「用賀」の地名の由来は「ヨガ」だという説、本当なのでしょうか。「用賀でヨガ」そこに妙な引力を感じなくもありません。

用賀の由来は「ヨガ」、鎌倉時代にさかのぼる?

 世田谷区の西側、東急田園都市線の「用賀」駅、アルファベットで「YOGA」。その地名の由来は他でもなく、あの「ヨガ」だとする説があります。


東急田園都市線の用賀駅(乗りものニュース編集部撮影)。

 いまでは街なかにエクササイズとしてのヨガスタジオなども多いですが、ヨガはもともと、瞑想を主体とした古代インドの伝統的な宗教行法で、サンスクリット語の「ユガ」、漢字で「瑜伽」に由来するとされます。用賀の地名は、これに関わりがあるとされ、用賀商店街のウェブサイトで次のように解説されています。

「鎌倉時代初期に勢田郷に瑜伽(梵語:ユガ)の修験道場が開設され、後に真福寺の所有となったことからこの梵語「瑜伽:ユガ」がヨーガの地名となったといわれています」

 ただ2023年現在、世田谷区はウェブサイトでこの説をハッキリ否定しています。

「『鎌倉時代の初期、勢田郷にユガ(=ヨガ)の道場が開設されたのが、用賀の由来』という説が巷間に流布しているが、『鎌倉時代初期にヨガの道場、云々』という事には、然したる根拠がなく、事実とは認めがたい。したがって、用賀の地名の由来については不明である」(世田谷区ウェブサイト 地名の由来(瀬田・玉川・用賀・上用賀・玉川台))

 世田谷区立郷土資料館に聞くと、「古い地名の由来は基本的に、正確にわかるものではない」としたうえで、資料上で用賀の地名が初めて登場するのは17世紀、彦根藩領として用賀村の記載がある、と教えてくれました。

住民は「知らない」 それでもなぜか増えている「用賀でヨガ」

「用賀の由来が『ヨガ』……知らなかった」。用賀に生まれ育って30年以上という男性もこう話しました。現地でもやはり、そのような由来書きなどは見られません。

 商店街ウェブサイトで紹介されていた真福寺はいまも用賀にあり、山門にはズバリ「瑜伽山」との山号額が。ただ寺の由来書きを見ると、創建は「永禄元亀(1558〜1572)の頃」とあるので、鎌倉時代初期とは合いません。加えて、もとは「実相山」という山号で、「瑜伽山」に改めたのは1946(昭和21)年のことだそうです。


旧大山道から真福寺の山門(奥)を望む(乗りものニュース編集部撮影)。

 すぐ近くにある用賀商店街振興組合の事務所で尋ねてみると、「由来? ほら瑜伽山、行かれました?」といわれましたが、やはり「諸説あるみたいですけどね」とも。とはいえ、商店街ではこの地名のゆかりから「用賀でヨガ」と題したヨガ講座を10数年行ってきたといい、最近では真福寺もヨガ教室を開いているといいます。

 地名の由来は不明と言わざるを得ないものの、なぜか用賀周辺には近年、ヨガスタジオやジムも多くできているようです。「用賀でヨガ」という言葉に何らかの引力めいたものを感じなくもありません。