉄道へ移管)へ乗り入れるというもの。同駅は北陸本線との乗換駅であり、次の駅は金沢です。
いずれの案も、離れ小島となってしまっている石川線を市中心部へ到達させようというものですが、実現すると費用便益比は「1.0」を上回ると試算されました。費用便益比は「1.0」を上回ると、得られる便益のほうが費用より大きい妥当な事業と評価されます。とはいえ、手放しでは喜べません。
仮に延伸しようとすれば、まずは市街地の中に線路用地を取得する必要があります。さらに香林坊へは途中、犀川を渡らなければなりませんが、ここでは容量の点からも、既存の橋に単線の線路を敷設するとされました。すると運行本数が制限されるほか、渋滞の悪化も懸念されます。
では乗り入れ案はどうでしょうか。こちらは北陸本線との電化方式や車両保安装置の違い、ダイヤの調整、金沢駅の改良が必要といった課題が挙げられました。さらには、仮にこれらが解決したとしても、北陸鉄道がJRもしくはIRいしかわ鉄道の線路を借りる以上、その使用料が発生するという経営的な面も浮き彫りになりました。
石川中央都市圏地域公共交通協議会は、事業費や技術的な実現可能性など考慮すべき要素が多く、費用便益比のみで結論を一意に導くことは困難だとしています。