意外と知られていない? 「不整脈」はどんな病気? 原因&対処法を医師に聞く
「不整脈」という言葉を聞いたことがある人は、多いのではないでしょうか。不整脈は脈拍が乱れる病気で、主に動悸(どうき)や息切れといった症状が出るほか、放置すると心不全や脳梗塞などを引き起こす可能性があるといわれています。
そもそも、なぜ不整脈を発症してしまうのでしょうか。原因と対処法について、TCB東京中央美容外科の総括院長で、心臓血管外科医としての勤務経験もある、医師の寺西宏王(てらにし・ひろお)さんに聞きました。
症状は「徐脈」「頻脈」「期外収縮」
Q.そもそも、不整脈とはどのような病気なのでしょうか。不整脈の主な症状や原因について、教えてください。
寺西さん「不整脈とは、『脈が遅い』『脈が速い』『脈が不規則』といった症状を指し、脈が1分間に50以下の場合は『徐脈』、100以上の場合は『頻脈』とそれぞれ呼ばれています。
不整脈には病的な不整脈と生理的な不整脈があります。一般的に、脈拍が1分間に40以下になると、息切れや目まいなどの症状が出やすくなり、病的な不整脈の可能性があります。また、脈が120以上になった場合も病的な不整脈の可能性があり、動悸や息切れ、胸痛、目まい、失神といった症状が出ることがあります。
脈が不規則となる『期外収縮』は、加齢とともに増加しますが、期外収縮の数が少ない場合は無症状のことも多く、生理的な不整脈と言えます。ただ、『3回に1回』『5回に1回』といったように、頻繁に脈が飛ぶ場合は、病的な期外収縮の可能性があるので注意が必要です。
不整脈の原因として、高血圧症や肺疾患のほか、甲状腺疾患による心臓への負荷増大や一部薬剤の使用が挙げられます。また、ストレスや睡眠不足、過労、喫煙、アルコールの過剰摂取などは、交感神経を刺激して心臓の電気信号の発生に異常を及ぼすため、不整脈の原因となることがあります。このほか、肥満の人には不整脈が多いことが知られています」
Q.不整脈を放置すると、どのようなリスクがあるのでしょうか。
寺西さん「不整脈により脳血流が低下すると、失神が起きることがあります。その際、そのまま転倒すると受け身を取ることができず、生命に関わるような重症外傷につながる可能性があります。
また、脈が異常に速かったり遅かったりする状態を放置した場合、心臓に負荷がかかって心不全に至る可能性があります。また、放置することで、死に至る不整脈や脳梗塞のリスクにつながる不整脈などにかかる可能性があり、不整脈の種類に応じた治療が必要になることがあります」
Q.不整脈は、治る病気なのでしょうか。それとも、完治が難しい病気なのでしょうか。
寺西さん「不整脈の種類によって治療方法は大きく異なりますが、現在、ほとんどの不整脈は治療が可能となりました。軽度なものだと、禁煙や禁酒、運動、栄養バランスの取れた食事、睡眠など、生活習慣の改善に取り組むことで症状が治まるケースが多いです。
病的な不整脈で自然治癒が期待できない場合は、治療が必要になります。不整脈の治療法として、薬物治療やカテーテルアブレーション治療のほか、主にペースメーカーを使うデバイス治療などがあります。
薬物治療の場合、不整脈を抑える抗不整脈薬のほか、ストレスや不安を和らげる安定剤が使われたり、不整脈の種類によっては、脳梗塞の予防のための抗血栓薬が使われたりすることがあります。
カテーテルアブレーション治療は、脈が速い頻脈の治療に使われ、異常な電気信号を起こす心臓内の組織を直接焼いたり、冷凍凝固したりする方法です。不整脈の要因を直接的に治療するため、完治できる場合があります。
脈が遅い徐脈の場合、心臓の筋肉に電気信号を与え、人工的に心臓を動かすことで拍動のリズムを補助するペースメーカー治療が行われます。また、生命に関わる致死的な不整脈による突然死を防ぐため、植え込み型除細動器を使用することがあります。
このように不整脈の種類に応じて適切な治療を行うことで、不整脈の多くは治療で治癒・管理ができるようになりました」
Q.不整脈を防ぐためには、どのような取り組みが大切なのでしょうか。
寺西さん「交感神経が刺激されると脈拍・血圧が上がるため、心臓に負担がかかります。その結果、心拍が乱れやすくなり、不整脈に至る可能性があります。
先述のように、交感神経は過労やストレス、睡眠不足、喫煙、アルコールなどで刺激されることがあるため、それらを避けることが不整脈の予防につながります。特に、たばこに含まれるニコチンは、血管を収縮させて血圧を上昇させるため、心臓に負担がかかり、不整脈のリスクを高めます。
バランスの良い食事を摂取し、規則正しく生活することで、疲労を蓄積させず、自律神経の乱れを防ぐことが可能です。
不整脈の人は過度な運動を避ける必要がありますが、適度な運動は全身の血行を促進し、血圧を下げる効果があるため推奨されています。筋肉の緊張をほぐして自律神経を整える効果もあります。ウオーキングや水泳、サイクリングなどの有酸素運動がお勧めです。
ただ、適切な運動の負荷には個人差があるため、不整脈の人が運動する場合は、まずはかかりつけ医に相談すべきでしょう」