道路交通法第27条に「遅い車は譲らなければならない」といった趣旨の条項があります。前の車に引っかかってイライラした記憶のある人には気になる内容ですが、実際はどんな規定なのでしょうか。

該当する場合としない場合

 クルマを走らせていると、遅い車に引っかかって思わぬタイムロスとなってしまう場合があります。後ろから速いクルマが来ているのがバックミラーで見えているのだから、譲ってくれたらいいのに…実は道路交通法で、「遅い車は譲らなければならない」という条文があります。一体どんな内容なのでしょうか。


渋滞で連なるクルマのイメージ(画像:写真AC)。

 これは第27条第2項に書かれているもので、「追いついた車両が通行するのに十分な余地がない場合においては(略)できる限り道路の左側端に寄ってこれに進路を譲らなければならない」とされています。

 とはいえ、条文をよく読むと条件があります。追い付いてきたのが「最高速度が高い車」である場合、もしくは「最高速度が同じ車で、自分が後ろの相手より遅く走り続ける場合」という場合です。

 一般道における法定の最高速度は原付が30km/h、普通乗用車は60km/hです。30km/hの原付の後ろに普通車が追い付いた場合、本来の法定速度まで速く走ることができなくなってしまいます。この場合、左端に寄って譲る義務が発生します。

 逆に言えば、最高速度で普通自動車を走らせていて、後ろから同じ法定速度のクルマに追い付かれた場合、「後ろの相手と同速度か、より速く走る」ことは違法なのでできません。つまり、法定速度を超えたクルマに追い付かれても譲る義務は無いのです。

第27条の本来の意図は

 速度超過が許されないのは当然。この条文の真意はむしろ、不必要に遅く運転して「交通の安全と円滑(法第1条)」を阻害することを防ぐ点にありそうです。取り締まられた場合、反則金は普通車で6000円(違反点数1点)となります。片側2車線以上の道路で追越車線上をノロノロ走る車への罰則はまた別に、同法第20条の「車両通行帯」の規定があります。

「勝手に抜かしていけばいいだろう」という理屈は通用しません。条文には「(自分がそのまま走っていて)道路の中央とのあいだに十分な余地が無い場合」は譲りなさい、と書いてあります。対向車線へ出る危険を、不必要に後ろの車に与えてはいけないというわけです。

 もちろん「抜かされているあいだに、急に加速して追い抜きを妨害する」行為もNGで、第27条第1項に先に書かれています。

 昨今の「あおり運転」問題では、追い抜いてから低速走行してターゲット側を停止させようとする行為や、追い付いてくる車に腹を立ててわざと遅く走り続ける迷惑行為もクローズアップされています。低速で走るだけでなく前で急ブレーキ・急減速を行った場合、第27条違反 だけでなくあおり運転として欠格期間つきの運転免許取消しが課される可能性もあります。

 ちなみに、はみ出し追い越し禁止を示すオレンジの中央線が引いてある区間は例外です。いくら前の車が左端に寄ったとしてもはみ出してしまう場合は、追い越すことができません 。