スシロー“湯飲みペロペロ少年”に6700万円賠償請求…子に「ネットリテラシー」身に付けさせるには? 親に必要な“心構え”、専門家解説
1月に回転ずしチェーン「スシロー」の店内で、少年が備え付けの湯飲みやしょうゆボトルをなめるなどの迷惑行為をし、その様子を撮影した動画がSNS上に投稿された問題について、運営会社のあきんどスシロー(大阪府吹田市)が少年に対し、約6700万円の損害賠償を求めて大阪地裁に提訴していたことが明らかとなりました。報道によると、この動画を撮影したのは、少年の友人といわれています。
子どもがネット上で不適切な行為をしないためにも、親は、ネットを正しく運用する能力、いわゆる「ネットリテラシー」を身に付けさせる必要がありますが、そのためにはどのように対処したらよいのでしょうか。家族や教育、子どもの問題に詳しい、ジャーナリストの石川結貴さんに聞きました。
親の「ネットリテラシー」が不十分
Q.そもそも、子どもが不適切な内容の動画をSNS上に投稿してしまうのはなぜでしょうか。不適切動画の投稿が発覚する背景も含めて、教えてください。
石川さん「主に仲間内で悪ノリしたり、ウケを狙ったりするためです。彼らは、『不適切動画をSNS上に投稿したらどうなるのか』を想像できていません。
また、テレビでお笑い芸人が度を超えた悪ノリをしたり、迷惑系YouTuberと呼ばれる人たちがネット上で『ごみを路上にばらまく』などの過激な動画を投稿したりすることも影響しているかもしれません。実際に、こうした動画を見た子どもたちが、『俺もやっていいんだ』と考えてしまうことがあります。
SNSでは、投稿から24時間経過すると自動的に投稿内容が消えたり、『鍵アカ』や『サークル』など、特定の人にしか投稿内容が公開されない、閉じた仲間内だけで交流できたりする機能があります。不適切動画の投稿が発覚・炎上する原因として、こうした機能を使い、自分たちの仲間にだけ動画を公開していたものの、何らかの原因で外部に流出してしまったことが考えられます」
Q.以前に比べて、不適切な内容の動画が、SNS上でより炎上しやすくなった印象がありますが、なぜでしょうか。
石川さん「情報の受け取り側の意識が変わっているためです。誰もが自分の意見を発信しやすくなり、そこに同調してくれる人とのつながりも簡単に持てるようになっています。
先述のように、テレビやネットではお笑い芸人やYouTuberが非常識な言動や行き過ぎた悪ノリをすることがありますが、こうした行為を不快に思う人たちも当然ながらいます。
こうした人たちが自分の考えや感情をネット上で発信すると、同じような意見を持つ人たちと集団化しやすくなります。根底には『ふざけたヤツを正したい』という正義感があるのですが、場合によってはその正義感が強くなり過ぎ、『何がなんでも許せない』『懲らしめてやりたい』などと、『不謹慎狩り』のような形になったりします。そのため、不適切な行為をした人に対するバッシングが過激化する傾向にあります」
Q.子どもにネットリテラシーを身に付けさせるには、親はどのように対処したらよいのでしょうか。
石川さん「まずは、親自身がネットリテラシーを身に付ける必要があります。しかし、実際には、ネットリテラシーどころか、子どもにスマホを与えたら与えっ放し、後は子ども任せにして放置してしまう親も多いです。
多くの親は、ネットの危険性やネットの正しい使い方をよく分かっていない上に、きちんと知ろうともしないため、十分なネットリテラシーが身に付いていません。その結果、子どもがネット上で何をやっているのかを十分に把握できず、具体的な対策ができない状態となっています」
Q.親がネットの危険性やネットの正しい使い方を学ぶ方法について、教えてください。
石川さん「ネット上で『ツイッター 危険』『インスタグラム トラブル』と検索すると、危険な使い方やトラブル事例などが多く出てきます。まずはそれらを参照し、ネット上にはどのような危険性があるのかを理解してください。
その上で、ネットの危険性などについてまとめた資料を入手しましょう。都道府県によっては、役所などで冊子を配布しています。文部科学省や警察庁なども、ホームページ上でネットの危険性やネットの正しい使い方に関する資料を公表しています」
Q.子どもにネットの危険性を伝えるには、どうしたらよいのでしょうか。
石川さん「『不適切な内容の動画を投稿したらダメ』『ネットは危険』と口で伝えるだけでは効果がありません。入手した冊子やネット上の資料などを子どもに直接見せてください。そして、SNSの名前などを挙げて、実際にトラブルが発生していることをはっきりと伝えてください。その際、『トラブルが発生しているが、どう思う?』と問いかけ、子どもと一緒に考えてみましょう」
Q.子どもがネットを正しく使おうとしない場合、スマホを取り上げたり、使用時間を厳しく制限したりしてもよいのでしょうか。
石川さん「子どもにとって、スマホは生活に欠かせないツールとなっています。そのため、スマホを取り上げようとしたり、『スマホの使用は1時間』と制限したりしても、子どもの現実に即したルールではないため、あまり効果がありません。かえって親子関係がこじれるだけです。
先述のように、まずは親がネットの危険性やネットの正しい使い方を理解しましょう。その上で、子どもと何度も対話を重ね、親子で一緒に考えられるような関係性を築くことが大切です」