鉄道駅の駅名は、たいていの場合その駅がある地名や周囲の施設名などを冠しています。しかし中には、そのパターンと思いきや異なっているケースも少なくありません。実は都内にも複数個所あります。

区名と矛盾する駅名も!?

 鉄道駅の駅名は、たいていの場合その駅がある地名や周囲の施設名などを冠しています。しかし中には、そのパターンと思いきや異なっているケースも少なくありません。実は都内にも複数個所あります。


JR山手線の鶯谷駅(乗りものニュース編集部撮影)。

【豊島園駅】
 西武豊島線、都営大江戸線の2路線が通るこの駅、名前から豊島区にあると思われがちですが、実は練馬区にあります。地名をひも解くと、かつてここは北豊島郡に含まれていました。しかし、由来は別のところにあります。

 室町時代の15世紀末後半に関東近傍で内乱が起きましたが、その時に砦のひとつとして築かれたのが練馬城です。江戸城の築城にも携わった太田道灌が鎮圧に出向き、この城を落としたそうです。当時の城主は豊島氏で、これが公園名の由来となりました。

 東京都はこの地を防災拠点として「練馬城址公園」に指定し整備。一部がハリー・ポッターのテーマパーク「ワーナー ブラザース スタジオツアー東京」になっています。

【目黒駅】
 JRだけでなく東急方面への玄関口へのひとつであるこの駅、実は目黒区ではなく品川区に存在します。

 目黒駅は丘陵上に位置し、そこから西側は行人坂や権之助坂で一気に標高を下げていきます。その低地が目黒区であり、目黒を冠するエリアが広がっています。

 ここには護国院瀧泉寺、またの名を「目黒不動」があり、古くから参詣の対象として賑わいました。駅名が本来の地名である「上大崎」ではなく目黒が選ばれたのも、この参拝先最寄り駅としての知名度が優先されたのかもしれません。

駅名「食い違い」の背景とは

【品川駅】
 東海道新幹線の第二のターミナルであり、JRや京急などが発着するこの駅は、品川区ではなく港区に存在します。

 品川駅が開業したのは1872年(明治5)年6月で、仮開業時のターミナル駅でした。当時は住居表示などきちんとした地名の体系化が行われておらず、「芝高輪南町」「芝二本榎西町」などの小さい町名がひしめく場所でした。それよりは、南側にあった東海道の宿場「品川宿」のほうが全国的に地名が圧倒的に高いことから、駅名に選ばれたのかもしれません。

 ちなみに、京急の北品川駅は品川駅の南側に位置するという、なんともややこしいことになっています。しかし地名の由来は「品川宿の北側」であり、問題はありません。国鉄が近くの有名地名を駅名に採用したことで食い違いが生じた例です。

【東武練馬駅】
 池袋駅から7駅目にある、東武東上線の駅です。この駅の所在地は練馬区ではなく板橋区です。駅のすぐ南側に、両区の境界が引かれています。

 実は練馬区は1947(昭和22)年に板橋区から分離する形で生まれた、東京で一番歴史が浅い区。東武練馬駅は16年前にすでに開業しており、区名は駅名の由来に関係ありません。

 関係したのは、南側にあった「練馬町」という町で、東上線にとっては街への玄関口ということをアピールするために、駅の所在地である「徳丸」よりも優先したとしています。駅の開業からわずか2年後に練馬町は合併で消滅しますが、練馬北町・練馬南町・練馬仲町という地名に残されました。

【鶯谷駅】
 山手線の中でも珍しい、他社線との乗り換えが無い駅です。所在地は台東区根岸で、鶯谷という地名はこれまで公式に存在したことが一度もありません。「なんとなくあのあたりは鶯谷地区」と呼ばれていたのを駅名に採用したようです。

 地名の由来は、単に「ウグイスがそこに多く住んでいたから」というもので、その発祥は17世紀末ごろ、上野寛永寺の住職が京都から3500羽のウグイスを連れてきて放ったとも言われています。