ツアーの水陸両用車がWW2の軍用車両!? 災害時に本領発揮したボストン名物とは
マサチューセッツ州の州都ボストンは、水陸両用車を使ったツアーでも知られます。その車両は長らく、第2次世界大戦中にアメリカ軍で使われたものでした。現在はそのレプリカが、ツアーで運用されています。
歴史の町ボストン
日本人メジャーリーガーの吉田正尚選手が所属する大リーグチーム「ボストンレッドソックス」の本拠地、アメリカ東海岸のボストンの歴史は古く、1600年代にイギリスからの入植者により町が築かれました。その後、アメリカの各植民地と本国イギリスとの関係が悪化したことに端を発するボストン茶会事件やアメリカ独立宣言など、アメリカ史上の数々の大きな出来事の舞台になりました。
ボストンダックツアーで使われる、第2次世界大戦でアメリカ軍が使用していた水陸両用車「DUKW(ダック)」のレプリカ。ただし2014年までは、実物が現役だった(稲葉義泰撮影)。
そんな歴史の町ボストンでは、数々の歴史的な建造物などを巡るツアーが大人気ですが、なかでも一風変わっているのが「ボストンダックツアー」です。水陸両用車で街中を観光した後、チャールズ川に入水し、こんどは川から町の景色を楽しむといものですが、車両が珍しいことでも知られていました。第2次世界大戦でアメリカ軍が使用していた水陸両用車の「DUKW(ダック)」を、最近まで運用していたのです。
DUKWは、アメリカのゼネラル・モーターズ社製の水陸両用車で、陸上では80km/hでの走行も可能であったほか、水上でも10km/hという航行速度を誇りました。こうした優れた性能を有していたこともあり、DUKWはノルマンディー上陸作戦をはじめとした数多くの戦場に投入されました。
1994(平成6)年に開始されたこのボストンダックツアーでも、当初は第2次世界大戦時に製造された実物のDUKWが使用されていました。しかし、さすがに整備に手間がかかるほか、部品の入手も困難になってきたこともあって、2000年代に入ると徐々に精巧なレプリカへと置き換えられていきました。そして、2014(平成26)年には最後の実物車両が引退し、以降はバイオディーゼル燃料で走行するレプリカ車両へと完全に統一されました。
このDUKW、市内の観光だけでなく、災害時にもその性能を活かして大活躍しています。2010(平成22)年、マサチューセッツ州を流れるサドバリー川が氾濫し、ボストンの西側にある町、ウェイランドが洪水被害に見舞われました。そこで、ボストンダックツアーのDUKWが救助にあたり、浸水した町から住人を救出したのです。
ボストンダックツアーでは、ガイドによる巧妙な話術と相まって、今日もボストンの町に笑顔をもたらしています。