健康診断で「不整脈」と診断される原因は?

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 動悸(どうき)や息切れなどの症状がないにもかかわらず、健康診断の心電図検査で「不整脈」と判定されることがあります。ただ、不整脈と判定された人の中には、翌年以降に再度検査を受けたところ、「異常なし」と判定されるケースもあるようです。

 なぜ健康診断で不整脈と判定されることがあるのでしょうか。もし不整脈と判定された場合、すぐに医療機関を受診すべきなのでしょうか。TCB東京中央美容外科の総括院長で、心臓血管外科医としての勤務経験もある、医師の寺西宏王(てらにし・ひろお)さんに聞きました。

生理的な不整脈が検出されることも

Q.自覚症状がないにもかかわらず、健康診断のときに「不整脈」と判定されるケースがあるようです。そもそも、なぜ不整脈が出るのでしょうか。

寺西さん「不整脈には病的なケースと生理的なケースの2つがあります。『脈が遅い』『脈が速い』『脈が不規則』といった状態を指し、例えば、脈が1分間に50以下の場合は『徐脈』、100以上の場合は『頻脈』といわれており、病的な不整脈に分類されることが多いです。一方、脈が不規則となる『期外収縮』の多くは生理的な不整脈で、30歳を過ぎるとほぼすべての人に認められます。

健康診断での心電図検査では、一般的に5〜10秒程度、心臓の拍動が記録されます。心電図の記録中に期外収縮が生じた場合は、健康な人の生理的な不整脈であっても、不整脈と診断されることがあります。

一方、病的な不整脈であっても、種類によっては発作的に出現するものがあり、健康診断での心電図検査では検出できない場合があります。このような種類の不整脈を検出するには、『24時間ホルター心電図』などの精密検査が必要になる場合があります。

このように、健康診断での心電図検査は記録時間が短いため、不整脈が検出されたり検出されなかったりします。そのため、健康診断を受ける年によって結果が異なる可能性があるのです」

Q.もし健康診断などで不整脈と判定された場合、どのように対処すればよいのでしょうか。注意点について、教えてください。

寺西さん「不整脈と判定された場合、病的な不整脈の可能性を想定し、できるだけ早めに専門医への相談をお勧めします。特に脈が不規則で、目まいやだるさ、動悸、息切れ、失神、胸部の痛み・不快感などを伴う場合は必ず受診してください。自己判断で様子を見たり、受診のタイミングを決定したりするのは非常に危険です。

もともと健康診断は『スクリーニング検査』と呼ばれ、明らかな症状がない人に対して病気の可能性があるかどうかを調べるために行う検査です。健康診断で評価できるのは不整脈のごく一部であり、その重症度を評価するものではありません。

また、不整脈は必ずしも自覚症状と重症度が一致するとは限りません。無症状であっても生命に関わるような重篤な不整脈が隠れている可能性があります」

Q.では、不整脈を放置すると、どのようなリスクがあるのでしょうか。

寺西さん「不整脈の種類にもよりますが、代表的なリスクとして失神があります。不整脈により脳血流が低下すると失神が起こることがあり、そのまま転倒すると受け身を取ることができず、生命に関わるような重症外傷につながる可能性があります。

失神以外にも、脈が異常に速かったり遅かったりする状態を放置した場合、心臓に負荷がかかって心不全に至る可能性があります。このほか、放置することで死に至る不整脈や、脳梗塞のリスクにつながる不整脈などにかかる可能性があるため、不整脈の種類に応じた治療が必要になることがあります」