“蚊”に刺された! かゆくてガリガリ引っかく→感染症&難病発症のリスクがUP? 皮膚科医が解説
暑くなり、蚊が発生するようになりました。蚊に刺されたときに、ついかゆくて患部を引っかいてしまいますが、その場合、皮膚にどのような影響があるのでしょうか。感染症のリスクが増大する可能性はあるのでしょうか。肌クリニック大宮(さいたま市)院長で皮膚科医の相馬孝光さんに聞きました。
かゆみが増す
Q.蚊に刺されたときに患部を引っかいた場合、皮膚にどのような影響があるのでしょうか。
相馬さん「虫刺され、いわゆる『虫刺症』に限らず、一般的に皮膚をかくと、かえってかゆみを増長させてしまい、『かゆみの悪循環』を引き起こしてしまいます。
なぜかというと、皮膚をかくことで、その刺激により、かゆみを引き起こす成分である『ヒスタミン』などの分泌を促してしまうからです。その結果、かゆみが増してしまい、『かく→症状悪化→かく→症状悪化』の負のスパイラルに陥ってしまいます。
虫刺されの場合、特にこの傾向が強く、漫然とかいていると最終的には『痒疹(ようしん)』という、強いかゆみを伴う治りにくい皮疹(ひしん)を発症することがあります」
Q.では、蚊に刺された部分を引っかいた場合、感染症のリスクが増大する可能性はあるのでしょうか。
相馬さん「皮膚は、外部からの刺激や異物から体を守る『バリアー』の役割を果たしています。かくと皮膚のバリアー機能を損傷し、細菌などの外敵が侵入しやすくなってしまいます。従って、感染症のリスクが増大すると言えるでしょう。
虫刺されに限らず、かゆいときに皮膚をかくという行為は、かいているときは気持ちがよいですが、その間、皮膚は攻撃を受けている状態です。かゆくないときに皮膚をかくと痛みしか感じないはずです」
Q.蚊に刺されたときに患部がかゆい場合、どのように対処すればよいのでしょうか。
相馬さん「まずは『かかない』ことが大事です。必要であれば、市販薬を使っても問題ありません。『抗ヒスタミン剤』といったかゆみ止めのほか、『ステロイド外用剤』など、炎症を抑える薬を患部に塗ってもよいでしょう。
ただ、ステロイド外用剤の場合、効果の強さに応じて5段階にランク分けされており、年齢や部位によって使い分けなければなりません。薬に関する知識がないまま使用すると、薬の効果を十分に得られない可能性があります。
時間に余裕があれば皮膚科を受診し、医師から適切な治療・指導を受けるのをお勧めします」
Q.蚊にさされた後、患部の赤みや腫れがなかなか治まらないことがあります。この場合、どのような病気の可能性があるのでしょうか。
相馬さん「蚊による虫刺症の場合、注入された蚊の唾液に対して異常なアレルギー反応が生じるケースがあります。具体的な症状としては、『高熱』『肝機能障害』『リンパ節腫大』『刺された部分に水疱(すいほう)・血疱(けっぽう)が形成され、硬結、壊死、潰瘍が生じてしまう』などです。
このような症状が出た場合、原因不明の難病である『慢性活動性EBウィルス感染症』にかかっている可能性があります。このEBウィルス感染症は、将来的に血球貪食症候群やリンパ腫などを発症するリスクがあるため、診断された場合、将来にわたって注意深く経過を観察する必要があります」