糖尿病は「痩せたら治る」って本当なの? 糖尿病歴30年の専門医に“真偽”を聞いた
糖尿病について、「痩せたら治るの?」という疑問を持っている人は少なくないのではないでしょうか。確かに、糖尿病は体重や体形との関係が取り沙汰されることが多い病気ですが、実際のところ、糖尿病は「痩せる」ことで治る病気といえるのでしょうか。自身も1型糖尿病歴30年で、著書に「血糖値を自力で下げるやり方大全」(フォレスト出版)がある、内科医・糖尿病専門医の市原由美江さんに聞きました。
痩せても「治ることはない」けれど…
Q.糖尿病と体重・体形には、どのような関連性があるのですか。
市原さん「肥満があると、糖尿病を発症する可能性は高くなります。肥満により内臓脂肪が増加し、脂肪肝によりインスリンの効き目が悪くなる『インスリン抵抗性』が起こるので、血糖値を下げるために過剰なインスリンが分泌されます。過剰なインスリンで血糖値が調整できるうちはいいのですが、次第に血糖値が制御できなくなり、糖尿病へと進展します」
Q.ずばり、糖尿病は「痩せたら治る」のでしょうか。
市原さん「痩せても糖尿病が治ることはありません。一方で、痩せると血糖値は改善します。そもそも、糖尿病に至るまでの期間、過剰なインスリン分泌を強いられることで膵臓(すいぞう)は酷使され、疲弊しています。しかし、体重を減らしてインスリン抵抗性を改善することで、血糖値は改善する可能性が大いにあるのです。
食事の内容や量に注意したり、運動を積極的にしたりすることで減量することが多いですが、これは血糖値を下げる行動でもあります。体重と血糖値は比例することがほとんどなので、過体重であれば減量をお勧めします」
Q.糖尿病と体重・体形の関わりについては、まだまだ誤解されている部分も多いと思われます。
市原さん「肥満だと糖尿病の発症リスクが高くなるのは確かです。ただし逆に、痩せていても糖尿病を発症する人は少なくありません。これは、糖尿病の家族歴がある人は遺伝的に痩せていても発症するためです。
最近、注目されているのは、筋肉量の少ない痩せた女性の糖尿病発症リスクが高いという事実です。糖尿病の家族歴がある人は、『痩せているから』といって油断は禁物です。筋肉は血糖値を下げるために欠かせないものなので、積極的に運動を心掛けましょう」