職場において、「愛車の話題」は頻出するトピックのひとつ。とくに通勤手段として車を利用する従業員が多い職場では、「誰が何の車に乗っているのか」が話のタネになることもあるでしょう。

そうした状況にあっては、自分の車が周りにどう思われているのかが気になる場面もあるでしょう。とりわけ気になるのは、やはり「上司の視線」かもしれません。

趣味性の強い車や豪華な高級車など、部下がいわゆる「目立つ車」に乗っていることについて、上司たちはどのように考えているのでしょうか。企業などで管理職の立場にいる人たちに話を聞きました。

『◯◯より上の車に乗ってはいけない』という不文律があったのに……

©naka/stock.adobe.com

上下関係に厳しい職場では、「上司よりもいい車に乗ってはいけない」という不文律が共有されていることも。製造関連の企業で営業部署の課長を務める男性は次のように話します。

「50代の部長が歴代クラウンを乗り継いでいます。かなり頻繁に部下にも車の話を振ってきて、私たちが新車に買い替えたりすると、興味津々といった様子で色々とその車の話を聞いてくるんですね。実際に車を見て、『なかなか内装いいなぁ』なんて感想を言ったりして。

そうするうちに、長く部署にいる社員の間には『クラウンより車格が上の車に乗ってはいけない』みたいな雰囲気ができあがっていたんですよね。まぁそもそも高級な車ですし、とくに逆転現象は起きずにいたのですが。

ただ、少し前に中途で入ってきた30代の社員が、ランクルに乗っていたんです。ジャンルが違いますし、どちらが上というわけではないですが、なんとなく部長が距離を置いているというか、面白く思っていないんだろうなと。

本人のいないところで『オフロード趣味でもないのにクロカンはなぁ』みたいなことを口走ったり……業務に支障はないとはいえ、若干のギスギス感があり、間にいる人間としては気を遣いますね」(30代男性)

職場で良好な人間関係を築こうとする際に、おのずと目上の人への忖度が生じ、それが常態化してしまうケースは少なくありません。もちろん、関係を維持するうえではそうした姿勢が有効に働くこともありますが、車選びの際にも上司の顔色を窺う、という環境は健全とは言いがたいかもしれません。

“目立つ車”に保護者から思わぬクレームが

©methaphum/stock.adobe.com

車選びのネックとなるのは、「上司への忖度」だけではありません。職場環境によっては、派手な車での通勤を避けることが「暗黙の了解」とされていることもあるようです。

「私立高校で管理職の立場にいます。学校の敷地内には教職員用の駐車場がありますが、やはりあまり目立つ車では通勤してほしくないというのが正直なところです。たとえば以前には、赤い輸入スポーツカーが保護者からのクレームにつながったこともありました。

もちろん車種の選択は個人の自由ですが、『これはさすがに……』という場合には、駐車場所を工夫するなどの措置をとることもありました。本当にごく稀なケースですけれども」(50代男性)

公的な性格の強い職業で、かつ従業員の車がサービス利用者の目に留まることの多い環境では、おのずと「無難な車を選ぶ」ことへの圧力が強くなる面もあるでしょう。車趣味の人にとってはストレスとなりうる環境ですが、やはり職場の事情をある程度考慮しなければならない状況もあるのだと考えられます。

「部下にはどんどん稼いで、いい車に乗ってほしい」という上司も!

©AS Photo Family/stock.adobe.com

反対に、「部下にも積極的に目立つ車に乗ってほしい」という意見も聞かれました。IT企業の営業部門で15人ほどの部下をまとめる男性は以下のように語ります。

「昭和くさいと言われてしまうかもしれませんが、ウチは体育会系の色が強いというか、思い切り稼いでいいメシ食っていい車に乗る、という価値観の人が多いんですよね。若い社員でも、休憩中に時計や車の話をよくしていますし、30代前半でレクサスのNXを買ったとか、ベンツのEクラスを買ったとか、そういう対抗意識も感じますね。

インスタに車や時計の写真を載せたりしている社員も多いみたいです。こちらとしては、そういう欲求も仕事の意欲にもつながりますから、どんどんガツガツ行ってほしいなと思いますね。勢いがない会社では、そういうムードもなくなってしまうと思うので」(40代男性)

若者の車離れが叫ばれて久しい昨今では、「いい車に乗りたい」という気持ちを仕事のモチベーションとする風潮が薄まっているとの見方もあります。そうした現状において、ステータス性を追い求める部下の姿を好意的に捉える上司もいるのでしょう。

車選びは個人の自由であり、とくに車を趣味しているのであれば、好きな車に乗ることが生きがいになっていることも考えられます。部下が働くうえでのモチベーションを失わないようにするためにも、世の上司たちには寛容な姿勢を貫いてほしいところですね。