風邪? アレルギー? 梅雨に「せき」「鼻水」が出るのはなぜ? 医師に聞く
梅雨の時期になると、せきや鼻水などの症状に悩まされる人がいるようです。実際にSNS上では、「梅雨の時期はせきが止まらない」「梅雨なのに鼻水が止まらない」「梅雨時期に、気管支系の不調が出やすい」などの声が上がっています。
梅雨にせきや鼻水などの症状が出るのはなぜでしょうか。医療法人社団三橋医院理事長で、循環器内科専門医の藤井崇博さんに聞きました。
カビやダニが原因の可能性も
Q.梅雨の時期になると、せきや鼻水などの症状が出る人がいるようですが、なぜでしょうか。考えられる原因について、教えてください。
藤井さん「梅雨の時期にせきや鼻水が出るのは、単純に風邪をはじめとした感染症が原因であることが多い一方、喉や鼻は気候による環境の影響を受けることも多くあります。例えば、梅雨に高温多湿の状態が長期間続くと、室内にカビやダニが発生しやすくなります。そのため、この時期は、カビやダニによるアレルギー性の鼻炎や気管支ぜんそくを発症する可能性が考えられます」
Q.では、梅雨の時期にせきや鼻水などの症状が続く場合、どのように対処したらよいのでしょうか。医療機関を受診する目安も含めて、教えてください。
藤井さん「せきや鼻水などに加えて、目のかゆみの症状が出た場合、市販薬を使用して様子を見てもよいと考えます。ただ、症状が1週間以上続く場合や、日を追うごとに症状がひどくなってきた場合は、基本的に医療機関で医師の診断を受け、適切な治療を始めるのがよいでしょう。そうすることで、早期の症状の改善につながると考えます。
カビやダニなど、ぜんそくやアレルギー性鼻炎を引き起こす『ハウスダウト』は、血液検査でアレルゲン(アレルギーの原因となる物質)かどうかの判定ができるため、毎年、梅雨の時期にせきや鼻水、目のかゆみなどの症状が出る場合は、一度アレルギー検査を受けるとよいかもしれません」
Q.カビやダニなどのハウスダストが原因で症状が出る場合、症状を緩和させることは可能なのでしょうか。
藤井さん「カビやダニが原因で症状が出ている場合は、アレルギー性の疾患である可能性が高いため、医療機関を受診した上で、抗アレルギー薬などを処方してもらうことで症状の緩和が期待されます。ダニについては、『舌下免疫療法』という完治を期待できる治療が保険適用で受けられるようになっています。
舌下免疫療法は、基本的に3年から5年ほど継続して行います。おおよその治療費ですが、初回は保険適用(3割負担)で4000〜5000円ほどかかります。その後の定期的な費用は、診察代と薬代を合わせて1カ月当たり2000〜3000円ほどです。実際の費用は、医療機関や医師個人の治療方針によって異なるため、事前に医師に確認するとよいでしょう。
また、カビやダニが発生しやすい高温多湿な室内環境を改善する工夫が必要になってきます」
Q.梅雨の時期に出るせきや鼻水を放置した場合、どのようなリスクが生じる可能性があるのでしょうか。
藤井さん「梅雨の時期に出るせきや鼻水を放置した場合、重症化する可能性はあります。例えば、アレルギー関連の疾患である気管支ぜんそくは重症化すると命に関わるため、注意が必要です。また、症状がアレルギー性の疾患によるものではない可能性もあり、その場合は適切な検査や治療が必要で、放置すれば重症化する可能性は十分にあります。
アレルギー性疾患として毎年同じ時期に症状に苦しむケースや、年間を通して症状が出るケースがあるため、繰り返しにはなりますが、日常的にせきや鼻水、目のかゆみが出やすい人は、医療機関でアレルギー検査などを受けるのをお勧めします」
【参考文献】
Gennaro D’Amato et al.The effects of climate change on respiratory allergy and asthma induced by pollen and mold allergens.Allergy. 2020 Sep;75(9):2219-2228.