スターフライヤーが運航開始した新型機「A320neo」。この機は、これまでのスターフライヤー機とは全く異なる新客室仕様が採用されています。従来機と比べてどのような違いがあるのでしょうか。

機番は「JA28MC」

 北九州を拠点とする航空会社、スターフライヤーが2023年7月4日より、新型機エアバス「A320neo(機番:JA28MC)」を定期便へ就航させました。この機は従来のスターフライヤー機とは全く異なる新たな客室仕様が採用されています。どのような変化があったのか、実際に乗ってみました。


スターフライヤーのA320neo(乗りものニュース編集部撮影)。

 従来のスターフライヤー機といえば、福岡県を中心に国内線をメインとしたネットワークを展開しているものの、全席に個人モニターや電源コンセントを他社の国内線仕様機に先駆けて導入。また、他社国内線機と比べて座席のシートピッチ(前後間隔)も広く、フットレストを備えたソファのような、黒の革張りのシートを特長としていました。

 今回スターフライヤーで運航開始したA320neoは、同社の主力機である「A320シリーズ」の新たな派生型で、従来機のA320ceoと比較し、エンジンを換装することなどで、消費燃料が約20%、騒音影響が約50%、それぞれ削減が図られるといいます。

 スターフライヤーは、この新型機に合わせ客室仕様を変更し、新型シートを採用しました。

 新シートは従来よりも薄型で、個人モニターが全廃されているかわりに、スマートフォン・タブレットホルダーが設置されています。その一方で、素材などは異なるものの、「黒の革張り」のシートコンセプトは踏襲され、フットレストも設置されています。

 また、全席に電源コンセント、USBポート、そしてタイプCのUSBポートと、3種類の電源設備を装備。タイプCが設置されているのは、このシートの先進的なポイントのひとつでしょう。

スターフライヤー新型機、実際に乗ってみた

 スターフライヤーのA320neoでは、同社では初となる、機内の無料Wi-Fiが設置されました。これにより機内での過ごし方は、座席の個人モニターで番組などを見るスタイルから、自分のスマートフォンでSNSなどを見るというものに変わっています。ちなみに、離陸前の機内の安全説明については、ロボット型キャラクター「スターフライヤーマン」をテーマにした安全ビデオを放映していましたが、A320neoでは、CA(客室乗務員)による実演に変更されています。

 Wi-Fiの通信速度について同社の担当者は「国内の航空会社では最も早い通信がご提供できるのでは」とアピール。この日の通信速度を計測したところ、下り(ダウンロード)が0.1mbpsとなっており、動画は見られないものの、SNSを使う、メールを返信するといった目的であれば十分対応できるものでした。


スターフライヤーのA320neoに搭載された機内Wi-Fiへの接続画面。

 大きく変わったシートの座り心地はどうでしょうか。従来機のような「ソファ感」はかなり薄れ、かつてよりも固めの座面でいかにも”現代風”のシートですが、硬さはそれこそ”好みによりけり”でしょう。同社の担当者によると「中長距離国際線で使うシートを国内線で使っている」とのことで、やはり一般的な国内線仕様機とは一線を画すゴージャスさです。

 たしかにシートリクライニングもかなり倒れますし、他社の国内線仕様機と比べると「寝られる」座席に仕上がっています。シートピッチは最大35インチ(約89cm)とのことで、これは国内最大級の足元スペースとしています。機内を見渡せば、他社機ではできないような体勢で過ごしている人もいましたが、広さゆえか、しっかり自席のなかで納まっていました。

 このほか、同社のA320neoでは、同型式としては国内で初めて、エアバスの新客室構成である「AIRSPACE」を導入。従来機より60%以上大きい頭上荷物棚、フルLED照明、タッチレス方式の「流す」ボタンや抗菌加工を施した化粧室などが設置されています。また先述のとおりエンジンも静音化が図られており、機内も非常に静かです。

 なお、同社のA320neoは羽田〜北九州・福岡線を中心に運航される予定といいます。今後同社のA320neoは、今回就航した初号機「JA28MC」のほか、2機が導入される予定とのこと。また、このほかに2機のオプション契約(A320neoの派生型も含む)も保持しており、最大で5機体制となる見通しです。