今さら「延伸案」も!? 北陸鉄道石川線の始発駅「野町」はなぜあんなに中途半端なのか
北陸鉄道石川線について、その存廃を巡る結論が2023年8月にも出る見込みです。利用者減による赤字が最大の要因ですが、路線図を見て気になる点があります。それは金沢市中心部へ達していないこと。なぜ始発駅ははずれにあるのでしょうか。
BRT化のほか、延伸案も!?
石川県金沢市の野町駅から白山市の鶴来駅まで約14kmを結ぶ北陸鉄道石川線について、事業者や沿線自治体などが2023年7月初め、その存廃を巡って議論を行いました。車両や施設の老朽化、自動運転技術の開発状況なども総合的に踏まえ、8月にも今後のあり方を決定する方針です。
鶴来駅に停車する北陸鉄道石川線の7000系電車(大藤碩哉撮影)。
検討会では廃止という選択肢だけでなく、BRT(バス高速輸送システム)化のほか、逆に鉄道を金沢市の中心部 香林坊へ延伸する案も出ました。石川線沿線から市中心部へはダイレクトで行けず、新西金沢駅でJR北陸本線へ乗り換えるか、終点の野町駅でバスへ乗り継ぐ必要があります。ただし移動需要はあり、北陸鉄道は割安で移動できるデジタル乗車券を販売したり、野町駅でスムーズにバスを発着させたりする施策を実施しています。
では、そもそもなぜ始発・終着のターミナル駅が、金沢市街地のはずれに位置する野町駅なのでしょうか。他線との接続はなく、いかにも中途半端な印象を否めません。仮にでも香林坊や近江町市場まで鉄道が延びていれば便利でしょう。
実は2つもあった野町駅の"その先”
石川線はもともと、1915(大正4)年に鶴来〜野々市(現・新西金沢)間が開業したことに始まります。その後、貨物輸送を行おうと犀川のほとりまで延伸計画が持ち上がり、まずは翌1916(大正5)年に1区間、野町駅までが開業しました。
しかし以降は用地買収が進まず、計画を犀川のほとりから手前の西金沢駅(後の白菊町駅:現在は廃止)までに短縮。野町駅から西金沢(白菊町)駅までは同年中に開業しました。白菊町駅は野町駅よりは香林坊に近いですが、やはり川を渡らなければいけない位置にありました。
同区間は1972(昭和47)年に廃止(旅客営業はその2年前に終了)され、以降は野町が始発駅になっています。
野町駅。現在は終点だが…(大藤碩哉撮影)。
では、昔から市中心部へアクセスする手段はなかったのかというと、そうではありません。北陸鉄道は金沢市内線という路面電車を運行しており、これが野町駅に接続していました。最盛期には、野町駅前から香林坊や武蔵ヶ辻を経由する系統も運行されており、決して「ポツンと始発駅」ではありませんでした。
しかしモータリゼーションに伴う赤字や交通渋滞などの影響により、路面電車は1967(昭和42)年2月までに全廃されています。
つまり現在の野町駅は、廃線により接続を失い取り残された結果というわけです。もし検討会で挙がった一案「香林坊延伸」が実現すれば、半世紀以上の時を超えて、市中心部直通が復活することになります。