(C)Odyssee Pictures -Apollo Films Distribution -France 3 Cinéma -Pictanovo -Elemiah-Charlie Films 2022

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この週末、何を観よう……。今週公開の作品の中から、映画ライターのバフィー吉川が推したい1本をピックアップ。おすすめポイントともにご紹介します。今回ご紹介するのは、5月5日(金)より公開されている『ウィ、シェフ!』。気になった方はぜひ劇場へ。

【写真】一匹狼のシェフと移民の少年たちの交流を描く『ウィ、シェフ!』場面写真【9点】

〇ストーリー
一流レストランのスーシェフとして働くカティ。夢はいつか自分のレストランを開くこと。だが、シェフと大ゲンカして店を飛び出し、ようやく見つけた職場は移民の少年たちが暮らす自立支援施設だった。質より量、まともな食材も器材すらない。不満をぶつけるカティに施設長のロレンゾは少年たちを調理アシスタントにするアイデアを提案する。フランス語がちょっと苦手な少年たちと、天涯孤独で人づきあいが苦手なカティ。料理が繋げた絆は少年たちの将来だけでなく、一匹狼だったカティの世界も変えてゆく……。

〇おすすめポイント
閉鎖が決まったシェルターで生きる女性ホームレスと、ソーシャルワーカーたちの姿を描いた『社会の片隅に』(2018)のルイ=ジュリアン・プティが、同作の続編というわけではないが、実在するシェフのカトリーヌ・グロージャンの視点から「移民問題」を描いたのが今作。

フランスのポスタービジュアルからもわかるように、共通性をもたせていることから、ルイの描く「フランス社会問題」シリーズとでも言うべきだろうか。

エリート(もしくは自分をエリート)だと思っている主人公カティが、食材は缶詰やレトルト品ばかりという、質よりも量が求められるような180度違う環境で奮闘。大人に裏切られ、人を信用できなくなっている移民の少年たちと反発しながらも時間を共有することで理解し合い、結果的に自分自身の問題にも向き合っていく。

そういったプロットは、映画でもドラマでも世界的によくある人生の再生を描いたサクセストーリにありがちではあるが、そこに移民問題が絡んでくることで物語が重くなるかと思いきや、全体的にあくまでコメディという立ち位置をとっていることから、重すぎず軽すぎずという絶妙なバランスで構成されている。

クライマックスでカティが自分の再起よりも少年たちの夢を優先させるために、テレビの生放送を逆手にとった行動は、ある意味反則的だと思うかもしれないが、メッセージを社会に届けることを優先に考えた行為だと思うと、感動しないではいられないだろう。

〇作品情報
監督:ルイ・ジュリアン・プティ
出演:オドレイ・ラミー、フランソワ・クリュゼ他
2022年|フランス映画|フランス語|97分|5.1ch|シネスコ|原題:La Brigade|英題:Kitchen Brigade|字幕翻訳:星加久実|後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ提供:ニューセレクト配給:アルバトロス・フィルム*G指定
公式サイト:ouichef-movie.com
5月5日(金)新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町他全国ロードショー

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