月面ロボット探査機などの宇宙ロボットを開発するスタートアップのGITAIが、第一生命保険や三菱UFJキャピタルなど複数のファンドから総額40億円の資金調達を行ったと発表しました。

Space Robotics Startup GITAI Raises US$30 Million in Funding | GITAI

https://gitai.tech/2023/05/24/space-robotics-startup-gitai-raises-us30-million-in-funding/

Japan’s GITAI raises $29 million for space robotics business - SpaceNews

https://spacenews.com/japans-gitai-raises-29-million-for-space-robotics-business/

Gitai wants to build a robotic labor force for the moon and Mars | TechCrunch

https://techcrunch.com/2023/05/24/gitai-wants-to-build-the-robotic-labor-force-for-the-moon-and-mars/

GITAIは宇宙で安全かつ安価な労働力を提供し、運用コストを削減することを目指しているスタートアップです。

技術の発展に伴い、イーロン・マスク氏が所有するSpaceXなど各国の民間企業が宇宙開発にこぞって参加している中で浮き彫りになってきたのが宇宙における労働力の確保という問題。人間を宇宙に送るのはコストがかかり、さらに船外で作業させるには危険が伴うため、人間に代わって作業を行うロボットの重要性が再確認されています。GITAIはこうしたニーズを満たすロボットの開発を進めている企業です。



GITAIの中ノ瀬翔CEOはBloombergのインタビューで「宇宙産業のボトルネックは急速に変化しています。SpaceXやBlueOriginといった巨大な宇宙企業が宇宙輸送の問題を解決しており、今やボトルネックは輸送コストから運用コストへと変化しています」と指摘。「SpaceXやBlueOriginが宇宙への輸送コストを100分の1にする一方で、私たちGITAIは人件費を100分の1にすることに挑戦しています」と表明し、宇宙で安全かつ手頃な価格の労働力を提供できることをアピールしています。

以下の動画で確認できるのが、GITAIが開発するロボット探査機「R1」です。この探査機は、模擬月面環境とモハーヴェ砂漠での実証実験において起伏の多い地形を移動して障害物を乗り越える能力や、ソーラーパネルを組み立てる能力、資源を抽出する能力を示したとのこと。この探査機をもって2026に月面でのデモンストレーションを行うべく、各社と協議中とのことです。

宇宙ロボットを開発する日本のスタートアップ「GITAI」が開発する月面ロボット探査機 - YouTube

尺取虫型ロボットアーム「IN1」の動画も公開されています。

The GITAI IN1, an inchworm-type robotic arm - YouTube

GITAIが調達した資金は、主にアメリカにおける雇用拡大や製造施設の拡張、GITAIが開発する月面ロボット探査機や尺取虫型ロボットアームの技術成熟度レベル(TRL)強化に充てられる予定。TRLはNASAが定義した評価基準で、宇宙環境に近い環境での実証成功に至ればTRL7、地上または宇宙での動作成功でTRL8、実際のミッションを通じた運用に成功すれば最高基準のTRL9を満たしたことになります。GITAIによると、GITAIの月面探査機はTRL4に相当するテストに合格し、尺取虫型ロボットアームはTRL5に達しているとのこと。



こうしたロボットの開発を強化するため、GITAIはアメリカでの雇用を2023年末までに20人、2024年末までに40人〜50人拡大する予定。日本での採用は中止し、エンジニアを含む日本人従業員の半数以上をアメリカに移住させているとのことです。