トラブルに発展したケースも…「歩道で自転車のベルを鳴らす」は違法? 弁護士に聞く
自転車に乗った人が歩道を走行する際に、注意喚起のために近くの歩行者にベルを鳴らすことがあります。ただ、中には、ベルを鳴らしたことで歩行者とトラブルに発展したケースがあり、注意が必要です。SNS上では「ベルを鳴らすのはダメ」「歩道で自転車のベルを鳴らされるのは不愉快」といった意見が上がっています。
そもそも、自転車に乗った人が歩道を通る際に歩行者に対してベルを鳴らした場合、法的責任を問われる可能性はあるのでしょうか。芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。
道路交通法違反に該当
Q.そもそも、自転車に乗った人が歩道を通ってもよいのでしょうか。
牧野さん「道路交通法では、自転車は『軽車両』とされているため(2条11号)、歩道と車道の区別のある道路において、原則、車道を通行しなければならないと定められています(17条第1項)。違反すると『3月以下の懲役、または、5万円以下の罰金』に処される可能性があります(117条の2の2第1項8号)。
ただし、道路標識などにより、歩道を通行することができるとされている場合(63条の4第1項1号)や車道や交通の状況に照らして、自転車の通行の安全確保のため、歩道を通行することがやむを得ない場合などは、自転車で歩道を走ることができると定められています(63条の4第1項3号)」
Q.自転車に乗った人が歩道を通る際に、近くの歩行者に対して注意喚起のためにベルを鳴らすことがあります。この行為は、法的責任を問われる可能性があるのでしょうか。
牧野さん「自転車のベルは、法律上で『警音器』と呼ばれています。道路交通法では、危険防止の目的以外で、警音器を鳴らしてはいけないと定められています(54条第2項)。道路交通法で危険防止のためにベルを鳴らせるのは、主に以下のケースです」
・「警笛鳴らせ」の道路標識がある場合
・見通しが悪い場所を通行する場合
・歩行者が自転車に気付かず飛び出してきた場合
自転車の進行方向をふさぐ歩行者にどいてもらうためにベルを鳴らすことは、危険防止のためベルを鳴らす行為に該当せず、道路交通法に違反することになります。この場合、2万円以下の罰金または科料が科される可能性があります(121条9号)。ただ、実際に歩道で自転車のベルを鳴らしたことで、罰金や科料が科されたケースは、ほとんどありません」
Q.自転車に乗った人が、歩道を走行する際に前に歩行者がいた場合、どのように対応すべきなのでしょうか。
牧野さん「横断歩道などでは『歩行者優先の原則』があるため、自転車の走行時に歩行者にぶつかりそうになった場合、ベルを鳴らして歩行者にどいてもらうわけにはいきません。この場合、自転車を引いて歩くべきです」
Q.自転車に乗った人が歩行者との間でトラブルに発展した際に、その様子を動画で撮影し、SNS上に投稿したケースがありました。この行為は、法的責任を問われる可能性があるのでしょうか。
牧野さん「相手の承諾なく、その人の姿を動画で撮影した場合、みだりに自己の姿を撮影されない権利である『肖像権』の侵害に当たる可能性があります。この場合、民事上の不法行為に基づく損害賠償請求を受ける可能性があります」