食事中に“舌”をかんだ…放置しても大丈夫? 痛みが続く場合は? リスク&対処法を歯科医師が解説
飲食時に誤って舌をかんでしまうことがあります。痛みがすぐに治まるケースがほとんどですが、中には痛みが続くこともあります。舌をかんでしまった場合、放置しても大丈夫なのでしょうか。痛みが続く場合、受診を検討した方がよいのでしょうか。つのだデンタルケアクリニック(福岡市博多区)院長で歯科医師の角田智之さんに聞きました。
熱い飲食物を食べるときは要注意
Q.そもそも、舌を傷つけた場合、どのようなリスクが生じる可能性があるのでしょうか。
角田さん「舌を傷つけた場合、細菌感染のほか、食べ物をうまく飲み込めない『嚥下(えんげ)障害』、味覚異常などが生じるリスクがあるでしょう。口腔(こうくう)内には細菌が常在しているため、傷から細菌感染を起こすことはあります。ただ、傷の深さや幅によって異なり、比較的浅い傷の場合、感染リスクは低いと考えられます」
Q.では、飲食時に舌を誤ってかんでしまった場合の対処法について、教えてください。そのまま放置しても問題ないのでしょうか。それとも、何らかの薬を使用した方がよいのでしょうか。
角田さん「飲食時に舌を誤ってかんだ場合、それほど深い傷にならないことが多いので、そのまま放置しても問題ないでしょう。口腔内は粘膜で覆われており、常に唾液により湿潤状態のため、傷の治りは非常に早いです。治る過程で口内炎のような接触痛を伴うことがありますが、痛みが気になる場合は、通常の口内炎の治療と同様、ステロイド軟こうやレーザー照射が有効だと考えます。
ただし、顎をぶつけた際のはずみにより歯で舌を切ってしまったときなど、外部からの衝撃が原因で舌を傷つけた場合、傷が深くなり縫合が必要なケースが多いです」
Q.舌をかんでしまった後、痛みが数日続く場合、どうしたらよいのでしょうか。医療機関の受診を検討すべきなのでしょうか。
角田さん「舌をかんで痛みが続く場合は、細菌感染が疑われます。痛みとともに腫れがある場合は、要注意です。若い人であれば、傷は治っていきますが、高齢者で免疫機能が低下している場合は、感染により治癒までに時間がかかる場合があります。
目安としては、舌をかんだ後、1週間以上痛みが取れない場合のほか、痛みが日を追うごとにひどくなってきた場合や患部が腫れてきた場合、外部からの衝撃で舌をひどく傷つけた場合は、医療機関を受診してください」
Q.舌をかんでしまう以外に、日常生活でやりがちな舌を傷つける行為について、教えてください。
角田さん「舌をかんでしまう以外に日常生活で舌を傷つける可能性があるのは、ラーメンや揚げ物などを、極端に熱い状態のまま食べる行為です。このとき、舌だけではなく口腔内の粘膜もやけどをすることがあるので、食べるときは注意してください。
他には、『舌苔(ぜったい)除去のために、歯ブラシなどで舌をこすり過ぎる』『舌で歯を触る癖がある』『日中や就寝時に食いしばり、舌を歯の内側に押し付ける』などの行為も舌を傷つける恐れがあり、注意が必要です。
特に注意が必要なのは、“虫歯の放置”です。虫歯により歯が部分的にとがったり、詰め物をしている歯が虫歯で部分的に欠けたことで、詰め物の金属がむき出しになったりしたまま放置すると、舌の同じ部位を日常的に傷つけることになります。その場合、舌がんや腫瘍が発生するケースは少なくありません」
Q.ちなみに、「舌をかむと死ぬ」とよくいわれますが、本当なのでしょうか。
角田さん「確かに『舌をかむと死ぬ』といわれることがありますが、これは不可能ではないでしょうか。舌動脈は体内の組織を走行していますが、動脈に達する傷を自分でつけることは、激しい痛みを伴うため難しいと思います。仮に、動脈性の出血を起こしたとしても、失血死ではなく、出血による窒息や誤嚥(ごえん)性肺炎が原因の死亡が考えられます」